史上最大規模の有価証券偽造を摘発
本物そっくりの高い偽造技術、専門家も見抜けず
ソウル地方警察庁の広域捜査隊は2日、額面価格が数千億ウォン(1000億ウォン=約75億円)の小切手や手形を偽造した容疑で、L容疑者(50)を逮捕した。L容疑者は「韓国一の絵描き(偽造小切手・手形の製作者を指す隠語)」と関係者の間で呼ばれていた。
ソウル市中区乙支路の印刷工場が密集する路地で育ったL容疑者は、中学校までしか通っていないが、印刷工場で20年間働く中で、コピー機やスキャナー、フォトショップなどの機器やプログラムを次々とマスターし、10年ほど前から有価証券(小切手や手形)の偽造に手を染めた。本物そっくりの偽造有価証券を作れるとのうわさが広がり、一躍「スター」になった。L容疑者が偽造した有価証券を受け取るために、偽造有価証券をばらまく業者が競争を繰り広げるほどだったという。小切手の裏面に印刷される偽造防止用のホログラムまで偽造できるほど、L容疑者は高い技術を持っていた。警察の関係者は「L容疑者が偽造した有価証券は、銀行の専門家でも全く見抜けないほど精巧だった」と話した。
L容疑者は2006年、有価証券の偽造容疑で逮捕・起訴され、3年間服役した。出所後はまじめに働こうとしたが、周囲の人たちは放っておかなかった。偽造有価証券の販売業者のまとめ役のA容疑者(52)と知り合ったL容疑者は、09年から今年4月まで、ソウル市道峰区に、パソコンやコピー機、プリンターなどを備えた偽造工場を設けた。銀行が発行する当座小切手や個人用小切手、約束手形など、1万枚もの有価証券をここで偽造した。
こうして偽造した有価証券は、A容疑者に1枚当たり10万-15万ウォン(約7500-1万1000円)で引き渡し、L容疑者は10億ウォン(約7500万円)を手にした。A容疑者はこれらの有価証券を1枚当たり50万-300万ウォン(約3万7500-22万5000円)で販売した。バイク便業者のC容疑者(57)らを引き込み、配達網も築き上げ、店舗型の組織を運営した。
警察は今年初め「L容疑者が(有価証券の偽造で)大もうけしている」との情報を入手、捜査に着手した。約3カ月にわたる捜査の末、偽造工場を摘発し、偽造された小切手や手形約1100枚(額面価格1300億ウォン=約97億4800万円)、偽造に使う紙などを押収、L容疑者ら5人を逮捕した。
警察は、L容疑者らが偽造した約1万枚の小切手や手形の額面価格が数千億ウォンに達すると推定しており、1兆ウォン(約750億円)を超えるとの見方も出ている。警察の関係者は「今回の事件は、小切手や手形の偽造事件としては史上最大規模だ。偽造された小切手や手形のため、いくつかの中小企業が不渡りを出すなど、大きな被害が出ているとみられる」と話した。
クォン・スンジュン記者