2011年6月2日14時50分
岩手県知事賞を受賞した人気商品のカキの薫製「山田の牡蠣(かき)くん」。生産者の岩手県山田町の漁師、佐々木俊之さん(53)は、津波で加工場と家を失った。一時は「廃業」も考えたが、全国のファンからの激励を受けて再開を決意。2日に盛岡市内で始まる特産品フェアに出品される。
フェアでの呼び名は「友情の牡蠣くん」。支えてくれた多くの人たちへの感謝を込めて名付けた。
山田町から約70キロ離れた花巻市内の調理場で5月31日、佐々木さんはカキの薫製作りに追われていた。「再開を待ってくれるお客さんがいるから、第一歩を踏み出せた。『おいしい』って言われたい」。新たに購入した薫製機の前に陣取り、何度も出来栄えを確認した。
あの日、東京の百貨店での催事用に従業員3人と薫製を作っていた。翌日の材料を取りに養殖いかだへ向かったところ、揺れた。家族や従業員は無事だったが、がれきを前に、「どうすんだよ、これ」。仕事を続ける気は起きなかった。
だが、1週間ほどが過ぎ、携帯電話が通じると、不在着信と留守電で履歴がいっぱいに。客からのメッセージだった。「大丈夫ですか」と心配する声。テレビで無事を知った人からは「何年でも待つから、また食べさせて」。養殖だけをやっていた時には味わえなかった、消費者との直接のつながりを実感した。
4、5年前、ノロウイルスの風評被害で、生食用のカキが売れず、「暇だから」と始めた薫製作り。加熱方法を試行錯誤し、ヒットにこぎつけた。
全国からの応援で活が入ったものの、製造場所がない。悩んでいたら、友人を通じ、花巻市内の主婦団体が使っている調理場を無償で提供してくれた。冷凍カキ約25キロ手に入れ、早速、薫製作りを始めた。
とはいえ、冷凍カキの扱いは初めて。「何か食感が違う。自分の解凍技術が未熟だった」。フェアまであと4日。すぐに飛行機に飛び乗り、カキ産地の北海道・厚岸に向かった。直売所を回り、生カキ約50キロをかき集めた。
「採算は度外視。納得がいく商品を提供したい」。
ノロウイルスの風評被害に大震災、津波…。加工場の再建も容易ではない。それでも、「どんなに遠くても、明かりが見えれば、それに向かって進むんだ。途中の暗闇なんて気にならないよ」。
フェアは2〜7日、盛岡市菜園一丁目のパルクアベニュー・カワトクで。(吉田拓史、鷹見正之)
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