2008-03-31
■身内に甘い(?)弁護士会
富山県氷見市の強姦冤罪事件について富山県弁護士会が調査報告書を公開したそうです。
富山・強姦冤罪事件:弁護人の責任言及せず 県弁護士会が報告書公表 /富山
県警による強姦冤罪(ごうかんえんざい)事件で、県弁護士会は28日、経緯の調査結果や再発防止策をまとめた報告書を公表した。当時の国選弁護人の責任には言及せず、記者会見を開いた今村元・会長は「冤罪を生んだ責任の99・9%は捜査機関にあり、弁護士の処分や注意は行わない」と述べた。
報告書は、被害者の柳原浩さん(40)が、逮捕直後の当番弁護士の接見から国選弁護士選任までの約1カ月半の間に、強圧的な取り調べを受けて「自白」に至ったと指摘。「この空白が冤罪の一因」とし、当番弁護士の派遣回数を増やすことや、否認している際は弁護士の私選を勧めることなどを提言した。
捜査機関に対しては、警察署内に容疑者を拘置する「代用監獄」の廃止や、取り調べの全面可視化を要求。弁護士にも「自身が自白偏重に陥っていないか、肝に銘じるべきだ」として、容疑者が自白に転じた際は慎重に事情を聞くよう求めた。
県弁護士会は冤罪発覚直後の07年1月に調査委員会を設置。聴取内容の公開を巡って柳原さんと対立し、本人からは話を聞けなかった。【茶谷亮】
毎日新聞 2008年3月29日 地方版
以前にも書きましたけれど,この事件,当番で接見した先生が引き続き弁護人としてちゃんとした起訴前弁護をしていれば20日満期で処分保留・釈放になったであろうと考えられます。少なくとも私が当番に当たったら,被疑者弁護援助制度を利用して受任し,「被疑者ノート」を差し入れるとともに2日に1回は接見して被疑者を励ますなどしていたと思いますし,そうすれば処分保留・釈放を勝ち取れたであろうと思っています(参考事例)。
もちろん,援助制度利用ですから得られる報酬はせいぜい12万円。しかも実費込みの金額ですから,富山県氷見市というロケーションを考えると足代だけで完全に足が出てしまうでしょう。ビジネスとしては完全に成り立ちません。
しかし,弁護士法1条1項には「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」と規定されているのですから,ときには費用持ち出しになったとしても不正義を正す義務があるというべきです。
修習生の給料もこれからは貸与になるそうなので特に若い人には実感がわかないと思いますが,法曹1人養成するのにどれだけの国費が投入されているか,考えてみてください。教官やスタッフの人件費,教材費,研修所の設備費etc...
弁護士という自営業者を養成するのに多大な国費が投入されている事実は,弁護士の仕事が100%自由業ではないということを意味していると考えます。
社会的不正義に直面した弁護士が「採算が合わないから」と言ってその不正義を放置するということがあってはなりません。
批判の集中砲火を浴びることを承知で敢えて言わせていただきます。氷見事件の責任の一端は弁護士にもある,と。
もちろん,私は当該弁護士先生一人の責任を追及しているわけではありません。一方でゼロワン地域と呼ばれる弁護士過疎地が数多く残り,他方で大都会にはワーキングプア弁護士があふれているという格差の是正が図られなければなりません。そのためにどうしたらいいか・・・私もまだ模索中です(^^ゞ
- 124 http://blawg.ring.hatena.ne.jp/
- 11 http://okaguchi.at.infoseek.co.jp/link.htm
- 9 http://www.ne.jp/asahi/manabibashi-law/homepage/left.html
- 8 http://a.hatena.ne.jp/h-law/
- 8 http://a.hatena.ne.jp/kuma_and_ton/
- 7 http://mixi.jp/view_diary.pl?url=http://d.hatena.ne.jp/sanuki-udon/20080331/1206939082&owner_id=4556441
- 3 http://a.hatena.ne.jp/lawyaz-klub/
- 3 http://s03.megalodon.jp/2008-0331-0734-56/blawg.ring.hatena.ne.jp/
- 2 http://r.hatena.ne.jp/catus/
- 2 http://r.hatena.ne.jp/mais_que/law/
実情を考えると不同意。
公益的検知からプロボノをすべきときもあるということは、倫理的には理解できるけれど、作為義務違反とまで言えるようなレベルまで高められていないでしょう。
私も当該弁護人さんを個人攻撃しようというのではありません。当番弁護士制度を「1回だけ無料で接見して,はい,終わり」な制度ととらえる弁護士が多いことがおかしいと言いたいのです。
来年からは被疑者国選が必要的弁護事件全体に拡張されます。もちろん,大半は覚せい剤の自白事件など特に被疑者段階で弁護活動が必要なさそうな事件でしょう。しかし,真に起訴前弁護を必要としている被疑者を目の前にして「20日間頑張ってね」と言うだけでおしまいにしていいというのは著しく不正義だと思います。
それから,身柄を拘束された被疑者さんは,初めての非日常的な自由のきかない生活を強いられています(中には常連さんもいますが)。そうした被疑者さんのところに頻繁に足を運んで親身になって話し相手になってあげる(外で話題になっているゴシップネタでもいいです),それだけでも被疑者さんにとっては相当な励みになります。
また,接見禁止が付いた被疑者さん,家族が遠方にいるなどして協力を得られない被疑者さんなどの場合には雑誌の差入れなんかとても喜ばれますよ。
真面目な投稿だと思って真面目にコメントしてしまいました。
失礼しました。
結果,患者をたらいまわす救急病院と同じ現象が起こる。
若輩者ですが。
もともと,当番弁護士を広める過程において,「1回接見にいくだけだから勘弁してね」と言って登録してもらい,制度実現を果たした単位会は少なくないと思います。建前論としてのさぬきうどんさんの話は分かります。しかし,当番弁護制度の位置づけを変えると,制度自体が崩壊しかねない単位会があることも知っておいて欲しいです。
まさに,患者をたらい回す救急病院現象が生じかねない場所もあるのです。
当地では,実際にこの件があって辞めた年配弁護士がいます(好日かもしれませんが)。田舎では,若手が増えたといっても,多くの50代,60代の弁護士が現役で当番をやってます。無理もありません。
否認する被疑者のために毎日警察に通って被疑者を励ますことができないのは,金の問題ではありません。もともと刑事事件の報酬なんて期待していませんので。報酬金額が20万,30万増えても同じです。
時間と体力がないということに尽きます。特に時間の問題は物理的なものですので個人の努力ではカバーできません。
地方の状況を体験していない人とは所詮議論がかみ合わないので仕方がないのですが。地方で役員をやってみて初めて状況が把握できると思います。
また,最近は法テラス経由のクレサラ事案も何件かやってますが,売り上げの大半は被疑者援助や国選報酬です。そのようにして得た昨年の売り上げが1年間で1000万円弱でした。事務員を置いていないので十分喰っていけるだけの収入は確保できています。
地方でも工夫次第で刑事に重点を置いた事務所経営が十分に成り立つことは,私の確定申告書が証明していると思います。
少し、仕事を忘れてリフレッシュしないと。てっきり鉄分補給をしているものと思いました。
ご心配いただきましてありがとうございます。
今夜のムーンライトながらで高松までうどん喰いに行ってきます。