きょうのコラム「時鐘」 2011年6月3日

 きのうの菅首相は、形容しがたい仏頂面を何度も見せた。クビがつながった安堵(あんど)を押し隠したのか、退陣表明の無念さをこらえていたのか

よりによって国難の折、時をわきまえぬ騒ぎに冷ややかな思いを抱いた人も多かろう。「時知らず」と呼ばれるサケのことを教わった。秋に川をさかのぼるサケではなく、今ごろ北海道の沿岸で捕獲される変わりもの。さながら、時知らずのような政局の1日だった

季節を知らぬと小ばかにされているようだが、夏のサケは大変な美味で、北陸ではなかなか口にできぬそうである。時知らずの不信任騒ぎも、捨てたものではない。「雨降って地固まる」と良い方向に進めば、被災地も列島も元気を回復する

他にもサケの異名を教わった。産卵のために卵に栄養分をとられたものは、「ほっちゃれ」と呼ばれる。おいしくないから「放ってしまえ」がなまった乱暴な命名だという

国の指導者の進退に、サケの名を持ち出すのは失礼かもしれない。が、「時知らず」のように優れた仕事を期待してのことである。加えて、残念ながら「ほっちゃれ」の不安が消えぬからでもある。