百歩譲って海底の土が水産庁の担当外という言い分を認めたとしても、コンブやノリなどの海藻は立派な食用品であり、水産庁が調査しない理由はない。
そして水産庁が土を調べないなら、政府はすぐにでも文科省に調査を命じるべきだろう。「省庁の縄張り意識と怠慢」で国民の生命が危険にさらされるなど、もってのほかである。
気になるのは、遅ればせながら避難区域が広がる陸と比べて、海洋汚染への対応があまりに遅れていることだ。
「それは学者のチェック機能がまったく働いていないからです。実は、水産関係の研究者も『原子力村』に取り込まれている人が非常に多い。理由は簡単で、原発は海辺につくらなくてはならず、必ず漁業補償の問題がでてくるからです。放射能は安全だ、原発は安心だと漁師たちを説得する時に、水産学者も一役買うことになる。
水産系で放射能を扱っている研究所はたくさんありますが、総じて電事連(電気事業連合会)から研究費をもらっている。放射能を専門にする水産学者の多くは『本籍=原子力村』なんです」(前出の海洋学者)
海は広いから大丈夫、という幼稚だが殺人的な言い訳が通用しないことを、本誌は再三指摘している。枝野氏は今週もこの記事を読むのだろうから、今度こそ、グリーンピースの調査結果を参考にするよう、水産庁なり文科省なりに下ろすべきである。
続いて、野菜のデータに移ろう。4月5日~9日、グリーンピースが福島県内で調査した結果だ。
●南相馬市の野菜畑1の白菜=8790ベクレル/kg
●南相馬市の野菜畑2のほうれん草=4万3485ベクレル/kg
こちらも核種は特定されていないが、基準値は海産物と同じくヨウ素=2000ベクレル/kg、セシウム=500ベクレル/kg。もっとも危険性が少ないとされる放射性ヨウ素だったとしても、南相馬のほうれん草は21倍以上の高い値を示している。
南相馬市は原発からも近く、恐ろしい数値にもある程度心の準備ができるかもしれない。では、次の値を見てほしい。
●福島市郊外の小規模野菜畑のからし菜=1万9940ベクレル/kg
●福島市郊外の小規模野菜畑の小松菜=7万3775ベクレル/kg
●福島市郊外の小規模野菜畑のニラ=2万295ベクレル/kg
●福島市郊外の小規模野菜畑のブロッコリー=1万6180ベクレル/kg
●福島市郊外の小規模野菜畑のほうれん草=15万2340ベクレル/kg
15万ベクレルという桁外れの数値が、福島市郊外の野菜から出ている。福島市は言わずと知れた、県の行政機能が集中する県庁所在地。約30万人の市民が暮らすが、放射能汚染に注意を払っている人がどれほどいるだろうか。
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