定期検査のため停止中の原子力発電所で地元自治体や住民が安全性に懸念を強め、運転再開の見通しが立たない。このままでは1年以内に国内に54ある原発がすべて止まり、電力危機が全国に広がりかねない。
電力不足は経済全体に大きな影響を及ぼす。政府は危機感をもち、東京電力福島原発を除く44基について安全性を総点検する体制づくりを急ぐべきだ。異例の政治判断で中部電力浜岡原発の運転停止を求めた菅直人首相の責任は重い。
九州電力の玄海原発2、3号、関西電力の高浜1号などは定期検査を終えて、本来なら3、4月に運転再開の予定だった。しかし、地元自治体が「安全確保の説明が不十分」と反発し、再開の見通しが立たない。中国電力も来年3月に予定していた島根3号の運転開始を延期した。
再稼働が宙に浮いた原発は6電力会社・11基に及ぶ。原発は13カ月ごとに定期検査を義務づけられており、いま稼働中の19基も来年夏までに止める必要がある。国内の発電量の約3割を担ってきた原発のすべてが止まれば、全国規模で計画停電を余儀なくされる。
今後のエネルギー政策で原子力をどう位置づけるのか、政府が展望を示していないことが地元の不信の根底にある。それに加えて、菅首相の要請で浜岡原発を全面停止にしたことが、他の原発の再開に響いていることは否めない。
首相は「東海地震の想定震源域の真上にある浜岡は特別」と強調した。この考え方は理解できるが、説明不足だ。浜岡以外の原発の地元は、かえって「地震や津波への備えは大丈夫か」と不安を募らせている。
「安全性が確認されれば稼働を認めていくことになる」と首相は述べているが、人ごとのような説明では困る。浜岡原発を自身の要請で止めた首相は、他の原発の安全確認でも自ら地元に出向き、自治体や住民の理解を求めるぐらいの覚悟が要る。
菅首相や海江田万里経済産業相は原発の安全規制を所管する原子力安全・保安院を経産省から分離する方針も示した。原子力の推進を担ってきた経産省の中に規制役の保安院が置かれていることは、これまで地元自治体の強い不信を買ってきた。
保安院の独立は推進と規制を分離する観点から当然であり、地元の協力を得るためにも欠かせない。だが、停止中の原発の運転再開のお墨付きを新組織が与えるのでは、時間がかかりすぎる。原子力安全委員会を刷新するなどして、安全性の総点検を急ぐべきだ。
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予想最大電力:3450万kW16時~17時
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