インタビュー
製品を分解/改造すると、メーカー保証は受けられなくなります。内部で使用されている部品などは取材した機材のものであり、すべての個体に該当するわけではありません
では、新型VAIO Sの中身をじっくり見ていこう。最初に本体を裏返し、2本のネジで固定された逆L字型のカバーを外す。すると、バッテリーパック、1基のSO-DIMMメモリスロット、データストレージ(SSDもしくはHDD)がすべて露出する。光学ドライブも底面の2本のネジを外せば着脱できる仕組みだ。
ネジを外さなければバッテリーを着脱できないのは、VAIOのモバイルノートPCとしては珍しい。1枚のカバーを外すだけで、これだけのパーツが露出するのも異例だ。新型VAIO Sは標準バッテリーの駆動時間が長く、オプションとして交換式の大容量バッテリーの代わりに、底面に装着する拡張バッテリーを用意したので、ネジいらずでバッテリーを外せなくても大きな問題がない。また、1つのカバーを外すだけでメモリとストレージまでアクセスでき、2本のネジを取れば光学ドライブまで外れる構造とすることで、保守の面でも効率アップを図っている。
バッテリーについては、従来機が液晶ディスプレイのヒンジ部に棒状のリチウムイオンバッテリー(54ワットアワー)を配置していたのに対し、パームレストの下に薄型のリチウムポリマーバッテリー(49ワットアワー)を内蔵した。宮入氏は「このデザインを保つため、バッテリーはリチウムポリマーが必須だった。社内でバッテリーパックの設計、開発を行ったため、スタミナを下げずに薄型軽量を保つうえで、うまく連携して調整できたと思う。VAIO Zの丸セル型バッテリーパックより20%強くらい容量が小さいが、この薄さと軽さで8〜9.5時間の駆動時間はよいバランスにまとめられた」と説明する。
新型VAIO Sはバッテリーの設計を大きく変えたが、オプションのバッテリーも一新している。底面全体を覆う拡張バッテリー(直販価格1万9800円)を用意し、これをドッキングすることで約15.5〜19時間もの長時間駆動(構成によって異なる)が可能になるのは見逃せない。
拡張バッテリーも薄型に仕上がっており、装着時は厚さが23.9ミリから32.7ミリになり、重量は520グラム増えるが、フルフラットな状態は確保される。橘氏は「フルフラットという全体的なコンセプトからブレないために、バッテリーを付けてもそのデザインは維持する必要があった。最初は検討段階だったが、本体と同じ6セルのリチウムポリマーバッテリーを使うことで、フルフラットなデザインを実現できた」という。
拡張バッテリーには小型のアダプタが標準添付され、これにACアダプタを接続して充電できるのもポイント。放電は拡張バッテリーから、充電は標準バッテリーから行うため、拡張バッテリーが放電し終わったら、電源オンのまま取り外して拡張バッテリーだけを充電しておき、急速充電して電源オンのまま再び装着するといったサイクルで運用することにより、常時バッテリー駆動で長時間使い続けるようなヘビーなモバイル環境への対応力が大幅に高まっているのだ。
太田氏は「シートバッテリーまでいるのかと思うかもしれないが、例えば、社内にも1日中離席して社内外の会議に出続けるような役員が存在し、業務中のバッテリー切れは致命的となる。その点、このバッテリーソリューションならば、拡張バッテリーの残量がなくなったところで急速充電し、その間に十分な容量の標準バッテリーで移動しながら仕事をこなし、戻ってきたら再び拡張バッテリーを装着してそのまま海外出張に出かける、といったシナリオにも対応できる」とその優位性をアピールする。
今回分解した機材はHDDとクアッドSSDを搭載していたが、新型VAIO Sはデータストレージの選択肢が充実している点にも触れておこう。標準仕様モデルは500Gバイトの2.5インチSerial ATA HDD(5400rpm)を採用するが、ソニーストア直販のVAIOオーナーメードモデルでは640G/750GバイトのHDD(5400rpm)、128GバイトのSSD(シングル構成)、そして256G/512G/1TバイトのSSD(クアッド構成/RAID 0)を選択可能だ。
ここで注意したいのは、クアッドSSDのモジュールはVAIO Zと同じ独自仕様(独自コネクタ)で、シングルSSDはカバーがない基板タイプ(Micro SATAコネクタ)、HDDは2.5インチSerial ATAタイプ(SATAコネクタ)となっている点だ。つまり、搭載するデータストレージによって、3種類の異なるフレキシブルケーブルと端子で接続されるため、将来的に高速なSSDに載せ換えたいと考えているならば、HDD搭載の構成が最もハードルが低いだろう(保証対象外の行為だが)。
なお、チップセットはIntel HM67 Expressを採用しており、HDDやシングルSSDの場合はSATA 0ポート、クアッドSSDの場合はSATA 0/1/2/3の合計4ポート、光学ドライブはSATA 5ポートに接続される仕組みだ。いずれもSATA 3Gbps対応だが、クアッドSSDモジュールでは合計4つのポートを使うことで、インタフェースの限界(最大データ転送速度300Mバイト/秒)を大きく超えたスピードを実現している。発売時はIntel 6シリーズチップセットの不具合問題が終息していない時期だったが、宮入氏によれば「発売時からすべて対策済みチップセットを搭載しており、Serial ATAの問題はないので安心してほしい」とのこと。
HDDについてもトピックがあり、耐衝撃性を高める「VAIO HDDプロテクション」機能を強化してきた。従来機では落下(垂直方向の移動)の検知だけだったが、加速度センサーに横方向の検出アルゴリズムを採り入れたことで、転落直前に発生する揺れといった予備動作も検知して、より安全に磁気ヘッドを緊急退避できるようになっている。
また、HDDなどボディの耐衝撃性で重要なポイントについては、PC全体の試作品ができあがる前から、製品と同じ素材を使った簡易的な疑似モデルを作り、個別に評価してから全体の中に組み込んでいったという。「各部のモデルを切り出して作ることで、ボディ全体を作るより安価に、そして時間をかけて検証できるのがメリット」と北野氏。
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