2011年6月1日20時58分
【動画】警戒区域内の車回収を開始=福島・川内村
住民らが持ち出した車は、放射線量を計測するスクリーニングを受けた=1日午後0時37分、福島県楢葉町の道の駅ならは、飯塚晋一撮影
JAFの助けを受けながら、警戒区域内に残された車を持ち出す住民(左から2人目)=1日午前10時34分、福島県川内村下川内、飯塚晋一撮影
東京電力福島第一原子力発電所から半径20キロ以内の「警戒区域」に置き去りになった車の回収が1日、始まった。福島県の南相馬市と川内村の58世帯の住民が防護服姿で自宅などに戻り、それぞれ1台ずつ運転して55台を区域外に運び出した。3台はトラブルで持ち出せなかった。
同県いわき市で避難生活を送る南相馬市の女性(30)は、原発事故で勤務先の保育園が閉鎖され、失業状態が続く。「仕事を見つけるにも車が必要。持ち出せて助かる」とほっとした様子で話した。
この日参加したのは南相馬市の37世帯と川内村の21世帯で、自宅や避難途中に車を乗り捨てた場所に立ち入った。放置していた間にバッテリーが切れたりタイヤの空気が抜けたりした車もあり、同行した日本自動車連盟(JAF)の作業員が対応した。それでも、停電で車庫の電動シャッターが開かなかったり、自宅にあるはずの鍵が見つからなかったりして、3台は持ち出せなかった。55台は区域外に出る際に車体の放射線量を検査し、汚染の基準を超えた車はなかった。
30分間。地震が起きてからの行動が、人々の命運を分けた。小学校で、避難所で、役場で――。生き延びた人たちの証言を、記録として残したい。