自民党の悪い癖が出始めた。権力欠乏症である。長期間の権力不在に耐えられず、目の前に権力がちらついてくると、条件反射的に体が動いてしまう。
17年前がそうだった。細川護熙政権をこれでもかとスキャンダル攻撃で追い込み、全く政策の異なる社会党と手を組むまでして、政権復帰を果たした。野党にいたのは10カ月。その間新しい理念や政策を磨き上げた形跡もない。権力に戻りたい、という起き上がりこぼし的な本能が勝っていた。
今回の「不信任」戦術も同じ臭いがする。菅直人政権の原発対応が悪かった、と重箱をつつき回し、考えの違う小沢一郎民主党元代表勢力をあてに政局作りをしている。
今回さらに罪作りなのは、不信任案採決後の展望を明確にしないまま、本能に任せて動いていることだ。菅氏の後にどういう政権を作るのか。誰が首相で、衆参のねじれ解消のための態勢をどうするか。政権の方向性も含め、混乱しか見えてこない。
もちろん、菅政権にも問題がある。権力不慣れ症と呼ぼう。権力の行使が下手くそなのである。国の仕組みの把握、官僚操縦術が未熟だし、小沢元代表ら身内をまとめることもおぼつかない。野党経験が長かったから、という言い訳はそろそろ通用しない。
では、どちらの病がより深いのか。やはり、自民党ではなかろうか。菅民主党は日々必死になって権力行使術を学び与党として自己成長を遂げればいいだけだが、自民党にとっての権力の誘惑は死に至る病に近い。ポストと権限とカネが忘れられないのである。与党内野党の小沢元代表も同様だ。
だが、ここは自民党にとってはこらえどころだ。戦後半世紀に及ぶ権力の行使を真摯(しんし)に総括し、この国難の真の解決のため、野党としてじっくり日本の新しい国の形を構想する時ではないのか。
毎日新聞 2011年6月2日 0時03分
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