【小説】 君に捧げる千物語 本章3ー愛理

長谷川が銃撃戦に巻き込まれた時、愛理は新宿中央公園のテントの中にいた。
浮浪者に拉致されたわけではない。妙な「病気」が蔓延したせいで浮浪者に勤労意欲が湧き、どこのテントも蛻の殻になっていた。
愛理は自分が警察に追われていることを知り、公園のテントに逃げ込んでいた。長谷川よりよっぽど沈着冷静で機転が効く女だ。
愛理は浮浪者が残したラジオを何時間も聞き入っていた。

「本日の日経平均は12000円高になり…」
「指名手配犯700人が『早く罪を償って世に中に貢献したい』と出頭…」
「全国の中・高校で初の不登校児ゼロに…」
「経済評論家が今年のGDPは中国を抜いて30%成長と予測…」

愛理は不思議な感覚だった。自分も「病気」にかかっていて、自首したくてムズムズしていた。だが、何故か新宿南口のオーロラビジョンで長谷川の慌てて振りかえる顔、彼が警察に追われて発砲されるシーンを見て

「彼に会わなければ。」という気持ちに強く支配されていた。その謎は後で解明されるのだが。

ラジオはけたたましく臨時ニュースを繰り返していた。

「厚生省の公式発表によりますと、今回のウイルスは隕石の落下が原因で…」
「政府は『やる気ウイルス』と命名しました…」
「日本にいる外国人は全くウイルスの影響を受けず、国外脱出のためどこの空港も大混乱です…」

今日はここで寝よう。
愛理はテントにあった新聞紙やボロ切れを身にまとった。幸い、厚手のコートを着て外出していたので凍え死ぬことは無かった。それでも2月。寒くて中々寝付けない。

「どうしたら長谷川さんに会えるの?」

愛理は覚めた頭で必死に考えていた。

「おい! 誰かいるのか?」

そこに、懐中電灯を照らした警官が愛理のテントに躙り寄ってきた。

BOZZ


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