東京電力福島第一原子力発電所の事故調査のために来日したIAEA=国際原子力機関の調査団がまとめる報告の案が明らかになりました。事故直後の状況を考えると、実際に行われた対応は実行可能な最良の方法だったと評価する一方、津波の想定は過小評価だったとするとともに、3年前に指摘した安全規制当局の独立性が改善されておらず、事故対応にとって問題だったと厳しく指摘しています。
IAEAの調査団は、今回の事故の教訓を世界の原発の安全に生かそうと、12か国の専門家18人を日本に派遣し、先月24日から調査を行っていたもので、1日、日本政府に調査概要を報告します。その報告の案が明らかになり、この中で調査団は、まず、4つの原子炉がメルトダウンの脅威にさらされたことは今回の事故の特徴だとしています。そのうえで、すべての安全系が喪失し人材や照明が不足する中、事故直後に実際にとられた対応策以上のことが現実的に実行可能だったとは考えにくいとして、現時点で最良の方法だったと評価しています。その一方で、津波の想定が過小評価で、予期せぬ高さの津波に対処することができなかったとしています。また、今回のような過酷事故=シビアアクシデントに対応する手順が、照明や電力が入手できることを前提にして作られていることを問題視し、適切に修正される必要があるとしています。さらに、IAEAは3年前に日本政府に対し、安全規制当局である原子力安全・保安院に独立性を持たせるべきだと指摘していましたが、その点が改善されておらず、今回の事故対応にとって問題だったとしています。調査団の正式な報告書は、今月20日からウィーンで開かれるIAEAの閣僚級の国際会議で報告されることになっています。