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きょうのコラム「時鐘」 2011年6月1日
マニュアルはマニュアルでしかない。臨機応変に、時代とともに見直されなくてはいけない
杓子定規に考えないで、自分の判断を信じて動くことだ。JR北海道のトンネル内列車火災の教訓である。だが、その大切さを教えてくれたのが、避難誘導すべき職員ではなくて、自分の判断で脱出した乗客だったところに問題がある 時代で変わるものと変わらない教訓がある。携帯電話の明かりで乗客が闇の中を歩いたのは、昔なら思いもよらないことだった。一方、JR側が、煙が充満しているのに「火災が確認できない」とマニュアルに固執し誘導が遅れたのには驚いた 1972(昭和47)年、北陸トンネル火災事故が発生した。本社からも多くの記者が今庄の現場に走った。取材から得たのは、トンネル内で火災に遭った列車は止まらないで突っ走ること、乗客なら煙の少ない風上方向に逃げることの2点の教えだった 40年前の事故の知識がある年代の車掌(60)と、それがなかっただろう若い運転士(26)に意識の差はなかったのか。世代を超えて体験の知恵を継承する難しさを思わせる事故だった。 |