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十勝毎日新聞社ニュース

部品脱落し脱線か 無残な姿見せる石勝線特急

2011年05月29日 15時04分

 上川管内占冠村のJR石勝線の第1ニニウトンネル(延長685メートル)で27日夜、釧路発札幌行きの特急「スーパーおおぞら14号」(6両編成)が脱線し、全焼した事故で、JR北海道の一條昌幸専務らは28日、札幌市内の本社で記者会見し、前から4両目の3号車下部に設置されていた鉄製部品が落下しているのが見つかったことを明らかにした。同社は部品の脱落が脱線の原因となった可能性があるとの見方を示した。29日には原因などを調べるため、車両をトンネル外に移動させる作業を進めている。

ディーゼル機関車に引かれてトンネル外に移動する特急「スーパーおおぞら14号」

 同社によると、5両目の2号車の車輪4列のうち、後ろから2列目の車輪が進行方向左側に15センチ脱線していた。脱線痕は停止した車両最後尾の725メートル手前からあった。

 落下したのは、エンジンから車輪に回転力を伝える推進軸の一部。車両最後尾から1498メートル手前に推進軸の筒、その30メートル前に継ぎ手部分がそれぞれ落ちており、車両から2262メートル前の枕木には、部品が当たったとみられる衝撃痕もあった。

 同社は、3号車の推進軸を落下させながら走行した特急が、何らかの理由で部品に乗り上げるなどして2号車の脱線を招いた可能性があるとみている。推進軸の検査は3日に1回実施しており、事故前は25日に行い、当日の走行前にも目視で点検したが、異常は確認されなかったという。

 特急が停止したのは同トンネルの中央付近で、先頭6号車から進行方向(札幌側)の出口までは480メートル。異音と横揺れを感じた男性車掌(60)が男性運転士(26)に連絡、緊急停止した。2号車から煙が出ているのに気づき、トンネルから脱出を試みたが、装置の不調で走行できなかったという。

 車内に充満する煙や停電などで危険を感じた乗客が自力で避難を開始。乗客、乗員全員が特急を出たのを確認したのは、緊急停止から約1時間半後の27日午後11時27分。

 同社は、緊急停止から2時間を過ぎた28日午前0時2分、道警からの連絡で火災を確認した。同社は「列車の異常や煙を認知してからの手順を踏むのに時間がかかった。もう少し早い判断があれば短時間で避難誘導できたと反省している。今後検証し、見直したい」と述べた。

 今後の運転再開については、車両撤去後に火災で燃えたトンネル内の修復などが必要で、「まだめどは立っていない」とした。

 国土交通省の運輸安全委員会の鉄道事故調査官ら4人が28日午後2時、現地に入り、事故原因を調査した。約4時間にわたる調査後、報道陣の取材に応じた金井尚(たかし)調査官は「部品の脱落が脱線の原因であるかは現時点では分からない」と説明した。

 道警は運転状況や車両整備の経緯を調べるため、週明けにも業務上過失致傷容疑で、札幌市の同社本社を家宅捜索する方針。

自主避難が惨事回避
 「このまま車内にいたら死ぬだけだ」−。JR石勝線の特急脱線全焼事故は、乗客の自主避難が大惨事をギリギリで防いだ。車両火災の確認が遅れ、乗客は緊急停止から1時間近く列車内で待機した。煙が充満し、車内灯が消え暗闇となるなど恐怖と不安は極限に達し、乗務員の避難誘導を待たずに自主的な脱出を始めたことが、結果的に1人の犠牲者も出さずに済んだことにつながった。

 緊急停止後、前側3両に誘導されるなどした乗客は約50分間、通路やデッキですし詰めとなり、乗務員の指示を待った。帯広市内の会社員佐藤真一さん(25)は「その間、『現状把握に努めている』という趣旨のアナウンスがあっただけで、具体的な指示はなかった」と話す。

 JRによると「火災ではなくても白煙がでることはあるので、火災を確認しない状況で、ただちに乗客を車外に避難させることはない」という。

車内真っ暗に
 乗客のいらだちと不安が募る中、電灯が消え車内は真っ暗になった。池田町立病院医師の三浦太郎さん(29)は「乗客は携帯電話の明かりで周りを照らしていた。そのうち、車内もだんだんと白い煙がすごくなり、『目が痛い』『のどが痛い』という人がでてきた」という。佐藤さんも「(電灯が消え)さすがに『まずい』と思った」

 だが、この時点でも乗務員からの避難誘導・指示はなかった。「前の方で車外に出ているのが分かった。乗客の男性から『外に歩いて逃げよう』との声が上がった」(佐藤さん)という。

 JRによると、この時点で、いったん車外に出た乗務員はトンネルの出口までの距離と足場を確認して戻ってきたが、すでに乗客が降り始めていたため、前から3両目に乗り込み、後ろから乗客を押し出すように前の車両のドアへと誘導した、としている。

30センチ先見えず
 トンネル内の避難時の状況について、三浦さんは「パニックではなく、整然と励ましあって黙々と歩いた。煙がすごく30センチ先も見えないほどだった」と話し、「乗客はみんな死ぬかもと思ったと思う。私もそう思った」と極限状態を振り返った。佐藤さんがトンネルを出たところで携帯電話を確認したら、時刻は午後11時10分。緊急停止から1時間15分余りが経過していた。

 28日午前0時過ぎに、現場に駆けつけた警察官が火災であることを初めて確認。その後消火に当たった消防署員が爆発音を聞いており、燃料タンクへ延焼したとみられる。

 JRは「白煙が出ている時点でもっと詳しく点検し、火災を確認できていたなら(避難の)対応はもう少し早くできた」と陳謝している。佐藤さんは「金曜の夜と言うことで、車内はサラリーマンや札幌に遊びに行く若者の客が多かった。小さい子供がいたら犠牲になってもおかしくなかった」と声を震わせた。

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