事件・事故・裁判

文字サイズ変更

君が代訴訟:合憲初判断 原告側「思考は短絡的」と批判

君が代不起立訴訟の最高裁判決を受け会見する申谷雄二さん(中央)と支援者=東京・霞が関の司法記者クラブで2011年5月30日、塩入正夫撮影
君が代不起立訴訟の最高裁判決を受け会見する申谷雄二さん(中央)と支援者=東京・霞が関の司法記者クラブで2011年5月30日、塩入正夫撮影

 「日の丸を愛することが国を愛することという思考は短絡的」。君が代斉唱時の起立命令を合憲とした最高裁の初判断を受け、敗訴が確定した原告の元教諭、申谷(さるや)雄二さん(64)は判決後の会見で厳しく批判した。65歳の再雇用期限まで残り1年弱。「もう一度、子供たちの役に立ちたい」と願い続けた教師の思いは、絶たれることになった。

 「上告を棄却する」。最高裁第2小法廷に須藤正彦裁判長の声が響くと、傍聴席を埋めた支持者らは静まりかえった。裁判官4人が退廷するまで誰も立ち上がらず、「国民主権が泣くよ」とつぶやく声も聞かれた。

 申谷さんは東京都立南葛飾高校の教諭だった04年3月、卒業式で起立せず「教育公務員としての職の信用を傷付けた」などとして戒告処分を受けた。同4月から赴任した別の高校では「生徒を巻き込みたくない」と君が代斉唱を伴う6回の行事すべてで起立したが、07年3月の定年後の再雇用を拒否された。

 30年余の教員生活で、懲戒処分はこの戒告のみ。1度の処分を理由に希望した再雇用を拒まれ、07年12月の提訴から約3年半を法廷闘争に費やした。

 「判決まで2年は覚悟していたが、予想以上に裁判が長引いた。権力者がいつも得をする」。申谷さんは会見で、再雇用期限が迫ってもなかなか司法の結論が出なかったことへの不満も口にした。

 申谷さんは、大阪府議会に教職員が起立して君が代を斉唱することを義務付ける条例案が提出されていることにも触れ、「良い教育のために教師は日々努力をしており、政治家の圧力で強制的にやり方を曲げられると無力感が生まれる」と訴えた。【野口由紀、伊藤一郎】

毎日新聞 2011年5月30日 20時28分(最終更新 5月30日 20時46分)

 

おすすめ情報

注目ブランド

毎日jp共同企画