伊是名村所有で富士重工業(本社・東京都)が運用している同村の風力発電施設2基(各基100キロワット)のうち1基が、年内に撤去されることが23日分かった。環境省の「洋上風力発電実証事業」の一環として、浮体式施設に加工の上、長崎県沖の洋上に移設する予定。環境省調査で風力発電施設導入に当たって「沖縄の優位性」が明らかになったが、県内自治体運営の風車の採算悪化など、「逆風」の試練を迎えている。村内にある別の1基も故障で停止した状態が続いており、撤去も含め今後検討していくという。
村によると、2基は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と同社が2002年に設置。翌03年4月に「風力発電の普及促進にかかる研究・啓発事業」の一環として、村が無償提供を受けた。
ところが、村が収支を再検討したところ、メンテナンス費用が年間916万円掛かるのに対し、売電収入は392万円しか見込めないことが判明。このため、03年8月以降は、村が同社に無償貸与するかたちで運用を委ねている。
村は、2基周辺の草刈り作業の経費などの維持管理委託費や土地の賃貸料として年間約20万円を同社から受け取っている。
同事業に伊是名村の風車を転用することについて、環境省との正式な契約はまだ交わされていないが、同社は長崎県への移設方針を認めた上で「所有権の問題などは村と調整段階。伊是名島で得たデータは、今後の研究開発に生かしたい」としている。
村は、これまでの経緯から撤去もやむを得ない、との認識を示した上で「村としては引き続き、新エネルギーの積極的な活用を推進していく」と強調している。(特別報道チーム・渡辺豪)