銀輪の死角

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銀輪の死角:交通基本法案決定/5止 自転車レーン、自治体の整備

 ◇広がれ先進的事例

 幹線道路は路肩を青色塗装で区切った自転車レーンが設置され、歩道のない道路は路側帯を緑色に塗って自転車と歩行者の通行路とし、狭い道路は路面に緑地で白字の「自転車注意」の大きな表示。宇都宮市には自転車の走行に配慮した道路が計9・6キロある。5年後には25・4キロまで延ばす方針だ。

 人口約50万人の同市は自転車を主な交通手段とする人が20%と全国平均の15%より高く、市内の高校に通う約1万2800人の77%は自転車を利用する。一方でマナーの悪さが指摘され、事故も多発。市は03年度から自転車利用・活用基本計画に基づき自転車用通路の整備を進めた。

 05~06年度に自転車レーンなどを設置した4・6キロで、自転車と歩行者の事故が以前より約4割減少した。高校生を対象にしたアンケートでは8割が「走りやすくなった」と回答。マナー向上に向け、09年度から市内全ての小学4年生を対象に、ルールと実技を教える「自転車運転免許事業」を行っている。

 市は今年度から5年間、自転車の安全に加え、環境保護や健康づくり、観光の観点も取り入れ「自転車のまち推進計画」に取り組む。JR宇都宮駅前にシャワーや修繕スペースなどを備えた施設「宮サイクルステーション」を設け、市内のホテル6カ所で無料レンタサイクルを開始。地元のプロロードレースチームと協力した安全教室を拡大し、自転車通勤を推進する。市交通政策課の芳賀教人課長は「買い物や荷物の搬入などで車の交通量の多い商店街での整備など課題はあるが、着実に進めたい」と語る。

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 盛岡市は07年策定の総合交通計画で「マイカー利用を抑制し、公共交通機関と自転車の利用促進を図る」ことを掲げた。平たんな土地で元々自転車の利用者は多く、策定前に市民と一緒に地域交通を考える「ワークショップ」を開くと、賛同の声が相次いだ。

 計画を受け、08年に自転車条例を施行。道路の新設や改良時に自転車用通路を確保することを市長の責務とし、自転車利用者には保険加入や歩行者への配慮を求めた。さらに、環境面や健康面での効果も強調。08年には市職員7人が自転車通勤を試み、保健所と協力して体重や血圧の変化を調べ、効果を確認した。市交通政策課の担当者は「市のさまざまな部門が積極的に自転車政策を考えるようになりつつある」と話す。

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 自転車政策に取り組む自治体の先進的な事例が広く全国に伝わることが、自転車問題の解決につながると指摘する専門家は多い。=おわり

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 北村和巳、馬場直子が担当しました。

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毎日新聞 2011年5月1日 東京朝刊

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