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【社会】

東北電、90年に大津波の論文 福島原発に生かされず

2011年5月30日 11時43分

 東北電力女川原発

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 東日本大震災との関連が指摘される平安時代の869年に起きた貞観地震による津波について、女川原発(宮城県)の2号機増設の調査をしていた東北電力が1990年、津波が残した砂などの分析から、原発近くの仙台平野では海岸線から3キロ程度が浸水する大規模な津波だったとの調査結果をまとめていたことが30日、分かった。

 当時、論文をまとめた阿部壽・東北電元常務は「原発でこうした調査をした例は、当時は聞かなかった」としている。女川2号機の津波想定はこうした調査などから高さ9・1メートルとされた。

 東北電は、今回の地震で高さ14〜15メートルの津波が直撃した東京電力福島第1原発の近くの福島県内に浪江・小高原発を建設する計画を68年に発表。ここで津波の調査をすれば、福島第1原発などの危険性も判明した可能性があったが、地元の反対が強いことなどから実施していなかった。

 貞観津波は古文書に「(多賀)城が壊れた」「千人が溺死」「数千百里が海になった」などの記述がある。相当な誇張と考えられていたといい、専門家は「貞観津波に目を向けるきっかけとなる貴重な研究成果だった」としている。

 阿部元常務によると、直径3センチ程度のボーリングでは津波の痕跡を見つけることが難しいことから、面的な広がりのある「坪掘り坑」という手法を採用。地層の砂やその上下にある年代測定試料などの分析で、古文書の貞観津波の年代と矛盾しないかを調べた。

 その結果、仙台平野の浸水域は海岸から約3キロで、津波の高さは河川から離れた平野部で2・5〜3メートル、海岸部ではさらに数メートル高くなったと推定。標高の低い平野は壊滅状態で、夜間という悪条件では千人が死亡しても矛盾はないとしている。

(共同)
 

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