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【発明の名称】 二重ペン芯における内芯構造
【発明者】 【氏名】大池 英郎

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも、一時的にインキを貯溜する櫛溝と、ペン先にインキを供給するための軸芯方向に伸びたインキ溝を有した外芯の軸心方向に伸びた貫通孔に、軸芯方向に伸び後端において外方に開口した前記インキ溝にインキを供給するためのインキ溝と、前記貫通孔の内壁面とで形成される空気通路を有した棒状体の内芯を挿入してなる二重ペン芯の内芯構造において、前記空気通路を、前記内芯の先端部の上部を切欠いて形成した上部切欠き部と、該上部切欠き部と連接して側部の一部を切欠いて形成した側部切欠き部と、該側部切欠き部に連接して底部の一部を切欠いた底部切欠き部を形成することにより、前記内芯を前記外芯の貫通孔に挿入した際に、前記上部切欠き部と、側部切欠き部と、底部切欠き部と、及び前記貫通孔の内壁面とで形成される空間により形成したことを特徴とする二重ペン芯における内芯構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、万年筆などのペン先にインキを供給する手段であるペン芯の構造に関し、詳しくは外芯と棒状体の内芯とからなり、内芯を外芯の軸芯方向に伸びた貫通孔に挿入してなる、所謂、二重ペン芯の内芯構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、ペン芯の構造については種々提案されており、その中で、外芯と内芯とからなる、所謂、二重ペン芯といわれる物の構造についてはよく知られている。二重ペン芯の構造としては、当出願人においても出願し、公告された実公昭31−6815号公報によって開示されている、少なくとも、一時的にインキを貯溜する櫛溝と、ペン先にインキを供給するための軸芯方向に伸びたインキ溝を有した外芯の軸芯方向に伸びた貫通孔に、軸芯方向に伸び後端において外方に開口した前記インキ溝にインキを供給するためのインキ溝を有した棒状体の内芯を挿入し、外芯の貫通孔の壁面と内芯の壁面とで二重ペン芯の先後端を連通した空気通路を形成してなる構造のものが知られている。
【0003】こうした二重ペン芯における内芯の構造を、図を用いて詳述すれば、図14及び図15に示すように、内芯51の基本形状は断面円形状の棒状体である。内芯51の少なくとも先端部は、内芯51を外芯(図示せず)の貫通孔に挿入する際の位置決めのために、上部52を切欠いて形成した上部平地部53を設けてある。また、先端部の一方の側部54を切欠いて形成した側部切欠き部55を設けてある。底部56には、該側部切欠き部55に連接し、後端に連通した底部切欠き部57を設けてある。尚、上部52及び上部平地部53には、長手方向に伸び、少なくとも後端を開口した凹溝からなるインキ溝58を形成してある。内芯51を外芯の貫通孔に挿入した際に、該インキ溝58は外芯に形成したインキ溝(図示せず)に連通するような構成となっており、また、側部切欠き部55及び底部切欠き部57と外芯の貫通孔における内壁とで形成される空間は、二重ペン芯における先端と後端を連通した空気通路59となるように構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】こうした二重ペン芯の構造は、万年筆等において、インキ瓶からインキを軸筒内に設けられたインキを貯蔵するインキタンク内に吸入する際に、二重ペン芯の先端(外芯の先端)に開口した空気通路がインキ吸入通路となってインキをインキタンク内に吸入するので、ペン先をインキ内に前記開口した空気通路が没入する程度に没入すればよいのに対し、所謂、普通のペン芯構造のものは、ペンを取り付けた首部先端までインキ内に没入しなければならない。そのために、後者の場合は首部先端廻りがインキで汚れやすいという欠点があるため、二重ペン芯を用いた万年筆は、高級万年筆といわれるものに多く採用されている。
【0005】しかし、上記に詳述した従来の二重ペン芯の構造のものを、採用した万年筆については、内芯がその構造上、インキをスムーズにペンに供給するためにインキ溝に対しての空気通路のバランスをはかるため、空気通路内にはインキタンクから毛管作用により導出したインキが逗留している。そのために、万年筆に落下時の衝撃等の外力が与えられると、前記空気通路内に逗留したインキが二重ペン芯の空気通路の先端から飛び出してしまい、他のペン芯構造のものに比べて、万年筆の首部先端周辺やキャップ内をインキで汚し易いという欠点があった。
【0006】ペン芯の構造上、衝撃等の外力によりペン芯先端からインキが飛び出すことを完全に防止することは無理であるが、本発明者は、こうした二重ペン芯のインキ飛び出し量を少しでも少なくしようとして、種々検討した。周知のようにペン芯には、ペンにインキをスムーズに供給するという重要な役目があり、外芯や内芯に形成されたインキ溝と空気通路のバランスによって、その性能は左右されるので、前述の逗留したインキ量を低減するために、安易にインキ溝や空気通路の幅を小さくするなどの設計変更をすればすむという問題ではない。二重ペン芯のインキ飛び出しについて観察してみると、ペンと外芯との間に逗留したインキの飛び出し量より、空気通路の先端からのインキの飛び出し量の方が多いことが解った。そこで本発明者は、インキタンク内に内在したインキが前述したような外力により、空気通路を通って外部へ容易にインキが飛び出さないようにさせ、インキ飛び出し量の低減を図ろうとして本発明に至った。
【0007】上記に示した欠点を解決するために、当出願人は、図9乃至図13に示すように、実開平6−32081号で開示したが、二重ペン芯の内芯構造について、空気通路49を、内芯41の先端部の一方の側部44を切欠いて形成した側部切欠き部45と、該側部切欠き部45に連接して底部46の一部を切欠いた底部切欠き部47を形成し、該底部切欠き部47の後方の部分に、一方を前記底部切欠き部47に、他方を後端に開口した凹溝40を形成することにより、内芯41を外芯(図示せず)の貫通孔に挿入した際に、前記側部切欠き部45と、底部切欠き部47と、凹溝40と、及び前記貫通孔の内壁面とで形成される空間により形成した構成とし、前記内芯41に形成したインキ溝48を、先端から後端部にかけて上部42を切欠いて形成した上部平地部43に形成した凹溝と、前記底部切欠き部47の後方の部分の一方の側部に形成した、前記インキ溝48と位相がずれた軸芯方向に伸び後端を外方に開口した凹溝48’とにより、前記凹溝の後方部分と前記凹溝の前方部分を互いの底部において連通させてなるインキ溝とすることにより、インキの二重ペン芯の先端から飛び出し量を低減させることにしたが、この実開平6−32081号で開示した発明とは別のものとして、新たに本発明者は、上記に詳述した問題点を解決させるために、二重ペン芯の内芯構造において、内芯を外芯の貫通孔に挿入した際に、外芯の貫通孔の壁面と内芯の壁面とで形成される空気通路を改良し、衝撃等の外力が与えられて空気通路からインキが飛び出す場合、インキの飛び出し量を極力低減させることができるものを提供せんとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成させるために本発明は次のような構成を有する。即ち、少なくとも、一時的にインキを貯溜する櫛溝と、ペン先にインキを供給するための軸芯方向に伸びたインキ溝を有した外芯の軸心方向に伸びた貫通孔に、軸芯方向に伸び後端において外方に開口した前記インキ溝にインキを供給するためのインキ溝と、前記貫通孔の内壁面とで形成される空気通路を有した棒状体の内芯を挿入してなる二重ペン芯の内芯構造において、前記空気通路を、前記内芯の先端部の一方の上部を切欠いて形成した上部切欠き部と、該上部切欠き部と連接して側部の一部を切欠いて形成した側部切欠き部と、該側部切欠き部に連接して底部の一部を切欠いた底部切欠き部を形成することにより、前記内芯を前記外芯の貫通孔に挿入した際に、前記上部切欠き部と、側部切欠き部と、底部切欠き部と、及び前記貫通孔の内壁面とで形成される空間により形成したことを特徴としている。
【0009】本発明の内芯を有する二重ペン芯を用いた万年筆は、落下等による衝撃が与えられても、インキタンクに内在しているインキは、底部切欠き部を通って内芯先端方向に流入しようとしても、空気通路は後端から先端に向かって一旦側部切欠き部に変化し、更に上部切欠き部へと位相をずらすことにより、インキは、外芯に形成したインキ溝と連接する先端部分に、従来のように直線的に流れ込むのではないので、インキの飛び出し量を低減することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】次に、発明の実施の形態について図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施の形態中、同じ部材、同じ箇所を指す場合は、同じ番号を付してある。
【0011】本発明に係る二重ペン芯における内芯構造の実施の形態について、図1乃至図8に基づき説明する。二重ペン芯における内芯1の構造は、図1〜図8に示すように、従来の二重ペン芯における内芯構造と同様な、断面が円形状の棒状体である。また同様に、先端から後端部にかけて、内芯1を外芯16の貫通孔に挿入する際の位置決めのための上部平地部33を、内芯1の軸芯と平行に上部2を切欠いて形成する。更に先端部において、上部平地部33より下に下がった上部切欠き部3を、内芯1の軸芯と平行に上部2を切欠いて形成し、また、一方の側部4を上部切欠き部3に連接して一部を切欠いて形成した側部切欠き部5を設けてある。底部6には、側部切欠き部5に連接して内芯1の軸芯と平行に底部6を切欠いて形成した底部切欠き部7を設けてある。上部平地部33と上部2には、内芯1の軸芯方向に伸び、軸芯近くまでの深さを有する凹溝8からなるインキ溝11を形成してある。
【0012】外芯16の構造に関しては、特に定めはなく従来のものと構造が同様な、一時的にインキを貯溜する櫛溝13と、凹溝からなるインキ溝14と空気溝15を形成した外芯16の、軸芯方向に伸び前後端を貫通した貫通孔17に前述した構造の内芯1を挿入した際に、内芯1の前記インキ溝11は、外芯16に形成したインキ溝14に連通するような構成となっている。また、内芯1の前記側部切欠き部5と、底部切欠き部7と、及び外芯16の貫通孔17における内壁とで形成される空間は、二重ペン芯における先端と後端を連接した空気通路18となるように構成されている。
【0013】
【発明の効果】本発明は上述の発明の実施の形態の如き方法から成るものあって、本発明の内芯を有した二重ペン芯を万年筆に用いた場合、誤って万年筆に、例えば落下による衝撃等の外力を与えても、インキタンクに内在しているインキが、外芯と内芯とによって形成される空気通路を伝わって空気通路の先端に流入し難いので、従来の構造のもののように大量のインキが二重ペン芯の先端から飛び出すことはない。
【0014】また、内芯におけるインキ溝を前述のように構成することにより、インキタンクに内在しているインキが、内芯の先端側のインキ溝に、従来のように直線的に流れ込むのではないので、前記インキが飛び出した部分にインキが流入し難くくなり、さらにインキの飛び出し量は低減することができる。
【出願人】 【識別番号】000005027
【氏名又は名称】株式会社パイロット
【出願日】 平成8年(1996)4月12日
【代理人】
【公開番号】 特開平9−277773
【公開日】 平成9年(1997)10月28日
【出願番号】 特願平8−115525