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【発明の名称】 |
DNA配合インクを使用した押印またはサインの鑑定方法 |
【発明者】 |
【氏名】水島 徹 【氏名】水島 裕 |
【課題】各種書類に押印する印鑑、あるいは署名したサインの真贋を鑑定し、印鑑の盗用による犯罪の防止、あるいは書類に署名したサイン、筆跡から押印または署名した人が本人であることを鑑定することにより、公文書、私文書、通帳、免許証、各種証明書等の偽造を、迅速かつ的確に看破する方法を提供すること。
【解決手段】予め塩基配列が判明している特定のDNA断片を含有させたインクを使用し、当該インクを含有する朱肉、あるいは万年筆またはサインペンを用い、押印、または記載、署名した書類からインクを採取し、採取したインク中のDNAの塩基配列を指標に、押印、あるいは筆跡の真贋を鑑定する方法であり、好ましくは、予め塩基配列が判明している特定のDNA断片として、朱肉、万年筆またはサインペンの所有者のDNAを使用する、押印、あるいは筆跡の真贋を鑑定する方法である。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 予め塩基配列が判明している特定のDNA断片の塩基配列を指標に、押印、あるいは筆跡の真贋を鑑定する方法であって、 (1)当該DNA断片を含有させたインクを使用し、当該インクを含有する朱肉、あるいは万年筆またはサインペンを用いて押印、または記載、署名した書類からDNAを採取するか、または (2)書類へ押印、記載または著名した個所に、当該DNAを含有するDNA溶液を塗布しておき、押印、または記載、署名した書類の塗布部分からDNAを採取すること、 により得られたDNAの塩基配列により、押印、あるいは筆跡の真贋を鑑定する方法。 【請求項2】 予め塩基配列が判明している特定のDNA断片として、朱肉、万年筆、サインペンまたはDNA溶液の所有者が選択した特定のDNAを使用する請求項1に記載の真贋を鑑定する方法。 【請求項3】 DNA断片の含有量が、インクまたは溶液1mL当たり0.001ng以上である請求項1または2に記載の真贋を鑑定する方法。 【請求項4】 下記の各工程からなる押印、あるいは筆跡の真贋を鑑定する方法。 工程1:書類に押印する朱肉に使用するインク、または書類に記載、署名するのに使用する万年筆あるいはサインペンのインクへ、予め塩基配列が判明している所定のDNAを配合して、DNA含有インクを使用した朱肉、あるいは万年筆またはサインペンを調製するか、または押印、または記載、署名した書類に塗布する溶液へ、予め塩基配列が判明している所定のDNAを配合し、DNA溶液を調製する工程; 工程2:真贋が疑われた各種書類について、押印された印影、または記載、署名された筆跡よりインク、または塗布液を採取する工程; 工程3:採取したインクまたは塗布液に溶媒を加えて懸濁し、水でDNAを抽出し、得られたDNAをPCR法で増幅し、塩基配列を決定することにより当該DNAの特性を識別する工程;および、 工程4:識別したDNAと登録された、または予め塩基配列が判明している特定のDNAとを照合して、押印、あるいは筆跡の真贋を特定する工程。 【請求項5】 朱肉、万年筆、サインペンに使用する、予め塩基配列が判明している特定のDNA断片を含有させたインク。 【請求項6】 予め塩基配列が判明している特定のDNA断片を含有させたインクを含有する朱肉、万年筆またはサインペン。 【請求項7】 書類への塗布に適した容器に収納された、予め塩基配列が判明している特定のDNA断片を含有させたDNA溶液。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、DNA断片を含有するインクまたは溶液を利用した押印またはサインの真贋の鑑定方法に関し、さらに詳しくは、DNA断片を含有させたインクを朱肉、万年筆またはサインペンに使用し、押印された印鑑、または書類に署名したサイン、筆跡のインク中のDNAを指標にして、押印または署名した人が本人であることを鑑定することにより、公文書、私文書、通帳、免許証、各種証明書等の偽造を、迅速かつ的確に看破する方法に関する。 【背景技術】 【0002】 近年の契約社会においては、各種の契約書、証明書等が社会取引あるいは商取引上重要な書類であって、その真贋は社会的に大きな問題となりつつある。日本においては、公文書、私文書等、例えば、土地・家屋の譲渡・売買契約書においては、印鑑登録をした印鑑を押印することによりその取引の成立がなされたものとみなされ、押印した印鑑そのものが本人の実印であるか否かを証明するものとして、印影の真性を証明する印鑑証明を添付することが行われている。また、委任状などにおいても、押印された実印の真偽が問われる場合がまま発生する。 【0003】 さらに、実印などは、各家庭により大切に保管され、盗用されないよう注意が払われているが、現実の社会問題として、本人の知らない間に実印が押印されてしまい、社会的に大きな問題となるケースも散見される。特に、今日のコンピューター技術の発展は驚くべきものであり、本物と全く見分けのつかない偽物を制作することも可能であり、全く同一の印影を有する印鑑が複数種出始めることが充分予想される。 【0004】 また、このような場合にあっても、押印した実印が真性のものであるか否かを証明することはできず、印鑑証明書による証明は、押印された印鑑の印影の真性を証明する機能を有するだけに止まっており、実印の所有者が、本人の意思により押印したものであるか否かは判明しないのが現状である。 【0005】 事実、銀行預金通帳が知らない間に盗まれ、通帳に押印した銀行への届け印をコンピューターに取り込み、ほとんど同一の印影を作成し、預金が引き落とされるといった事態が発生しており、銀行側としては、今後預金通帳への押印を取りやめることとしている。 さらに、遺言書などにおいては、自筆証書の場合には、本人が自筆したものであるか否かがその筆跡により認定され、その真偽が、残された遺族間で争いごととなる場合も種々散見されている。 したがって、各種書類に押印された印鑑、あるいは署名されたサインが本人によるものであるか否かを簡便に鑑定し得る手段が求められているのが現状である。 【0006】 ところで、微量な物質による識別方法として、DNA断片を利用した識別方法が知られている。例えば、液体にDNAを加えこれをマーキングするものに付加し、PCR法を利用してDNAを検出する方法(特許文献1)、貴重品の暗号マーキング方法として核酸を利用する方法(特許文献2)、核酸を利用して異物質間を同定する方法(特許文献3)などが知られているが、押印またはサインの真贋の鑑定方法にDNA自体を利用する方法は知られていない。 【0007】 【特許文献1】米国特許第5643728号公報 【特許文献2】特開平3−58800号公報 【特許文献3】国際公開 WO 90/14441号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 そこで本発明者等は、各種書類に押印する印鑑、あるいは署名したサインの真贋を鑑定し、印鑑の盗用による犯罪の防止、あるいは書類に署名したサイン、筆跡から押印または署名した人が本人であることを鑑定することにより、公文書、私文書、通帳、免許証、各種証明書等の偽造を、迅速かつ的確に看破する方法を提供することを課題とする。 【0009】 かかる課題を解決するべく本発明者等は鋭意検討した結果、各種書類の押印に使用する朱肉、万年筆あるいはサインペンのインク中に、予め塩基配列が判明しており、固有の識別性を有するDNA断片を配合し、押印した朱肉あるいは署名したサインまたは自筆筆跡からインクを採取することにより、そのインク中に含まれるDNAを検出し、その塩基配列を指標にして、予め登録されているDNAと検出DNAとを照合すること、あるいは、押印、または記載、署名した個所に、予め塩基配列が判明している固有の識別性を有するDNA断片を配合した溶液を塗布しておき、塗布部分からDNAを採取し、その塩基配列を指標にして、押印した人あるいはサインした人が本人であることを特定し、その押印またはサイン等の真贋を鑑定する方法を見出し、本発明を完成させるに至った。 【課題を解決するための手段】 【0010】 すなわち本発明の基本的態様である請求項1に記載の発明は; 予め塩基配列が判明している特定のDNA断片の塩基配列を指標に、押印、あるいは筆跡の真贋を鑑定する方法であって、 (1)当該DNA断片を含有させたインクを使用し、当該インクを含有する朱肉、あるいは万年筆またはサインペンを用いて押印、または記載、署名した書類からDNAを採取するか、または (2)書類へ押印、記載または著名した個所に、当該DNAを含有するDNA溶液を塗布しておき、押印、または記載、署名した書類の塗布部分からDNAを採取すること、 により得られたDNAの塩基配列により、押印、あるいは筆跡の真贋を鑑定する方法である。 【0011】 より具体的な請求項2に記載の本発明は、予め塩基配列が判明している特定のDNA断片として、朱肉、万年筆、サインペンまたはDNA溶液の所有者が選択した特定のDNAを使用する請求項1に記載の真贋を鑑定する方法である。 【0012】 すなわち、DNAの塩基配列は、印鑑所有者、あるいはサイン者個人によりそれぞれ異なっており、例えば、本人であるか否かを鑑定するのに、その人のDNA鑑定によって行われている。特に近年では、犯罪事件における被害者、あるいは加害者の特定にDNAによる鑑定が大きな比重を占めており、また親子鑑別にも、近年はDNA鑑定が用いられている。 したがって、印鑑等の押印、あるいは書類のサイン等の真贋を判別するには、当該書類に押印あるいは署名する本人が選択したDNA断片を含有させるのが最も好ましいものである。 【0013】 また請求項3に記載のより具体的な本発明は、インクまたは溶液中に含有させるDNA断片の含有量が、インク1mL当たり0.001ng以上である請求項1または2に記載の真贋を鑑定する方法である。 【0014】 また、別の態様としての請求項5に記載の発明は、朱肉、万年筆、サインペンに使用する、予め塩基配列が判明している特定のDNA断片を含有させたインクであり、請求項6に記載の発明は、予め塩基配列が判明している特定のDNA断片を含有させたインクを含有する朱肉、万年筆またはサインペンであり、さらに請求項7に記載の発明は、書類への塗布に適した容器に収納された、予め塩基配列が判明している特定のDNA断片を含有させたDNA溶液である。 【発明の効果】 【0015】 本発明が提供する、印鑑等の押印、あるいは書類のサイン等の真贋を鑑定する方法により、公文書、私文書、預金通帳、免許証、各種証明書あるいは遺言書の偽造の有無を迅速、かつ的確に看破することができる。すなわち、本発明が提供する真贋を鑑定する方法により、各種書類に印鑑を押印した人が本人であるか否か、また各種書類の署名者、あるいは作成者が本人であるか否かを、迅速かつ的確に認識、区別し得る。 【0016】 また、本発明が提供する予め塩基配列が判明している特定のDNA断片を含有させたDNA溶液は、書類への塗布に適した容器に収納されたものであり、この溶液を、公文書、私文書、各種証明書あるいは遺言書の押印、または記載個所に例えば塗布または噴霧しておくことにより、各種書類に印鑑を押印した人が本人であるか否か、また各種書類の署名者、あるいは作成者が本人であるか否かを、迅速かつ的確に認識、区別し得る。 したがって、犯罪などの早期解決および撲滅につながり、かかる点で公共の利益に供するものである。 【発明を実施するための最良の形態】 【0017】 本発明方法は、上記した如く、予め塩基配列が判明している特定のDNA断片の塩基配列を指標に、押印、あるいは筆跡の真贋を鑑定する方法であって、 (1)当該DNA断片を含有させたインクを使用し、当該インクを含有する朱肉、あるいは万年筆またはサインペンを用いて押印、または記載、署名した書類からDNAを採取するか、または (2)書類へ押印、記載または著名した個所に、当該DNAを含有するDNA溶液を塗布しておき、押印、または記載、署名した書類の塗布部分からDNAを採取すること、 により得られたDNAの塩基配列により、押印、あるいは筆跡の真贋を鑑定する方法であり、それにより各種類の偽造を的確に看破することができる。 【0018】 すなわち、本発明が提供する印鑑等の押印、あるいは書類のサイン等の真贋を鑑定する方法は、DNAの固有識別性を利用して、インクまたは溶液中に塩基配列が判明している特定のDNA断片を配合することにより、インク等に含まれるDNAをPCR法によって増幅し、塩基配列を決定することにより、このインク等のDNAと、予め登録しておいた、または予め塩基配列が判明している特定のDNA断片との同一性の照合を行うことにより、印鑑等の押印、あるいは書類のサイン等の真贋を鑑定することができる。 【0019】 より具体的には、本発明が提供する印鑑等の押印、あるいは書類に署名したサイン等の真贋の識別方法は、例えば、次の各工程から行うことができる。 工程1:書類に押印する朱肉に使用するインク、または書類に記載、署名するのに使用する万年筆あるいはサインペンのインクへ、予め塩基配列が判明している所定のDNAを配合して、DNA含有インクを使用した朱肉、あるいは万年筆またはサインペンを調製するか、または押印、または記載、署名した書類に塗布する溶液へ、予め塩基配列が判明している所定のDNAを配合し、DNA溶液を調製する工程; 工程2:真贋が疑われた各種書類について、押印された印影、または記載、署名された筆跡よりインク、または塗布液を採取する工程; 工程3:採取したインクまたは塗布液に溶媒を加えて懸濁し、水でDNAを抽出し、得られたDNAをPCR法で増幅し、塩基配列を決定することにより当該DNAの特性を識別する工程;および、 工程4:識別したDNAと登録された、または予め塩基配列が判明している特定のDNAとを照合して、押印、あるいは筆跡の真贋を特定する工程。 【0020】 本発明が提供する印鑑等の押印、あるいは書類のサイン等の真贋を鑑定する方法は、基本的には上記の各工程を経て行われるが、必要に応じて、種々の変形が可能であることはいうまでも無い。 以下に各工程について、さらに詳細に説明する。 【0021】 工程1において、書類に押印する朱肉に使用するインク、または書類に記載、署名するのに使用する万年筆あるいはサインペン用のインクは、通常これらのインクとして使用されるインクであり、水性インクあるいは油性インク等をあげることができる。 また、DNA溶液として使用する場合の溶液としては、水性溶液または非水性溶液をあげることができ、これらの溶液は速乾性であることが好ましい。 【0022】 なお、DNA溶液を収納する書類への塗布に適した容器としては、種々のものを挙げることができ、例えば、(マイクロ)スポイト容器、ドロップポンプ式容器、スプレー式容器等を挙げることができる。スプレー式容器を使用する場合には、押印個所、あるいは記載、署名個所を万遍なく覆い塗布することができ、またスポイト容器の場合には、押印または署名個所、あるいは記載個所の特定部分にDNA溶液を滴下し、塗布することもできる。したがって、本発明においてはDNA溶液の塗布とは、滴下も含まれることに注意すべきである。 【0023】 一方、本発明方法において使用されるDNA断片は、その塩基配列が判明している特定のDNA断片である。この場合のDNA断片としては、使用者本人が選択した固有のDNA断片を用いるのが好ましい。かかるDNA断片は、一般的なDNA合成装置、例えば市販のDNA合成装置を用いて作成することができる。ところで、DNAはアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)4種の塩基成分からなるものであり、その組合せを考えると、例えば30個の塩基配列を用いて任意に組合せた場合には、1000兆通りの組合せが可能である。したがって、少なくとも30個の塩基配列を用いることにより、1000兆もの書類を識別できるので、国内外のあらゆる公文書、私文書、各種証明書に押印された印鑑、あるいは書類のサイン等の真贋を識別、鑑定するのに充分量となる。また、塩基配列の長鎖を調節することによりDNAの数量を増減することができるので、識別目的に応じて塩基配列の長鎖を選択することができる。 【0024】 DNA断片のインク中への配合方法は、DNA断片を溶媒に溶解または懸濁し、該懸濁または溶解液をインクに加えDNA断片がインク中でほぼ均一になるように十分攪拌する。なお、必要に応じ加熱等の手段を加えてもよい。使用する溶媒としては、インクに使用されるものであればいずれの溶媒をも使用することができるが、一般的に水溶性の有機溶媒、例えばエタノール、あるいは非水溶性の有機溶媒、例えばトルエンを使用するのが好ましい。 【0025】 DNA断片のインクまたは溶液中への配合量は、PCR法によりDNAを増幅するので、採取される朱肉、あるいは筆跡中のインク痕跡、さらには塗布溶液から、基本的には最低1分子のDNAが回収されれば識別には充分である。したがって、DNA断片の含有量が、インクまたは溶液1mL当たり約0.001ng(ナノグラム)以上のDNA断片を配合しておけば、仮に朱肉、あるいは筆跡中のインク痕跡等が1ng程度であっても、そこに含有されているDNAを採取し、PCR法で増幅することによりその塩基配列を識別することが可能となる。なお、この濃度においてDNA断片は現在使用されている全てのインク溶媒に可溶なものであった。 【0026】 本発明においてはインクまたは塗布液中に含有されているDNAの塩基配列を照合することによって、印鑑を押印した人、あるいは各種書類に署名した人、さらには自筆書類作成者を識別することになる。したがって、インクまたは塗布液中に含有されるDNA断片の特性は、例えば、コンピューターなどの記憶媒体に記録しておく。この記憶媒体に記録しておくことにより、インク中に含有された、塩基配列が判明している特定のDNA断片を、迅速かつ的確に識別することができる。 【0027】 次いで、工程2〜工程4は、その印鑑等の押印、あるいは書類のサイン等の真贋が疑われている各種書類について、押印された印影、または記載、署名された筆跡から、印鑑所有者本人、あるいはサイン者本人であることを鑑定する工程である。 【0028】 例えば、工程2において、真贋が疑われた各種書類について、押印された印影、または記載、署名された筆跡よりインクまたは塗布液を採取する。次いで工程3において、工程2で採取したインクまたは塗布液を適当な溶媒に懸濁ないし溶解し、水でDNAを抽出し、水層中のDNAをエタノール沈殿法により濃縮精製後、得られたDNAをPCR法で増幅する工程である。 【0029】 採取したインクまたは塗布液を溶解/懸濁する溶媒としては、インクの特性、すなわち油性インクか水性インクにより適宜選択され、これらのインク等を溶解するものが良く、具体的にはトルエンを用いるのが好ましい。DNAの抽出は、2相抽出法で水層からDNAを取り出すか、多量の水を加え遠心分離により水層へDNAを移相させて水層からDNAを取り出す方法が適用される。得られたDNA含有水溶液を減圧乾燥するか、または凍結乾燥し、残渣をPCR法に供し、DNAを増幅して塩基配列を決定して、その識別を行うこととなる。 【0030】 このPCR法の操作のために、例えば、その配列の異なる30塩基の前後に25塩基の共通の配列を持つDNAを結合させる。したがって、使用するDNAは全部で80塩基の長さになる。PCRの回数は、DNAの塩基配列が可能になるまで増幅するが、30〜50サイクルで目的を達成することができるが、一般的には40サイクル程度の増幅を行うのが好ましい。 【0031】 工程4においては、工程3で識別したDNAの塩基配列と、予め記憶媒体に記録したり、または自宅で管理しているDNAの塩基配列情報とを照合して、その印鑑等の押印、あるいは書類のサイン等の真贋を識別することができ、押印した人、あるいは、各種書類に署名した人、さらには自筆書類作成者を識別することができる。 【実施例】 【0032】 次に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれに限られるものではない。 【0033】 実施例1 トルエンを主成分とする有機系のインクに、インク1リットル当たり80塩基からなるDNA断片の1ngを配合し、常温で混合攪拌したところDNA断片は溶解し、この有機溶液を乾燥固定した。80塩基のDNA断片は、その塩基配列が予め判明しているものを使用した。次に、その乾燥固定物のうち1ngを剥離採取し、トルエンと水の1:1混合液中で10分間混合した。その後、遠心操作により水層とトルエン層を分離し、水層中のDNAをエタノール沈殿法により濃縮精製し、次いでPCR法(40サイクル)を行った。その結果、DNAの塩基配列を決定するために必要なDNAを得られ、実際に塩基配列の決定を行い、インク中に混合した80塩基のDNAと同じ塩基配列を確認することができた。 なお、80塩基からなるDNA断片は、任意に選んだ30塩基の前後に共通の配列を持つ25塩基を結合させたものを使用した。 【産業上の利用可能性】 【0034】 以上記載のように、本発明は、各種書類の押印に使用する朱肉、万年筆あるいはサインペンのインク中に、予め塩基配列が判明しており、固有の識別性を有するDNA断片を配合し、押印した朱肉あるいは署名したサインからインクを採取することにより、そのインク中に含まれるDNAを検出し、その塩基配列を指標にして、予め登録または判明しているDNAと検出DNAとを照合することにより、印鑑等の押印、あるいは書類のサイン等の真贋を鑑定することができる。 【0035】 また、DNA断片を配合したインクではなく、DNAを配合した溶液により、押印、記載、署名個所を塗布(点滴)することによりDNA塗布液を書類に付着させ、マークさせ、その書類の真贋を鑑定することもできる。 【0036】 したがって、印鑑を押印した人、あるいは種類にサインした人、または書類の作成者が本人であることを特定することができ、その種類の偽造を迅速、かつ簡便な方法で看破することができることから、犯罪の早期解決、撲滅に寄与し、公益に大きく貢献するものである。
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【出願人】 |
【識別番号】303010452 【氏名又は名称】株式会社LTTバイオファーマ
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【出願日】 |
平成16年3月1日(2004.3.1) |
【代理人】 |
【識別番号】100083301 【弁理士】 【氏名又は名称】草間 攻
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【公開番号】 |
特開2005−247900(P2005−247900A) |
【公開日】 |
平成17年9月15日(2005.9.15) |
【出願番号】 |
特願2004−56519(P2004−56519) |
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