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【発明の名称】 ペン先および万年筆
【発明者】 【氏名】梶野 健次

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 先細り状で、先端に向かって延びるインキガイド用のスリットが形成されたペン先であって、その先端部を外側に向かって屈曲させることにより、その先端と屈曲部分とのそれぞれで筆記可能に構成したペン先。
【請求項2】 上記先端部は、複数の屈曲部分を有し、少なくとも3つの部分で筆記可能に構成した請求項1に記載のペン先。
【請求項3】 上記屈曲部分より先端側部分は湾曲し、この湾曲部分で筆記可能とした請求項1に記載のペン先。
【請求項4】 先細り状で、先端に向かって延びるインキガイド用のスリットを有するとともに、先端部が外側に向かって屈曲したペン先と、このペン先を支持するペン軸とを備えた万年筆。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、少なくとも2つの部位で筆記可能としたペン先およびこれを使用した万年筆の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、ペン先の構造としては、例えば実開平3−50486号公報、実開平5−70975号公報等に記載されたものが知られている。これらの公報に示すペン先は、いずれも先細り状に形成され、インキガイド用スリットが先端に向かって延びている。したがって、このペン先を用いて筆記するには、ペン軸を把持してペン先の先端を筆記用紙に押し当てながら行う。インキはスリットを通って先端まで案内され筆記用紙面に導き出される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来のペン先にあっては、単一の筆記当接部を有している構造であり、単一の太さの線での筆記しかできなかった。もし、ペン先に力を加えてスリット先端を広げて筆記したとしてもわずかに太い線を描くことが可能であるだけである。そして、近年の筆記具の多様化等と相俟って、ペン・万年筆などでも、例えばアンダーラインを描いたり、塗り潰しを行う場合等には太い線で描きたいという要望があった。したがって、従来のペン先では、このような異なる太さの線を描きたいという要望には到底応えられるものではなかった。
【0004】
【発明の目的】この発明の目的は、単一のペン先で異なった太さの線を描くことを可能とすることである。この発明の目的は、任意の太さの線での筆記を可能とした万年筆を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明は、先細り状で、先端に向かって延びるインキガイド用のスリットが形成されたペン先であって、その先端部を外側に向かって屈曲させることにより、その先端と屈曲部分とのそれぞれで筆記可能に構成したペン先である。
【0006】請求項2に記載の発明は、上記先端部は、複数の屈曲部分を有し、少なくとも3つの部分で筆記可能に構成した請求項1に記載のペン先である。
【0007】請求項3に記載のペン先は、上記屈曲部分より先端側部分は湾曲し、この湾曲部分で筆記可能とした請求項1に記載のペン先である。
【0008】請求項4に記載の発明は、先細り状で、先端に向かって延びるインキガイド用のスリットを有するとともに、先端部が外側に向かって屈曲したペン先と、このペン先を支持するペン軸とを備えた万年筆である。
【0009】
【発明の作用】この発明に係るペン先にあっては、先端と、屈曲部分とでいずれも筆記可能である。この場合、先端のスリット幅は屈曲部分のそれよりも小さく狭い。よって、単一のペン先を用いて複数の太さの線が筆記可能となる。また、万年筆にあっても同じく先端で細い字、線を描くことができるとともに、屈曲部分でそれより太い線・字の筆記を行うことができる。そして、これらの筆記にあってはそれぞれの部分で筆記すれば、筆圧とは無関係に、それぞれの太さでかつ安定した太さの線での筆記ができる。特に、この屈曲部分より先端側を湾曲させることにより、その線の太さを任意の太さに連続的に変えることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、この発明に係るペン先の一実施例を図面を参照して説明する。図1〜図3はこの発明の一実施例に係る万年筆のペン先部分を示す図である。これらの図において、1はペン軸であって、その先端にペン先2が固着されている。ペン先2は、金属製(ステンレス製等)の板材であって、幅方向に所定の曲率で湾曲して形成されている。具体的には、所定厚さの帯板状部材を、その長さ方向と平行に延びる軸を中心とした円筒の一部を形成するように、湾曲させ、さらに、その一端側(先端側)を三角形状に先細り状に切断してある。
【0011】この先細りの先端部3には、その頂点に対して延びるインキ案内用のスリット4が形成されている。すなわち、先端部3の幅方向の中央部にはインキ溜用の円孔5が穿設されており、この円孔5から先細りの頂点7に対してわずかな幅のスリット4が形成されているのである。したがって、この万年筆にあっては、ペン軸1に内蔵させたインキ供給部(例えばカートリッジ)から図示していない供給管を通ってインキが円孔5に供給され、さらに、毛細管現象によりスリット4に案内されてインキは筆記部に導かれることとなる。
【0012】そして、この先端部3にあって、その先端側部分3Aは曲率中心の外側に向かって所定角度で折り曲げられて屈曲している。さらに、この屈曲部6よりも先端側部分3Aはその外側に曲率中心が位置するように所定の曲率で湾曲させて形成してある。この結果、このペン先2にあっては屈曲部6と先端側部分3Aの先端頂点7との2カ所に、さらには湾曲した先端側部分3Aに無数の筆記部が構成されることとなる。
【0013】以上の構成に係る万年筆を用いて筆記する場合、ペン軸1を把持してこれを所定角度に傾けて先端側部分3Aの頂点7で筆記することができる。この場合、線の太さは細くなる。そして、把持状態を変えることなく、ペン軸1の用紙に対する角度を上記角度よりは小さくして屈曲部6を用紙に当接させる。この結果、屈曲部6で上記頂点7での筆記の場合よりは太い線を描くことができる。筆記時、スリット4が開いて頂点7よりは多量のインキを出すことができるからである。この屈曲部6での筆記は、例えばアンダーライン,塗り潰し等に有用である。また、文字を筆記した場合でも、宛名書き等に好適なものである。また、先端側部分3Aの任意の位置で筆記することができ、任意の太さの線を筆記することができる。
【0014】なお、上記実施例ではペン先2として湾曲した金属製板材の先端を三角形状に切断・形成したものを用いたが、これに限られることなく、例えばセラミックス製の板材を先端を屈曲成型して使用することもできる。また、平坦な板材を先端を先細り状に形成し、所定角度だけ屈曲させてペン先を構成することもできる。
【0015】また、この発明にあっては、先端側部分を2カ所以上折り曲げることで屈曲筆記部を複数箇所形成することもできる。その結果、太さの異なる3本以上の線を一つの万年筆で描くことができる。
【0016】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば、ペン先に複数の筆記部を構成したため、1本のペンまたは万年筆で、かつ、その持ち方を変えることなく、太さの異なる複数の線を容易に描くことができる。また、市販のペン先の簡単な改良でこのような有用なペン先を作製することができる。
【出願人】 【識別番号】595129924
【氏名又は名称】梶野 健次
【出願日】 平成7年(1995)8月16日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】安倍 逸郎
【公開番号】 特開平9−52486
【公開日】 平成9年(1997)2月25日
【出願番号】 特願平7−231985