2011年5月15日(日)、NHK教育テレビで放送された番組「ネットワークでつくる放射能汚染地図 ~福島原発事故から2か月~」は福島原発事故後2ヶ月経過する状況を描くドキュメンタリだ。ちなみに再放送は、5月20日(木)午前1:30~(総合テレ ビ)。これを5回にわけて文字に起こしていく。
6回目は、郡山市の教育現場の汚染された土、文部科学省の官僚と福島県の親の20ミリシーベルトをめぐる交渉、研究者たちの土のサンプル分析結果、葛尾村の厩舎、赤宇木の夫妻画家っていた犬、パンダ。放射能によって壊された町の実態が集約されている。文字「4月27日」
……基準値を超えました。土を3センチ程度削ります。
文字「郡山市立薫小学校」
文部科学省は、1日1時間の制限を守れば、放射能除去は必要ないとしています。郡山市独自位の判断です。
作業後、4.1マイクロシーベルトの放射線量が、1.9に下がりました。
削った土は市内の埋立処分場に運ぶ計画です。
文字「郡山市 逢瀬町」
4500人が暮らす逢瀬町。
廃棄物を積んだトラックが行き交っていました。町の外れにある河内埋立処分場です。震災後に運ばれる大量の瓦礫。放射能で汚染されていないか、周辺の住民が話し合っている矢先に土を運ぶ計画が知らされました。
土を削った同じ日、緊急説明会が開かれました。詰めかけた住人はおよそ100人。
郡山市の生活環境部長らが土を運ぶことに対する理解を求めます。
「除去した表土については、格別の放射線の濃度が高いということでありませんで、それは……」
※参加者のどよめき、嘲笑。
「河内、風評で、今度河内の野菜、米も売れなくなる。」
「こんなの持ってきたっちゃ」
「農家いじめだ。とんでもない! こりゃ絶対反対! 皆さん反対ですね?」
※拍手
「以上」
「子どもこどもってあなた方いいますけども、ここにだって子どもいるんですよ、未来の子どもが。」
「今の原発の問題は、全て東電と国が責任あるんですよ。郡山市は、なんでそれを東電と交渉しないんですか。我々と交渉したってしょうがないでしょ。東電の敷地にもってって東電のとこに置けばいいじゃないですか」
声「中止ということでよろしいですね」
「ええ、わかりました。そのような形で……」
「そのようなってのは?」
「ですから、皆さんのご理解を頂けないうちは、あそこの???の埋立には持ってこないとそれは私の方からお約束いたします」
※拍手。
文字「4月28日」
汚染された土は校庭に残されました。郡山市長が周辺市長らと共に、支援措置を国に求めています。
しかし国は校庭に保管するよう指示したままです。
福島の親たちは抗議の声を上げています。国が子どもを守る活動の足かせになっていると永田町に乗り込みました。
文字「参議院議員会館」
「えー、福島のですね、校庭の土を、ある学校の校庭の土をここに置かせてください。これを見ながらお話し合いをさせてください。」
放射能で汚れた土。その上に子どもがいる。
文部科学省に突き詰めました。
「砂場で遊んだり、泥んこで遊んだりするんですよ。その土でですよ。見てくださいそれを。それがいいのかってことなんだ。いいわけ無いから早く手を打つために、20ミリシーベルトの基準を撤回してくださいということなんです。」
「これを撤回しないと身動き取れないんですよ。これじゃいかんと言っていただければ、手を打つんです、みんな。お願いします。撤回してください。」
文字「文部科学省 原子力安全監」
「20ミリシーベルトが危険という意味ではないというふうに私は思っております。ただしただし、20ミリシーベルトでいいとは思っていないので、」
※どよめき
「できるだけ低くすると、ああ、ええ、このへんは多分色々とご意見あると思いますが」
「私たちどもが出した通知を守っていただければ、安全上問題になることではない。ということなので」
ところが、年間20ミリシーベルトという限度量を決めるときに、文科省が助言を求めた原子力安全委員会が意外な発言をしました。
文字「原子力安全委員会」
「20ミリシーベルトを基準とすることは、これはもう認められない。これはハッキリ申し上げさせていただきます。20ミリシーベルトを基準とすること、これは、もう原子力安全委員会は認めておりません。で」
※会場ざわめき。
「認めておりません! はい! 20ミリシーベルト、年間20ミリシーベルトの被曝は許容しません。子どもに関しては。それははっきり原子力安全委員会としていわさせていただきます。」
「そうしますと安全委員会は、じゃあ何ミリシーベルトまでなら大丈夫だと、いうふうに言ってるんですか?」
「ええ…、申し訳ございません。今の段階では、まだ、その生徒さんが許容できる限度というのは申し上げてございません。」
「今後も決める予定はないんですか?」
「もちろんですね。引き続き検討させていただいて、必要な助言を引き続きさせていただきます」
「原子力安全委員会は20ミリシーベルトは子どもに浴びさせていいとは認めてないんですよ。どれくらいが適切かというのはこれから考えるって言ってるんでしょ。」
「答え出るまで待ちましょうよ。通常の学校やるのを。」
※拍手
「委員長にも伝えます。」
「地域崩壊起こってるんですよ」
20ミリシーベルトという基準は現在も撤回されていません。
文字「広島市」
4月。木村真三さんが福島で採取したサンプルを送り依頼していた研究者たちが集いました。分析結果を検討する会議が開かれます。
「でこれが、土ですね。」
長崎大学の高辻俊弘さんが、今回採取された50点近いサンプルの特徴を報告しました。土壌サンプルの放射能の値には大きな開きがありました。
例えばセシウムによる汚染は、44キロ地点のサンプルに比べ、4キロ地点は2000倍以上でした。
高辻さんは更に興味深い指摘をします。
「形は同じ地点で土5センチ10センチ、それから苔は似ている。この成分比は似ているということ」
高辻さんは放射能の量こそまちまちだが、それに含まれる放射性核種の比率は同じだといいます。つまりどこで何を採取しても同じ顔の放射能が見つかっているというのです。
文字「長崎大学高辻俊弘さん」
「これは私が昔チェルノブイリで調査したときには、なかなかその地点での代表的な放射能値が取れないと。今回は地点地点ではそんなに分布はない。」
「チェルノブイリと今回の事故との大きな相違点というか、違いというのはどういうところがあると思います?」
文字「広島大学 静間清さん」
「やっぱり温度の違い。チェルノブイリの時はかなり高温で、まあそのままドカンといってますので全部吹き出してるんですが、今度のは、それからじわじわ出たものがひろがってきてる。」
文字「広島大学 遠藤暁さん」
「だからそれから燃料棒自体が燃えていない。もしくは水蒸気爆発みたいので吹っ飛んでないから、基本的に揮発的なものが出てきて、それがセシウム、???、バリウム、ランカン、その辺になってくるよね」
2ヶ月に渡る調査で貴重なサンプルは集まりました。しかし、原発事故の複雑な様相を読み解くための分析はまだ始まったばかりです。
「これの確認、どうやっていこうと」
「これも振りれちゃうんで。」
「あ、急にあがりましたよ、ここで。ここで30マイクロ、あ、超えた。」
文字「岡野真治さん」
放射能汚染地図を作るため、調査を続ける岡野眞治さんと木村真三さん。
徹底的に現場に足を運んで測定してきました。
「今60マイクロ超えましたね。」
文字「東京電力 福島第一原子力発電所 正門」
この日は事故を起こした福島第一原発の正門に向かいました。
入構は許可されませんでした。木村さんは、いずれは事故現場の放射能調査をしたいといいます。
「は、入れんのかな?」
「すいません、一般道に出てからでいいんで、一発、土とって帰りましょうか。ここ敷地内だからまた怒られるんで。」
「結構早く動くね。」
「はい」
原発から1キロにある路上で、木村さんは土壌のサンプルを取りました。
これまで原発構内でしか、みつかっていない猛毒のプルトニウムが、この無人となった住宅地の土には含まれているかもしれないと考えたのです。
サンプルは特殊な分析ができる金沢大学に送りました。
文字「葛尾村」
放射能汚染は、人間の暮らしを根こそぎに奪いました。
葛尾村で競走馬を育ててきた篠木要吉さんです。
住み慣れた家を出て郡山に避難することになりました。
厩舎は、すでにもぬけのからでした。
原発事故の後に生まれたあの仔馬は、茨城県の牧場に無償で引き取られました。
「ここに赤ちゃんいたんですね」
「そうだね」
「なかなか元気な男の子だったじゃないですか」
「ほんとだよね。元気よくてね。うん。で昨日かな? 連絡もらったんですけど、すごい元気でいるからということでした」
「どうしてそのー、自分の財産を手放したり、土地を捨ててでなくちゃいけねえとか。凄い理不尽だなって思いますね。ましてや、こう何年とか、何年とか下手すりゃ何十年も返ってこれない。」
「ただどうしてそうなんのか。誰か答えて欲しいですよね。」
「では気をつけて」
「はいありがとうございます」
篠木さんは避難先の郡山で新しい仕事を探すことになります。
大正時代からの厩舎は閉じられました。
「こんな格好していってから、犬も猫もなんでだろと思うだろ。なんでも」
赤宇木の集会所であった岩倉夫妻が、残してきた犬と猫に餌を与えるため久しぶりに浪江町の家に向かいました。
20キロ圏内が立ち入り禁止になる1週間前のことでした。
もう、二度と来られないかもしれません。
「桜は満開のようですねー。」
「あー、満開だ、桜……」
原発事故現場からおよそ8キロ。住み慣れた町はいつもの春を迎えていました。
「猫かな? うん違うか、うわ、猫だ! 子猫? ああ、よかしてやりてかったな。」
愛犬のパンダは、前回残してきた犬と水で生き延びていました。
「あーよいよいよいよいよいよいよい。元気だなあ。元気だ元気。」
「あらなんだ、やせたなあ。いま新しいえさ入れっから。ずいぶんやせたなあーーー。かわいそうにこんなに荒れちゃって、あーーー。」
滞在時間は1時間以内と決めていました。時間はあっという間に過ぎます。
別れ際パンダが自分で鎖を外せるように首輪を繋ぎ直しました。
「食べてっから早く……。」
福島で原発事故が起こった2ヶ月、木村真三さん、岡野真治さん、新旧二人の科学者が合作した放射能汚染地図ができあがりました
調査のために走った距離はおよそ3000キロ。
ついこないだまで豊かな実りの中で命がつながってきた大地。そ
こに刻まれた放射能の爪痕です。
「取材協力 加藤博 山本正儀 小出裕章」
「鹿島綾乃」
「撮影 日昔吉邦 井上衛 服部康夫」
「音声 折笠慶輔 佐藤健康 内村和嗣」
「音響効果 日下英介」
「映像技術 眞舟公(※2文字で1文字)毅」
「CG制作 高崎太介」
「編集 西条文彦 佐藤友彦 青木孝文」
「車両 今井秀樹 丹野進」
「取材 梅原勇樹 石原大史 池座雅之 渡辺考」
「ディレクター 七沢潔 大森淳郎」
「制作統括 増田秀樹 原由美子」
(文字おこし、終。)
長い文字おこしに、お付き合いいただきありがとうございました。(ブログ主)
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