2011年5月15日(日)、NHK教育テレビで放送された番組「ネットワークでつくる放射能汚染地図 ~福島原発事故から2か月~」は福島原発事故後2ヶ月経過する状況を描くドキュメンタリだ。ちなみに再放送は、5月20日(木)午前1:30~(総合テレビ)。これを5回にわけて文字に起こしていく。第2回目は、3月末までの調査。幹線道路沿いに沿って放射能を計測。20キロ以上30キロ未満にも、強い放射能を測定する地域があった。だが、住民の中には、各々の事情で街に残る人たちがいた。
このエントリーは、以下のエントリーの続きです。
文字おこし(1)『NHK ETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図」~福島原発事故から2ヶ月~』
(文字おこし、続き)
断裂した道路に車が放置されていました。
「車が汚染されてしまって、メーター300マイクロ毎時が振り切ってます。」
行く手が閉ざされた道で、持ち主が逃げ出したあとに残された車。
そこには原発から吹く風を浴び続けた痕跡が残されていました。
原発から4キロの地点に戻り、木村さんはホットスポットと思われる場所でサンプルを取ることにしました。ここの放射線レベルは毎時300マイクロシーベルトを上回っています。
1号機で爆発が起こった3月12日。とるものもとりあえず住人が避難してから時間が止まったような民家。
ここの土からは、1平方メートルあたり、1億6600万ベクレルのヨウ素131。
2120万ベクレルのセシウムが検出されました。
これまでの地点に比べ圧倒的に大きな放射能の量でした。
西から東へ向けての調査が終わると、木村さんは3月20日からは南から北へ向けてサンプリングをしました。
原発から20から30キロ圏内の3つの地点の土壌の放射能の値です。
セシウムを見ると末続町と葛尾村では、およそ15倍の開きがあります。原発からの距離が同じでも放射能汚染には濃淡があることがわかります。
汚染のマダラな分布にかかわらず、原発から半径20キロから30キロのエリアは、一律に屋内退避地域とされていました。避難判断は住民自身に委ねられ混乱が生じていました。
日没を待って葛尾村の中心部を訪ねました。
信号機や該当以外アカリは見えません。葛尾村は地震から3日後の3月142日、既に全損自主避難を決めていました。
心細くてもう宿に帰ろうと思い始めていたとき、山の中腹にポツリと、ひが灯る家があることに気づきました。
「こんにちわー、NHKなんですけれども」
競走馬を育てている一家でした。
文字「篠木要吉さん」
「結構覚えてるもんだよね、この馬はこうだったとかさ」
牧場は篠木要吉さんで5代目です。大正時代から数々の名馬を育ててきました。
要吉さんと長男の裕一郎さんには、村を出られないわけがありました。
「うち競走馬の生産やってるんですけど。お産の予定日をとっくに過ぎたのがいるんで、とにかくお産が終わるまでどうにもこうにも動けない。万一事故あった場合には死んじゃうわけだしね。そういうことはできないしね。」
「生まれてからちょっとは無理でしょうね。生まれてお乳飲めるようになればちょっと避難して、一日一回かえって来るくらいで済むと思うんだけども、それまでチョット駄目でしょうね。息子には避難して欲しかったんですけども……。本人に聞いたらいいと思うんだけども。避難しろっていったんですけど。嫁さんと孫は会津の出身なんだ。これはまず避難してもらって。」
「あ、奥さんはもう避難していらっしゃる?」
「はい。子どもと嫁だけは、なんか影響あったら怖いんで。」
「こんなきれーいなね、自然のこう、いーところに居ながら、どうしてそういうね、汚いものが空から降ってくるのかってのね。もう、すごいふしぎなのよね。こう、朝起きて、こう、お日様でるじゃないすか。すごいきれいですよね。それが人も住めないようなね、汚い土地にどうしてなるんだって、思うけどねえ。」
馬はいつ出産を迎えてもおかしくない状態でした。昼夜を徹しての世話が続いていました。
「運動とか日光浴もさせてあげたいんですけど、外がこんな状況で外に出せに出せなくて」
「難産にならないか心配ですね」
3日後、篠木さんの牧場を訪ねました。
「生まれましたか」
「ふっふ」
「どこにいます?」
「あー、ほー、うまれましたね。オスですかメスですか」
「オス。おとこのこ」
「これがあるもんでね、よそいけなかったんだわ」
「今後どうされるんですか?」
「どうしたら良いかわかんない」
生まれた仔馬をどこで育てればいいのか。
篠木さんは考えあぐねていました。
文字「鎌倉」
地点ごとのデータを取るサンプリングだけでは放射能汚染の全体像を描けない。点と点を結んで詳細な汚染地図をつくろうと考え、木村真三さんはある研究者を訪ねました。
文字「岡野雅治さん(84)」
岡野雅治さん84歳。環境放射能測定の草分けです。
「これはね。あの、基本的な、」
「ここで計られたデータですか」
「これがヨウ素131ですよ」
「あ、もう検出されてるんですか? きょ、今日の……」
「今日、今日、今日。このへん振ってますよ、結構」
「ええー……
岡野さんは終戦後、理化学研究所に入り、日本の原子物理学の父、仁科芳雄さんに師事しました。
アメリカによるビキニ水爆実験の後には、政府の派遣する調査船にのって南太平洋にでかけました。
文字「チェルノブイリ原発事故 調査」
1986年に、チェルノブイリ原発事故が起こると、NHKの取材チームとともに現地に飛び、
独自の装置で放射線を測定記録しました。
その報告は国際的な評価を受けています。
「これ重いですね」
「重いけれどもね」
「はい、凄いですね先生」
「え?」
「いや平気でもちあるかれて」
「今これはね、もともとね、???とか???にとかをつけて、断層?を見るのにね、使ってんですよ」
岡野さんが作った装置。
ケースの中には、筒状の測定器と記録装置があり、時間や位置の情報とともに、6秒ごとに検知された放射線量が記録されます。
「こういう事故の時には、事故の現場に行くってのがひとつの方法。それからかなり遠くから全体を把握するっていう2つのやり方をしないとね、ホントのことがつかめないんだよ」
「はい」
文字「3月26日」
3月の末、木村さんは岡野さんから借りた装置を車に積み、福島の汚染地帯に向かいました。
「15時57分。スイッチ入れます」
木村さんはまず、幹線道路を走りました。道路の周辺には集落があり、人が住んでいるので放射能の影響が気になるからです。
「サーベイメーター」
「あ、振りきってます」「振り切れてる?」
「3マイクロシーベルト強ですね」
「3マイクロ?」
「はい」
「4~5マイクロぐらい……」
「あがってきた?」「はい」
「やっぱ雪の存在じゃないすか」
「雪の存在が高いと思います」
「下がってない?」
「下がってきてます。」
「ただ、下がってきてるけど急激に下がってきてないっていうことは、やっぱり雪で沈着した放射性物質が、もう土壌汚染をしてるっていうような感じ」
「なるほどね」
「3.5……3マイクロから4マイクロか。」
「中で4だから、出たら5とか」
「ですねえ」
「あれすねえ、屋内退避レベルですねえ」
「はい」
「多分」
幹線道路を南北に走って測定した放射能のデータを、岡野さんが地図に落としました。1時間あたり1マイクロシーベルト以下を青。1から2マイクロは緑。2~5マイクロを黄色。5~10マイクロをオレンジ。10マイクロシーベルト以上を赤い丸で記しました。
1千メートル級の山で原発から隔てられた南西部では、放射線量は低く、
逆に北部で高くなっています。
国道399号線沿いに極めて濃厚な汚染地帯があることがわかりました。ここは30キロ圏ラインの境目で浪江町の北西の端にあたります。
文字「3月27日」
「まだ振り切れてる?」
「なかなか厳しいね」
文字「浪江町 赤宇木」
浪江町、赤宇木。木村さんと岡野さんの発見したホットスポットです。
集会場に第一原発近くの町から逃れてきた人がいると聞きました。
「避難所の外側ですが、サーベイメーター20マイクロ振りきれてます。超えてます。」
放射線量は私達の測定器の限界を超えていました。
集会場には4組の夫婦と4人の独身者、合計12人が寄り添うように暮らしていました。
皆この場所に留まらざるをえない事情がありました。
吉田稔さん夫妻には大切な飼猫がいます。
「きれいな猫ですねえ。猫はどうしても避難のバスには連れ……」
「連れてけないっすねえ」
「ダメだって言われたんですか……」
「バスもダメだし部屋の中も入れられないし、ねえ」
文字「吉田ゆり子さん」
「猫と心中するほかないっすよ」
「地震の時はなにしてらっしゃったんですか」
「うちでコーヒータイムだったな」
吉田さん夫婦が赤宇木にとどまったのは、家に残してきた犬と猫に餌をやりに通うためでした。
公子さんの日記によれば赤宇木に来てからの2週間に4回家に戻っています。
「じゃまた来るからーって言って、帰ろうとすると、犬追っかけてくるんですよお。」
「どう仕様も無いからすぐに外れるような感じに、くりっと1回ぐらい、グーっと力入ったら取れるように、そうやってきた。次の日、えー二十日の日にいったときには取れてましたから」
「外したんですね」
「うん」
(文字おこし、ここまで。以下のエントリーに続く)
文字おこし(3)『NHK ETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図」~福島原発事故から2ヶ月~』
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【動画全まとめ】NHK ETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図」~福島原発事故から2ヶ月~
(参考動画)
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