パソコンなどに内蔵されている記憶装置、ハードディスク駆動装置(HDD)の業界再編が急加速している。日立製作所と韓国サムスン電子が相次いで市場から撤退し、両社から事業を買収する米国2社による寡占化が進んでいる。残された国産メーカー、東芝はシェアで2社に大きく水を開けられ、ただ1社、基幹部品の「磁気ヘッド」を供給してきたTDKも得意先を失い、苦境に立たされる可能性も出てきた。東芝、TDKとも技術力で巻き返せると強気の姿勢を崩さないが、その読みは当たるのか。
3月から4月はHDD業界にとって“激震”続きだった。
業界3位の日立は3月7日、HDD事業を行う米子会社を9月末に米ウエスタン・デジタル(WD)へ約3500億円で売却し、市場から撤退すると発表した。会見で中西宏明社長は「こういう(事業売却)話は3~4年前からきていた。(HDD事業は)市場の変化やテクノロジーの変化が激しく、手放すことが必要と考えていた」と、HDD事業の難しさを打ち明けた。
日立は2003年に米IBMからHDD事業を20億ドル(当時の為替レートで約2500億円)で買収したが、その後は5年連続で赤字を計上。08年度にようやく赤字を脱したものの、開発費は高騰し、技術の陳腐化のスピードも速い。値下がりも激しい。日立はそうした浮き沈みの激しさを嫌い、わずか8年で撤退を決めたわけだ。
そのショックも冷めやらぬ4月19日、今度はサムスン電子が米シーゲイト・テクノロジーに14億ドル(約1130億円)でHDD事業を売却すると決定した。最盛期には40社以上を数えたメーカーは、いまや3社にまで淘汰(とうた)されることになった。