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埼玉県警:虚偽証言強要疑惑 深谷市議釈放 支持者、県警捜査を批判

釈放され、弁護士(手前)と深谷署を出る永田勝彦市議=埼玉県深谷市で27日午後4時、三浦博之撮影
釈放され、弁護士(手前)と深谷署を出る永田勝彦市議=埼玉県深谷市で27日午後4時、三浦博之撮影

 ◇「話聞いてほしかった」

 公職選挙法違反(供応買収)容疑で逮捕された永田勝彦・埼玉県深谷市議(67)が27日、処分保留で釈放され、県警による虚偽証言強要疑惑は急展開を見せた。「話を聞いてほしかった」「家計簿を信じてくれれば」。意に沿わない調書に署名させられたと主張する支持者らは改めて捜査を批判した。一方、筋書きが崩れた県警や地検幹部は厳しい表情で対応に追われた。

 「自分たちは会費を払ったのだから(釈放は)当然だ」。支持者の男性(68)は27日夕、怒りを抑えるように語った。

 男性は、飲食接待を受けたとされる2月13日の家計簿に「永田、○○(店名) 3000」と書き入れていた。だが、「領収書はあるのか」「後から書いたんじゃないのか」などと取調官に詰問され、支払いを信じてもらえないまま「会費はなかった」とする調書に署名したという。「生きてきた中で最大の屈辱」と男性は話す。

 手帳に会費を記録していた別の60歳代の男性も、県警の取り調べでは「書き違えか何かでしょう」と全く取り合ってもらえなかったという。男性は「最初から話をきちんと聞いてほしかった。つながりの強い地域だったが、互いの不信感が強くなった。元に戻るか心配だ」と表情を曇らせた。

 一方、県警はこの日も捜査に問題はなかったとの立場を強調した。

 村田達哉・県警刑事部長は、同日の県議会警察危機管理防災委員会で「捜査自体は適正に行われている」と答弁。虚偽の証言を強要したとの疑惑については「必要な調査をしていく」と答えた。

 処分保留を発表したさいたま地検の信田昌男次席検事は「現時点では違法とみられる捜査はない」としながらも、「説明責任はあるので、振り返りは必ずやる」と捜査を検証する必要性に言及した。

 こうした捜査当局の姿勢に対し、住民らの相談を受けた白井正明弁護士は「県警は住民たちを連日、長時間呼び出し、事実とは違う調書を作り上げた。住民たちの生活はめちゃくちゃになった」と批判した。実際の飲食代金(約4900円)と会費との差額については「住民たちは差額分の供応を受けたという認識はなく、罪は成立しないと考える」と話した。

 ◇市議会見「取り調べ、理不尽」

 処分保留で釈放された永田市議は27日夕、深谷市内で会見し、県警の取り調べを受けた支持者が虚偽の証言を強要されたと話していることについて「ご労苦をかけた」と陳謝した。その上で「(取り調べが)1日12時間に及び理不尽。民主国家の警察のやることではない。刑事らの取り調べには大いに問題点がある」と県警を批判した。

 永田市議は、会合での会費について「支払いは妻がした。会費の3000円をオーバーしたことは刑事から聞くまで知らなかった」と説明。今後、実際の飲食代と会費との差額約1900円を出席者から徴収する考えを示した。【田口雅士】

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 ◇事件の経過

1月    会合の案内状が住民に配布される

2月13日 会合開催。永田夫妻と住民28人が参加

4月17日 統一地方選の埼玉県深谷市議選が告示

  24日 投開票。永田市議は定数26中24番目で当選

  25日 県警が住民の本格的な取り調べを開始

5月 4日 住民らが集会を開き、「真実に反する調書に署名を強要された」との誓約書を作成し、県警に提出

   8日 県警が永田夫妻を公職選挙法違反(供応買収)容疑で逮捕

  18日 住民から相談を受けた弁護士が県警とさいたま地検に抗議文を送付

  26日 毎日新聞が「虚偽証言強要の疑い」と報道

  27日 さいたま地検が永田夫妻を処分保留で釈放

毎日新聞 2011年5月28日 東京朝刊

 

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