「強盗だぞ」と宣言したら、普通なら「現金を寄こせ」となりそうだが、そのような要求はせず、自ら「警察を呼べ」と言い残し、おにぎりとお茶を抱えて走り去った。男はコンビニ店から約200メートルしか離れていない路上で、駆けつけた警察官によって取り押さえられたのだが、約200メートルしか逃走していなかったというのも「?」な印象だ。
「あくまで推測だが」と前置きした大阪府警関係者は「刑務所に戻れば、いい生活ができるとばかりに強盗したんちゃうかな。それも逃げたのは、きっちり起訴されようと計算してのことかもしれん。捕まる覚悟でわざとした可能性が高い」と呆れた様子だった。
刑務所は出たものの、仕事も見つからず、社会にもなじめないため、刑務所に戻りたがる者は「珍しくもない」のだそうで、冷暖房完備で、朝、昼、夜と食事が提供され、何かあれば医師の診察まで受けられる刑務所での生活を懐かしむトホホな輩が後を絶たないらしい。
取り調べに対してこの男は「刑務所を出たが、体力、気力もなく戻りたかった」などと捜査関係者の推測を裏付ける供述をしているという。
「飯食い」の中には、「成功すれば大もうけ。失敗しても刑務所に入るだけだから、どっちに転んでも食いっぱぐれがない」などと考え、「一か八か強盗」を働く者すらいるとのことだが、「あそこ(刑務所)には2度と戻りたくない」と感じるような健全な社会を私たちが作り上げることが、犯罪抑止に一番効果を発揮する方法なのかもしれない。(佐藤修)