発達障害の一つ「注意欠陥多動性障害(ADHD)」の子どもは、健康な子どもが同じゲームをして働く脳の中央付近の部位「視床(ししょう)」と「線条体(せんじょうたい)」がほとんど働かないことを、理化学研究所分子イメージング科学研究センター(神戸市中央区)などの研究グループが突き止めた。これらの部位を観察することで客観的な診断などにつながる可能性があるといい、26日、神戸市で開かれる日本分子イメージング学会総会・学術集会で発表する。
ADHDは、不注意や多動性、衝動性といった症状が特徴で、同グループによると、国内では小学生と中学生の5〜15%を占めるという。「ドーパミン」など神経伝達物質の不足が一因とされ、情報伝達を促す薬が治療に使われているが、脳のどの部位が関わっているのかについて明確には分かっていなかった。
同センターの水野敬研究員と熊本大の友田明美准教授らは、同大学医学部付属病院(熊本市)を受診した10〜17歳のADHD患者14人と、同年齢の健康な子ども14人を対象に、脳の血流を画像化する「機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)」を使って調査。
3枚のカードから1枚をめくり、金額が書かれていれば、その額がもらえる‐という設定でゲームを全員にしてもらったところ、ADHD患者の場合、脳内で行動の制御や報酬を喜ぶ感情に関わる視床と線条体が、ほとんど働かなかった。しかし、薬を飲み続けると、3カ月後には健康な子どもと同様の働きに変化した。
水野研究員は「この調査方法を簡素化できれば、客観的な診断に加え、治療効果を検証することも可能になるのではないか。今回使った治療薬とは別の薬についても、脳のどの部位に働くかなどを調べたい」と話す。
(金井恒幸)
(2011/05/26 10:31)
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