フォーカルプレーンシャッターのカメラをレストアするとき、 先幕と後幕の速度調整が性能を左右します。テレビの 走査線を用いることで実用的なレベルまでは調整できますが、 どうしても定量的な測定がしたくなることも多いでしょう。
こういうときに2現象のデジタルストレージオシロスコープがあれば 百人力です。そこで、 烏谷 隆さんが作成した「ハンディ・オシロスコープ」という フリーソフトを使います。PC用の音声入力機能を用いて48kS/sで 入力信号の時間変化を見ることができるものです。
ソフトウェアはVectorより
ダウンロードすることができます。
http://www.vector.co.jp/soft/win95/art/se376225.html
説明にしたがって、解凍・インストールをしてください。
つぎに、測定のためのセンサを用意します。可視光に反応する
フォトダイオードを2つ使います。今回は、手持ちの都合で
東芝TPS708を用いました。適当なケースに20mm間隔で穴をあけ、
フォトダイオードと、出力用のステレオミニジャックをとりつけます。
ミニジャックとPCの音声入力(LINE IN)を適当なケーブルで接続します。
私のPCの場合、ここでマイク入力(MIC IN)を使うと片側のチャンネル
が左右どちらも入力されてしまい、幕速の測定には不適当でした。
いよいよ、オシロスコープを起動させます。 まずは、入力を選択します。メニューの「設定変更」→「ボリュームの調整」 をクリックすると「録音コントロールという画面が現れます。 ここで、「ライン入力」にチェックを入れて、音量を調節します。
つぎに、メイン画面に戻ります。こちらにも感度設定があり、 右側のスライドを調節すると感度(1目盛りあたりの電圧)が 変化します。最初はかなり感度を高めに設定してください。 すべてがうまくいくと、センサに光を当てたり外したりするのに ともなってそれらしい波形が現れます。 ここで注意したいことは、表示される波形はセンサに入ってくる 光の量そのものではなく、その時間微分であるということです。 つまり光の量が一定のときは反応がなく、光の量が増えたり減ったり するのに応じた波形になります。
実際に幕速測定をおこなうときは、トリガ機能を用います。 ある大きさの信号を検出するとそこから測定を一定時間行い、 そのままの波形を保持することができます。 メニューバーの「設定変更」→「デバイス・周波数...」とクリックすると 「条件設定」という画面があらわれます。「トリガの設定」の欄に 適当な数値をいれて、「設定」ボタンを押します。 メイン画面に戻って、「P-Trig」ボタンを押し、カメラのシャッターを レリーズすると、うまくいけば2つのセンサに入った信号が 画面に表示されます。
この画像は、PENTAX ME super を1/125sのときに測定したものです
(トリガ・レベル0.01mV, プリ・トリガ数1000)。
波形の上でマウスをクリックするとカーソルが出てきますので、
測定したい時間間隔を簡単に得ることができます。画像では
先幕の走行時間が5.4msであることがわかります。
カーソルの位置を変えると、後幕の速度を測定することができますし、
もちろん、シャッター速度を計ることもできます。
このような測定が簡便にできたのは、すばらしいフリーソフトを 提供してくださった烏谷 隆様のおかげです。また、 そのそものアイディアは「Range Finder」のビュッカー様にいただきました。 この場を借りて謝意を表します。
なお、この項は以下のコンピュータ・OSに依存していますので、 必ずしも同じような結果が得られるとは限りません。あしからずご了承ください。
2006.11.25記 (C)Khi