ひとりDEオフ会

週末夜。夕暮れ時の新宿駅東口は、大勢の人でごった返している。

これから夜の歌舞伎町へ繰り出そうとする人々が、所狭しと輪になって談笑している姿が見られる。これから行く飲み屋へ思いを馳せ、楽しげに談笑する仲間たちや、遅れてくる仲間を携帯電話で叱責しながら待つ人など様々だ。これもアジア最大の歓楽街歌舞伎町を抱える新宿駅東口独特の光景かもしれない。

大学のサークル仲間のような集団。気の会う友人同士のような集団。そしてカップル。多くの人々が本当に楽しそうに週末の東口に集結する。本当にマトモには歩けないほどに人でごった返す。まるで、東京砂漠を歩くのは自分一人ではないんだ、自分には友人がいるんだ、酒を飲む仲間がいるんだ、と喜んでいるかのように見える。自分は一人じゃないんだって。そういった幸福や喜びが東口の待ち合わせ風景には溢れている、そんな気がする。

そんな幸せの象徴たる待ち合わせ風景の中に、一人佇む僕。

わけあって、次の日の朝まで一人新宿で過ごさねばならない事情ができてしまった。最初はホテルにでも宿泊しようと思ったのだが、それもちょっとお金がもったいない気がする。ならばどうせ不夜城歌舞伎町、眠ることのない街なら僕も眠らず朝まで遊んでみようと思った。

何か遊べるものはないかと夜の新宿を彷徨うのだが、実は一人で遊ぶのって物凄い難しいものだって気がついた。

一人でパチンコ。とても楽しそうなのだが、すごく負けたらどうしよう。それよりなにより、パチンコ屋は閉店してしまうので朝まで遊ぶのは無理。

一人で飲み屋。朝までやっている居酒屋とかありそうだが、一人で飲むのは物凄く淋しそうだ。それよりなにより、僕はもともと酒はあまり飲めない。

一人でカラオケ。経験済み。朝までやったら淋しさで死ぬに違いない。

一人でマンガ喫茶。一番順当な線だが、それではあまりに当たり前すぎる気がする。

とにかくすることがなく、どうしていいものかフラフラと新宿の街をさ迷い歩いていた。もしかしたら、僕なんかこの街にいてはいけないんじゃないだろうか。歩いている人はみんな楽しそうにしている。でも、僕は一人で淋しい。この街に僕の居場所なんてないのかもしれない。

新宿の独り者は人にあらず

そう悲観的になって歩いていると、いつの間にか新宿駅東口にたどり着いていた。

これから夜の街へ繰り出さんとする人々が沢山集っている東口。やはりココも楽しそうな人たちばかりだ。そんな人々を尻目に、僕は頭の可哀想な人のように座り込んでタバコを吸っていた。自分の淋しさを再認識するかのように座っていた。

週末夜の東口は、やっぱり人々でごった返していてすごく混雑している。マトモに真っ直ぐは歩けないような感じだ。本当に歩くのが邪魔なほどに人々が輪になって談笑している。本当に邪魔だ。自分が淋しいから輪になって楽しそうな奴らが腹立たしいとかではなく、本当に邪魔だ。

そんな風景を見ていて、一つ気がついたことがある。確かにどの集団も楽しそうにしているのだが、一つだけ異様な雰囲気を醸し出している集団がいるのだ。幸福の待ち合わせ風景に溶け込んでいない集団が。

十数人はいるだろうかという集団。他の集団は楽しそうに談笑しているのに、その集団だけあまり会話が弾んでいない。しかも、普通は気の会う仲間と言えば似たもの同志であることが多いものだが、その集団はアンバランス。モテ系のやつらやら非モテな奴らが混在し、変にハードロックな服装の人も混ざっている。年齢層もまちまちで、明らかにお前らは一緒に飲むことなんかないだろうっていうメンバーが集っている。

そいでもって、後からその集団に加わってくる人々が口々に「はじめまして」とか言っている。しかも「はじめまして、モロキューです」とか意味不明の自己紹介をしている。その光景を見ながら僕は思いましたよ。間違いない、コレはオフ会だと。

インターネットで知り合ったメンバーが、実際に会うことを指すオフ会。ネット上ではオンラインで、実際に会うのはオフラインだからオフラインミーティングと言うらしい。大人数の集団が集まりながら「はじめまして」などと挨拶しているのはオフ会ぐらいしかないし、「モロキューです」とか意味不明の名前を名乗るのもオフ会ぐらいしかない。

実はこの新宿駅東口ってはオフ会待ち合わせのメッカだ。数多くのオフ会待ち合わせらしき集団を見かける。かくいう我がNumeriも東京でオフ会をする場合はいつもここで待ち合わせだ。間違いない、この集団はオフ会に違いない。

こう言ってしまうと言葉が悪いのだが、オフ会というのは希薄な人間関係の表れかもしれない。顔も本名も素性も知らない相手と会うのだから、実際の友人と飲み会をするのとはちょっとわけが違うのではないだろうか。見知らぬ相手がやってきても気がつかないかもしれない。

そう思った瞬間に、天才的閃きが僕の脳内に走った。

僕は新宿で一人淋しく過ごしている。明日の朝まで時間を潰さねばならない。さらに、目の前の集団は「はじめまして」などと挨拶をするほど人間関係が希薄なオフ会。しかも大人数ときている。

これはもう、僕が混じっても気がつかないんじゃないか。

このまま見ず知らずのオフ会に潜入し、朝まで楽しく過ごす。これで見事に時間は潰せるわけだ。でもさすがにバレるだろーとも思ったのだが、集まった人数が既に20人を超えるほど大規模なオフ会だ。一人ぐらい増えてもなんともなさそうな気がする。

そう思った瞬間、僕は立ち上がってその集団に向かって歩き出していた。さあ、見ず知らずのオフ会に潜入だ。「ひとりDEシリーズ」第三作、「ひとりDEオフ会」の始まりだ。このチャレンジの目的は、「ひとりで見ず知らずのオフ会に潜入し」「何事もなかったように楽しみ」「朝まで時間を潰す」というところにある。

いつもは本当にひとりでチャレンジする「ひとりDE」シリーズだが、今回は一人ではない。周りには数多くの見知らぬオフ会メンバーがいる。しかし、僕の心は本当に独りぼっちだ。そういった意味では間違いなくこれは「ひとりDEシリーズ」のチャレンジなのだ。そう、

これは孤独な男による独りぼっちの闘争記録である。

というわけで、オフ会潜入レポートをどうぞ。

・待ち合わせ                                     

とにかく待ち合わせは重要だ。潜入作戦において最も難しいとも言える。人間の印象というのは初対面でその大部分が決まってしまう。ここで失敗してしまっては全てが失敗に終わるだろう。とにかく気合を入れて溶け込むしかない。

「あのー、オフ会の皆さんでしょうか・・・?」

ちょっと恐る恐る尋ねつつ、輪の中へと入っていった。このセリフが重要だ。本当にこの集団がオフ会かどうか確認できる。それでいて不自然ではない。初めてのオフ会に恐れおののきオドオドした印象を与えることが大切だ。極めてナチュラルに。

「あ、はい。そうですよ」

輪の中にいたメガネっ子が親切に答えてくれる。ありがたいことだ。それと同時に、談笑していた全員の視線が僕に向かって注がれ、注目度が一気に上がる。ここは一発自己紹介でもしなければ不自然だろう。

「はじめましてみなさん、「ハヤブサ」です」

さすがに「pato」と名乗るのも気がひけるので「ハヤブサ」とか意味不明のHNを名乗っておいた。なんだよ「ハヤブサ」って。それでも何人かの男性が

「あ、よろしくーハヤブサさん。僕はゴッピーです」

とか握手を求めてくる。やはり、小さなオフ会などでは「ハヤブサ?知らねえな」と不審に思われるものだが、20人を超える大きなオフ会ではそうでもない。おそらく大きなコミュニティがオフ会の母体としてあることが予想され、参加者が別の参加者を認識していないことも不自然ではないのだ。

とりあえず不審に思われるようなこともなく、極めてナチュラルにオフ会に潜入することができた。なんとか成功ではないだろうか。

○俺-(ハヤブサ)-待ち合わせ×

 

・一次会前の移動

とりあえず全員が集まったようなのでそのまま一次会の会場へと移動する。最終的に集まった人数は28名。僕は元々はいない人間なので27名の人間が参加するオフ会だったということか。なかなか大規模なオフだ。

幹事というか元締めみたいな人は「ヤマト」と名乗る30代前半ぐらいの男性。なかなかシッカリしていそうだが、ちょっと抜けているところがあるかもしれない。27人ものオフを束ねる幹事であるのに参加者一覧表ぐらいは作っておくのが当然だと思うのだが、そんなものは持っていない。大体の記憶で参加者を把握しているようだ。まあ、そのお陰で僕が潜入できたわけだが。これが几帳面な幹事で、一覧でも作られていたら一発で僕がスパイだとばれてしまう。

会場である居酒屋に向かうため、28人の人間が一斉に大移動を始める。こういったあまり面識のない集団が一斉に移動すると、一団となって移動するということはなく、極めてバラバラになりながら移動することになる。列の最前方と最後方で100メートルぐらい差がありそうな感じだ。

僕はそんな列の中段を歩きながら、先ほど親切にしてくれたメガネっ子(ルミさんというらしい)と談笑しつつ、上手く誘導しながらオフ会の情報を集める。

なんでもこのオフ会は、とあるコミュニティサイトのチャットルームの常連たちのオフ会のようだ。全ての人間が初めてオフラインで会うドキドキのオフ会。いつもチャットしているあの人はどんな人なんだろう?あの人は素敵なのかしら?といった思惑が渦巻く初オフ会。

これはハッキリ言ってしまうとかなり僕にとって有利な内容だ。まず、チャットのオフ会というのがポイントが高い。何処かのサイトのオフ会とかならば、そのサイトを見ていなければ話にならないのだが、チャットなら話は別。なんとでも話を合わせることができる。さらには初オフ会という点もポイントが高い。誰も会ったことないので事前に仲良しということもあまりない。これが仲良しな人間がいたりすると、「あいつ怪しくない?」となるのだろうが、全員が全員初対面なのだからそういった流れになりにくいのだ。

「ごめんなさい、私、ハヤブサさんの名前をチャットで見たことないんです」

メガネっ子ルミが申し訳なさそうに言う。ハヤブサさんって誰のことだっけ?と一瞬考えたが、他でもない自分のことだった。そりゃあ、見たことないのは当たり前だろう、僕はそのチャットに行った事すらないのだから。

「いや、僕ほとんど発言したことないから。いつも見てるだけだから印象薄いかも。でも、ルミさんの名前はよく見かけますよ」

と適当に返事をしておいた。

「ホント!?ありがとう!」

とルミさんは非常に嬉しそう。すごく心が痛む。

で、なんとか談笑しているうちに一次会の会場に到着。なんというか純和風のちょっと高級そうな居酒屋だった。幹事である「ヤマト」なる人物が、店の人に

「あ、予約してた鈴木ですけど」

と素で言っていたのにはちょっと笑った。

それを受けて店員さん。なにやら紙に書かれた予約一覧表を見ながら

「あ、27名で予約の鈴木様ですね」

とか言ってた。僕が入ったために現在の人数は28名。予約は27名。当然のことながら一名分座席が足りないという状態。ちょっとピンチだが、まあなんとかなるだろ。そんな人数の問題など気にはならないほど自然に溶け込めていたのだから。

○俺-(ナチュラルさ)-一次会への移動×

・一次会

「あ、28名なんですけど・・・・」

再度人数を数えながらヤマトが言う。自分では確かに27名であったと思うのだが、実際に数えてみると確かに28名。一人少ないとかなら理解できるが、一人多いとはどういうことだろうか。できの悪い怪談話みたいだ。と困惑しながらも

「ちょっと予約間違えちゃったみたいで、28人でもいいですか?」

と申し訳なさそうに言うヤマト。ホント、ごめんなさい。当の僕は何食わぬ顔で普通に靴を下駄箱に入れたりとかしてた。

それにしても、デフォルトの人数が27名だったのが救いだ。奇数人数では最初から席が一個余るのは自明の理であり、28名になったほうが偶数人数でなんだかしっくりくる。様々な好条件が重なって、僕は極めてナチュラルに潜入できたのではないだろうか。本当に運が良い。

そのままちょっと広めの個室みたいな場所に移される。

箸もコップもお手拭も、きっちりと28組用意されていた。もうココまで来たら後戻りできない。逃げ出すこともできない。なんとか押し通さねば。自分に課せられた使命の重さに負けそうになりながらも、グッと唇をかみ締め決意した。やってやる。

何食わぬ顔で長机の一番端に座る。幹事であるヤマトとはかなり距離を置いて座る。やはり、人間関係が希薄であるチャットオフ会とは言っても、幹事は相当の人間関係を把握しているに違いない。できることなら会話するのは避けたい人物だ。もっと末端の人物と談笑するのが得策だ。

僕の向かいに座ったのは、先ほどのメガネっ子ルミさん。隣に座ったのが二次元美少女大好きそうなオタッキーデブゴン「星の昴さん」。オタッキーの癖にやけに綺麗な名前だ。HNと顔のギャップだけで十分に笑いが取れる逸材だ。

コップにビールが注がれ、普通に幹事であるヤマトからの挨拶が始まる。

「今日は○○チャットのオフ会に来ていただいてありがとうございます。予約人数を間違えるという私のポカで、ちょっと進行が遅れましたが、今日はゆっくり楽しんでいってください」

「そうだそうだ、人数間違えやがって」

「ちゃんとメール読んでるのか」

などと口汚い野次が飛び交う。ちょっと幹事をいじることで和やかなムードにしようという作戦なのだろう。幹事さんもはにかみながら頭をボリボリ書く。

でも、何度も言うように予約人数が違うのは幹事さんのせいではない。僕のせい。ごめんなさい。

それでもなんとか、不自然でないように僕もその雰囲気に溶け込もうと

「このズッコケ幹事!」

などと野次を飛ばしておいた。うん、見事に溶け込んでる。我ながら、本当に違和感のないレベルで溶け込んでいる。ここまで溶け込んでしまっていいのだろうか、見ず知らずのオフ会に、まるで昔からの常連であったかのように溶け込んでしまっていいのだろうか。物凄く罪悪感が僕を襲うのだが、もうここまで来てしまったものはしょうがない。なんとか楽しまねば。

「カンパーイ!」

ヤマトの掛け声により、各々がグラスを合わせる。運ばれてきた料理を狂ったように食し、ガブガブとビールを飲む酒池肉林の宴。普通に皆さん楽しそうに会話をしているのだが、そこはやはりインターネットのオフ会。話す内容もかなりインターネットに近いものがある。

「あのチャットはちょっと使いにくいよね」

「名前の色を黄色にすると見にくくて仕方がない」

「深夜になると重すぎる」

などと、チャットシステムに関する不平不満をぶちまけていた。僕はそのチャット自体をビタイチ見たことがないので分からないのだけど、怪しまれないように適当に

「そうそう、ありゃヒドイ」

などと分かった風に相槌を打っておいた。なんとも図太い神経だ。自分でもビックリする。

普段は僕も、饒舌にトークをするタイプの人間なのだけど、ここは見知らぬオフ会場。言うなればアウェイだ。さらには、ナチュラルに潜入しなくてはならないスパイのような立場。下手に喋るとドコでボロが出るか分かったものじゃない。必要以上のことは喋らないように寡黙に徹していた。グビグビと酒を飲んで料理を食べていただけ。

そしてオフ会は異常な盛り上がりを見せ、お笑い役の三枚目が服を脱いだりとか異常な状態に。盛り上がりもかなりのクライマックスに。

そして、会話の内容はチャットでの人間関係の裏側みたいな内容になってきた。言うなれば、ココに来ていない人間の陰口みたいな内容。知ってる人にはかなり面白い内容なんだけど、僕にとってはサッパリ。

なんでも、非常にヤリチンの「かず」なる人物、当然このオフ会の場所にはいないのだけど。その人物がチャットでナンパ行為という狼藉を働いているらしい。ヤマトをはじめ男性の常連人はご立腹だった。

メガネっ子ルミも「私にも変なメールが来た」と口説きメールが届いていたことをカミングアウト。それに触発されたブス数人が「私も」「私も」と本当にお前らに来たのかと問い詰めたくなるほどにカミングアウト。で、さらに常連陣は怒り滅却。

「あいつが来ると、チャットでの会話が止まる」

「あいつは女の子にすぐ写真を送る」

「でも、さほどカッコイイわけではない」

「女の子には二人オフをしようとしつこく誘う」

「女の子がポロッと住んでる場所を漏らしてしまったことがあって、その次の日にはその最寄り駅まで「暇だから来ちゃった、会おうよ」とメールが来たことがあった。ストーカーみたいで気持ち悪い」

などと「カズ」なる人物の悪行が洗いざらいぶちまけられていた。僕はそもそもチャットに行ったことがないので、その「カズ」なる人物のことは全然分からないのだけども、とにかくヒドイ人間だと言うのは話の流れでわかる。ティンポで物事を考えるようなやつに違いない。

「ホント、あいつはひどいよ。男の僕が話しかけても無視だもの」

と適当に怒りをぶちまけておいたところ、何人かの常連が「そうそう!」と同意してくれた。悲しいかな、人間というのはそういう風にできている。共通の敵に向かって、その憎しみを披露しあうことによって一団と結束するようにできている。僕らは「カズ」という共通の敵に向かって一致団結した。もう潜入とかそういった次元の話題ではない。「ハヤブサ」は古くからのチャットの常連だが、あまり発言もせずに目立たないタイプということで認識されてしまった。潜入は大成功だろう。

「ハヤブサさんは、ポイントどれくらい?」

フイにヤマトに訊ねられる。やばい、ポイントって何なんだろう・・・・。おそらくチャットならではの何かを示すものなのだろうが、意味が分からない。下手なことを答えようものなら一発でニセモノとバレてしまう。

「ポイント・・・ですか?まあ、ボチボチです」

と、なんとも逃げ腰な回答をすることしかできなかった。ちょっと怪しまれたかもしれない。皆はそれを受けて

「私は800くらい」

「僕は2000かな」

「おーすげー!」

と盛り上がっていたのだが、全く持って意味がわからない。未だにポイントが何なのか分からない。理解不能。でも、そんな気持ちを表情に出していると間違いなく怪しいので「ウンウン」という表情で驚いたりしてみた。大体、1000を超えてると偉大だということだけ分かった。ものすごい疎外感。

とにかく、そんなウチに一次会は終了。表面上は非常に盛り上がって楽しい宴だったが、僕の心は独りぼっち。全く意味不明の会話をなんとか心の中で補完しながら会話についていったという感じだった。ポイントの話はちょっとやばかったが、なんとか上手く切り抜けられたと思う。一次会会費6000円は微妙に高いと思った。

○俺-(カズの悪口)-一次会×

・二次会

しばらく一次会会場前で歓談した後、終電で帰る組が何人か帰っていった。残った18人程度で朝までカラオケに行くらしい。僕もそろそろ潮時かなと思ったので、終電組に紛れてこのまま姿を消そうと思った。やはりこれ以上長居をして、ボロが出るのを避けたい。というか、あまりの心身的精神的プレッシャーにより、もう限界だった。逃げ出したかった。

しかし、ここで今回のチャレンジの目的を思い出す。「オフ会に潜入しつつ、朝までの時間を潰す」。そう、ここで逃げてしまってはチャレンジ失敗なのだ。なんとか朝まで時間を潰さねば。

18人のカラオケ組に混じって、カラオケ屋へと移動。なにやら狭い部屋に押し込められ、歌を歌う運びとなった。

もうこの辺りから酒を飲みすぎた僕はぶっ壊れてきていて

「チャットでも宣言したとおり、モーニング娘。歌います」

とか言って、モー娘。をフリつきでノリノリで歌っていた。「チャットでも宣言したとおり」とか普通に嘘8000なlこと言ってるし。

で、それがムチャクチャ受けちゃって、もうみんなもどうでもいいやとかいう状態になっちゃったらしく

「ハヤブサさんがこんなに面白いとは思わなかった。チャットでは真面目っぽかったのに」

とか心にもないことを。オマエはアレか、チャットで俺に会ったことがあるのか、そりゃすげえなと激しく問い詰めたい気分になったが、それはかなり不自然なので適当にスルー。ガンガンとクレイジーに歌を歌う。なんか、三曲に一曲は僕の歌だったような気がする。

で宴の最高潮では、オタク三人を引き連れて、僕を入れて四人で「乙女パスタに感動♪」を熱唱。誰が加護や矢口をやるかで真剣に喧嘩になりそうになったが、なんとか歌いきった。もう溶け込むどころか、普通にあり得ないぐらい盛り上げ役に徹していた。

そうこうしているうちに夜が開け、数人の男女が入り乱れて疲れ果てて寝ている中、僕とオタク数人が尾崎豊を熱唱してカラオケは終了。物凄く盛り上がった灼熱のカラオケだった。もう、僕が部外者とか関係なくて、普通に古くからの友人のように肩を組み合い熱唱していた。

○俺-(乙女パスタに感動♪)-カラオケ×

 

・お別れの時

夜明けの歌舞伎町。カラスがゴミを突付き、うっすらと東の空が明るくなる。高層ビルたちも店の看板も静寂に包まれていて一種異様な雰囲気。この静か過ぎる街並みを眺めていると、変な乗り物に乗った宇多田ヒカルがビュンビュン飛んできそうだ。

そんなことはどうでもいいとして、ついに朝を迎えてしまった。当初の目的どおり朝までの時間を潰すことができたので、まあ成功と言えるだろう。

皆で電車に乗るために新宿駅に移動し、東口でしばし談笑。思えば全てここから始まった。この東口で淋しさに打ちのめされそうだった僕。そして明らかに異様だったオフ会集団。そこに混じってしまおうという僕の計画は見事に達成された。

ボロが出ないように、具体的な話をするのを極力避けていたのだが、いつのまにか本当に一人のオフ会参加者として溶け込むことができていた。そう、僕はNumeriのpatoではなく間違いなく「ハヤブサ」だったのだ。

「またチャットで会いましょう、ハヤブサさん」

「ハヤブサさん、メールしてね」

ある意味、潜入者でありスパイである僕に向けて、皆が口々にそう言って消えて行く。本当にいい人たちだなって思う。

これはひとりDEシリーズだ。周りにオフ会参加者がいても、基本的に僕の心は一人。孤独な戦いなんだって、最初に宣言したけど、実際にはそうではなかった。多分、幹事であるヤマトさんなんかは、僕が部外者であることにそうそうに気がついていたのではないだろうか。いくらズッコケ幹事でも、参加者を把握していないということはないように思う。その疑惑の念があの唐突過ぎる「ポイントは?」という質問になって出たのではないだろうか。それでも、分け隔てなく僕に接してくれた。本当にありがとう。

また何処か出会うことができたら、楽しくお酒を飲みましょう・・・。

と思ったのですが、僕はそのチャットの名称も正確に覚えてませんし、参加者さんのメールアドレスなんかも全然分かりません。つまりは、連絡を取る手段がナッシング。「またチャットで・・・」「メールしてね」とか言われても連絡取ることができません。

もう二度と会うことはできないのか、なんだか淋しいね。

そう呟きながら、明け方の新宿を歩くのでした。

やはり新宿って淋しい街だよね・・・・・・。

×俺-(連絡手段なし)-チャットメンバー○

 

というわけで、一風変わったひとりDEチャレンジ、いかがだったでしょうか?新世紀のひとりDEシリーズということで少し違った形でのお披露目となりました。基本的に、オフ会とは最初のうちは希薄な人間関係です。その希薄な関係を、濃いものや強いものに変えるのは、やはり何度も会うことではないでしょうか。そうすれば実際の人間関係と変わらない関係が出来上がると思います。

とにかく、最初のうちは希薄なものです。その希薄さの隙を突いて、今回のような潜入が成功したのだと思います。あと、ちょっと幸運が重なったのと、怪しまれないように機転を利かせたのが功を奏したのだと思います。

これからオフ会を行う皆さん。特に幹事の方。参加者の管理は厳重にしましょう。下手したら潜入者が混じっています。当日に予約人数より人数が多かった場合、自分のミスよりも参加者を疑いましょう。

夜の繁華街を一人で過ごす淋しい方は、率先して潜入を行いましょう。大きい繁華街なら、間違いなくオフ会を行う集団はいます。それほどオフ会はポピュラーなものになりました。待ち合わせのメッカのような場所で張り込み、潜入しやすいオフ会を探しましょう。でも、キチンと会費は払わねばなりませんぞ。

近い将来、オフ会はきっと、潜入者とそれを見破る幹事との熱いバトルの場になることでしょう。そういった食うか食われるかの熱いバトルがオフ会をより一層熱いものにしてくれるはずです。

とりあえず、当サイトNumeriではオフ会への潜入は大歓迎です。こぞって潜入してください。僕は徹底的に見破りますから。

全てのオフ会が、楽しく幸多いものであることを祈って・・・・これにて「ひとりDEオフ会」おしまい。


[ Back to TOP]