後に、彼らはその出会いを、こう評した。
『この八人が出会ったのは、人生において最大の幸福だ』と。
後に、彼らの関係者はその出会いを、こう評した。
『あの四人が出会ったのは、人類にとって最大の不幸だ』と。
当時、篠ノ之束は非常に落ち込んでいた。
後にその話を聞いた誰もが驚愕する行動である。なにせ普段の彼女は何が楽しいのか尋ねたくなくなるほどのナチュラルハイで、なおかつポジティブだ。冷徹であったり泣いたりすることはあっても、あからさまに落ち込むようなことはまず無いと言っていい。
が、当時の彼女がまだ小学生ですらなかったと聞けば、ある程度納得する人間もいるだろう。
理由は至極単純である。彼女が、自身の異常性を理解したからだ。
篠ノ之束は天才である。それもただの天才ではなく、史上最高クラスの天才と言っていい。
だが、彼女は天才”過ぎた”。
自分と同じレベルの高みで会話できる人間がいないのだ。別のベクトルでの天才であり、幼なじみでもあった織斑千冬以外では、日常会話しかできないほどに。
束は絶望していた。周囲は親しい人を除いて、自分の才能を認めることはない。自分から相手のレベルに合わせるのには多大な苦痛が伴う。そもそも家族と幼なじみ、そしてその弟以外が”認識”できない彼女にしてみれば、他者との交流など作業以上には成り得ない。そして、そんな状況で自分が満足するまでその知的好奇心を満足させることなど、出来るはずがないと、彼女は諦めてしまった。
幼い精神にはあまりも重すぎる知性。それ故に、束はそこで思考停止してしまった。絶望的な未来をいくらでも想像できる知能があるために、僅かな希望が信じられない。そんな状態だった。
だから、その日の出会いは、彼女にとって比喩でもなんでもなく、人生最大の幸福だったのだ。
後に最強の空戦パワードスーツ、インフィニット・ストラトスを生み出す篠ノ之束は、小学校の入学式をサボって理科大学の研究室に入り込んでいた。
その幼馴染であり、後に世界最強の女性になる織斑千冬は、束を連れ戻すために竹刀片手に警備員相手に無双していた。
その騒ぎに気づかず、留学生として編入した、後に最強の陸戦兵器、ナイトメアフレームの開発者の一人となるロイド・アスプルンドは、プリン片手に生贄という名のパーツを探していた。
そのロイドと寮の同室であり、後に八人最大の被害者となるジェレミア・ゴットバルトは、ロイドが既に巻き起こしていた騒ぎの後始末に奮戦していた。
その騒動をワザと大きくしながら、後に八人最大の犯罪者となる大学院生ジェイル・スカリエッティは、この後の講義の手伝いをどうやって後輩に押し付けるか考えていた。
その講義の準備を既に進めながら、後に世界最強の戦艦の指揮官となるリンディは、未だ到着しない教授と助教授を探しに行こうかと思っていた。
その教授と挨拶をかわしながら、後に半永久機関GNドライブを完成させるイオリア・シュヘンベルグは、さっさと自宅を兼ねた研究所に帰ろうとしていた。
その研究所から出迎えにやってきた、後に最初のGNドライブ搭載機のパイロットになるリボンズ・アルマークは、いい加減待ちくたびれて自分から出向こうとしていた。
彼ら八人が、割と洒落にならない騒動を起こすまで、あと十分。
十年後。
このうちの四人が産み出した3機と1艦を残りの四人が(イヤイヤ)操り、200発弱の核ミサイルと4000発強のミサイル群、そして全世界から集った航空、陸戦、海上、海中兵器を”死者0で”返り討ちにするのは、また別の話。
そして、そのさらに十年後。
「あれ? 誰もいない?」
その日、織斑一夏は女性しか操れないはずのISを起動してメガネの女性教諭に驚かれ、
「残念でした~。君は栄えあるランスロットのデヴァイサーに選ばれたよ!」
その日、枢木スザクは自衛隊を、初めて乗るKMFで撃退し。
「やめろエイミィ! 引っ張らなくても自分で着替えられる!」
その日、クロノ・ハラオウンは入学試験艦隊士官コースを首席合格し。
「俺は、ガンダムになる!」
その日、ソラン・イブラヒムはイオリアから刹那・F・セイエイという名を与えられ、日本へ旅だった。
彼らがIS、KMFとその関連兵器の学び舎、ISKMF総合学園で出会うまで、後3ヶ月。
なんとなくISだけじゃなくて、陸戦専用な機体とか、支援用の兵器とか(合体とか、ロマンじゃない?)、運用母艦がほしいなあ、と考えてしまった。
そして思いついた勢いで書いてしまった。推古すらほとんどしてない。
後悔はしている。反省はしていない。