政府・民主党は、東日本大震災の被災地で、所有者が行方不明になったり、死亡後の相続人がいない土地の管理を、自治体が一時的に代行できる制度を創設する検討に入った。現行法では、不明者を死亡とみなしたり、相続人がいないと確定させるのに1年以上かかるため、土地利用が長期にわたり制限され、復興の妨げになる懸念が出ていた。財産権侵害にならないかを慎重に判断し、特別立法を目指す。【小山由宇】
自治体による代行が検討されているのは、資材置き場などへの一時利用の承認のほか、測量・調査の立ち会い、境界画定の同意など。復興事業のための土地売却の代行も視野に入れている。
震災による行方不明者は28日現在で8565人(警察庁まとめ)。被災後1年以上行方不明の人について民法は、家族などからの申し立てにより、死亡とみなすことができるとしている。だが、家族全員が死亡・行方不明となったり、近親者がいない場合、申し立て自体が出てこない可能性がある。死亡が確認されても相続人がいないことを確定し、財産を国庫に帰属させるまで1年近くかかるため、所有者不明の土地が多数発生しかねない。
被災地の土地区画整理をしやすくする「被災市街地復興特措法」や、住宅の集団移転を促す「防災集団移転促進特措法」などもあるが、いずれも権利関係が確定していることが前提。住宅の高台への移転や、環境に配慮した新市街地形成といった構想も、所有者が確定しないと進めにくいことから、政府・民主党内で新制度導入案が浮上した。
行方不明者の遺族年金などは、震災後3カ月で「死亡した」と推定して受け取れるよう、すでに特別立法で手当てされているため、民主党内には死亡とみなすまでの期間を短縮する案も出ている。ただ、法務省は特別立法に否定的で、調整が難航する可能性もある。
毎日新聞 2011年5月29日 6時55分