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〈メディア激変173〉ネットとジャーナリズム―1 長寿番組支える有料会員制

2010年12月17日18時0分

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写真500回を迎えた「マル激トーク・オン・ディマンド」で語り合う神保哲生さん(左)と宮台真司さん=東京都品川区の日本ビデオニュース社

 11月13日、2001年の放送開始から500回を迎えた番組がある。といっても、NHKや民放の話ではない。インターネット放送局「ビデオニュース・ドットコム」の「マル激トーク・オン・ディマンド」(毎週土曜更新)だ。

 この局の代表でジャーナリストの神保哲生さん(49)と、社会学者の宮台真司さん(51)が司会を務めてきた。500回目は2人だけで、この10年で日本と世界がどう変わったか、これまでの映像を見ながら話し合った。

 初回は当時民主党幹事長の菅直人首相が電話出演し、こう言っていた。「政治と行政を国民のレベルでコントロールすればいいんですよ」

 その後を振り返って神保さんが語る。「ネット選挙や取り調べの可視化。やると言っていた民主党が政権をとっても、実現しないのはなぜか。それを見ていくのが課題かなあ」

 メディアの問題も繰り返し取り上げた。「脱記者クラブ」「ネット時代のジャーナリズム」「なぜ報道被害はなくならないのか」……。この番組はそもそも「メディアが機能不全に陥っている」という2人の思いが出発点だった。「大手メディアが報じない視点」にこだわり、専門家や当事者と討論し、発信してきた。

 「問題はいっぱい残っているが、メディアはずいぶん変わった」。神保さんがそう言うと、「変わったんでしょうかねえ」と宮台さん。

 「インターネットが広がり、内部告発する時に、朝日新聞に持ち込むよりユーチューブに流してしまう。マスコミも適応して、素人が携帯電話で撮った映像とかを使う。追い込まれてきているということだと思うんですよ」

 確かに、この10年はインターネットが時代を変える原動力だった。動画配信のコストも低くなり、1999年に神保さんがビデオニュースを始めたころの苦労がうそのようだ。

 だが、今も経営は厳しい。収入は、月に525円の会費が頼り。「広告モデルだと、テレビよりひどいポピュリズムに陥りかねない」と考えるからだ。何とか2年前、損益分岐点の会員8千人を突破、今では1万人を超えた。

 心強いのは、「今までになかった視点を与えてくれた」「目からウロコが落ちた」といったファンの声だ。2年前には日本インターネット報道協会をつくり、加盟社は首相会見などの中継もできるようになった。神保さんは言う。

 「100年かけて先人たちが培ったジャーナリズムの価値が消えてしまうのか、ネットという新しい武器を手にして生き残るのか。100年プロジェクトと考えて、こつこつやっていくしかありません」(編集委員・隈元信一)

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