きょうのコラム「時鐘」 2011年5月29日

 95回を数える高校相撲金沢大会は卯辰山に落ち着くまで、浜辺や野球場などに場所を変えたが、季節は一貫して5月末か6月初めの開催だった

もし開催時期が若葉のころでなかったら、ここまで続いたかと考えることがある。土俵を見下ろす丘の上で、青空に透き通る若葉から差し込む光と風が、高校生のぶつかり合いと応援団の歓声とともに毎年、飽きずに卯辰山に足を運ばせるのだ

かほく市生まれで、昭和初期に三大陸飛行の快挙をなしとげた飛行家・東善作は金沢で新聞記者をしていた。大正期の第2回大会を取材したそうだ。あまりに強い選手がいたので記者の仕事を忘れ、まわしをかりて土俵に上がって勝負を挑んだという

本紙の記者にも、高校生の時に、この大会に出場したことのある同僚がいた。35年余の記者生活で30回以上取材してきたつわものもいる。土俵の下で見続け取材したいくつもの名場面を思い出す。若い時に土俵に上がれなかったのが唯一心残りである

最近は立ち合いの乱れも気になるところだが、若葉の輝きを期待して見守り続けたい。100回大会まで、あと5年。