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東日本大震災:計画的避難区域の和牛、避難前に臨時の競り

競りが始まるまで、頭をなでて子牛を落ち着かせる鴫原誠一さん(右)とタキ子さん=福島県本宮市の県家畜市場で2011年5月26日午前10時13分、三上健太郎撮影
競りが始まるまで、頭をなでて子牛を落ち着かせる鴫原誠一さん(右)とタキ子さん=福島県本宮市の県家畜市場で2011年5月26日午前10時13分、三上健太郎撮影

 東京電力福島第1原発事故で、計画的避難区域に指定された福島県飯舘村や川俣町山木屋地区の和牛を対象にした臨時の競りが26日、同県本宮市の県家畜市場で始まった。避難のめどが今月末に迫っているが、牛を飼っているため村から動けない畜産農家らに配慮して開催。約420頭が競りに出された。通常は競りにかけない生後数カ月の子牛の姿もあり、農家らは“無念の別れ”を惜しんだ。

 同村長泥の鴫原(しぎはら)誠一さん(67)、タキ子さん(62)夫婦は、飼っている7頭(親4、子3)すべてを出した。今回の競りを最後に廃業し、区域外の川俣町北西部に引っ越す。「いつ戻ってきて牛を飼えるか分からないから、やめざるを得ない。他で続ける元気はもうない」と2人はため息をつく。

 乳牛から切り替えて約30年。あと10年は続けようと、昨年11月にも親牛を1頭入れた。待望の子牛を宿しているところだった。この日の朝、誠一さんは前日に牛の搬入を終えて空っぽになった牛舎をのぞいたという。「空っぽでがっかりした。さみしいだけだ」と目を潤ませた。この日は競り開始直前まで、会場に入る順番待ちの列に並びながら、子牛たちの頭をいとおしそうになでていた。

 同じ長泥地区で誠一さんと親戚の鴫原昭二(てるじ)さん(52)も7頭を出した。昭二さんは、現在は山形県に避難している妻(51)や小学1年の長女(6)らと県内の別の地域で続ける予定だ。手塩にかけた牛だが、新しい土地に「風評被害」で迷惑をかける恐れを懸念し、新しい牛で再出発する。「手に職があるわけでもないし、牛を飼っていくしか娘を一人前にする手だてはない」と昭二さんは話した。【三上健太郎】

毎日新聞 2011年5月26日 11時34分(最終更新 5月26日 11時39分)

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