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EM使う河川浄化、研究者「待った」 海汚す可能性指摘

2011年5月28日

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昨年12月からEM団子の投入が始まった川=四日市市内

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市販されているEM活性液。薄めて掃除や臭い消しに使う、と説明書が添えられていた

 身近な川をきれいにしたい。誰もがそう思うが、そのための行為が流れ込む先の海を汚しているのではないか――。三重県四日市市で広がる「EM」を用いた河川の浄化運動に、一部の市民や研究者が待ったをかけている。

 四日市市では約10年前、ヘドロが堆積(たいせき)し悪臭を放つ水路で、EMによる浄化活動を始めた。市上下水道局は2002年度から毎年、市民団体に対し年間230万〜120万円で浄化を委託している。

 市環境部によると、浄化は、EM活性液のほか、液体に米ぬかやでんぷんを混ぜた団子を川に入れる方法。上下水道局、環境部ともに、一定の効果が出ていると認め、他の川にも広がっている。

 これに対し、四日市大学の松永勝彦教授(環境化学)が警鐘を鳴らす。同教授によると、EM団子にはリンが約2%、窒素が約7%それぞれ含まれる。ヘドロの分解効果はあるものの、EM団子の分解でリン・窒素濃度が高くなった水や未分解の団子が海に流れ込む恐れがあると言い、「リン、窒素は伊勢湾での赤潮発生の原因になる」と指摘する。

 昨年12月には、市内の別の川で、地元自治会がEM団子を入れ始めた。松永教授の考えを知る市民が、自治会役員や市幹部に再考を求めたが、今年に入ってからも投入は続いたという。

 EMの効果に疑問を投げかける研究結果は他にもある。福島県が07年度、EMの生物化学的酸素要求量(BOD)を測ったところ、排水の環境基準より極めて高い濃度だったという。同県の担当者は「市民運動として定着することに疑問があり調べたが、川を調べるまでもなくEM自体が汚濁原因だった」と話す。

 市上下水道局は「問題があるとの指摘については今後、調査をしたい」とする。一方、市環境部は「四日市港のリンや窒素濃度は悪化しておらず、伊勢湾での赤潮発生件数も横ばい。今のところ問題視はしない」との姿勢だ。

 松永教授は「海に悪影響があるリンや窒素が流れ込むことには変わらない。漁師との共存のために海を汚さないようにする意識が重要なのではないか」と疑問を投げかけ、「河川のヘドロを解消するには、有機物質の分解を促す酸素を水中に送り込むか、山の保水力を高めて水量を増やすなどの方法がある」と主張している。(中村尚徳)

     ◇

 〈EM〉 Effective Micro―organismsの略。有用微生物群と訳され、多数の微生物を培養した液体が市販されている。元々は農業用として開発されたが、水の浄化や生ゴミ処理などにも使われる。

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