'11/5/28
西飛行場廃港受け入れ 空港アクセス改善急げ
広島市の松井一実市長はきのう、県営広島西飛行場(西区)の市営存続を見送ると湯崎英彦知事に伝えた。今後は県市が共同運営するヘリポート化に向け、廃港の手続きが進むことになる。
累積赤字は123億円に上る。昨年秋からは定期便がなくなった。存続の前提である東京線就航のめども立たないだけに、現実を見据えた判断といえる。
広島空港(三原市)の開港から18年。西飛行場の存廃論議がこれまで繰り返されてきたのは、広島都市圏から空港へのアクセスの悪さが原因といってよかろう。
空港まで乗り入れる軌道系の交通手段がないため、移動時間に余裕をみなければならない。直通で行ける唯一の公共交通であるリムジンバスも、渋滞や悪天候のたびに運行中止となってしまう。
この春の大型連休期間中、計214便のリムジンが運休に追い込まれた。高速道路料金値下げによる渋滞のあおりもあるにせよ、前年より40便以上増えている事態は見過ごせない。これでは空路を敬遠するビジネス客も多かろう。国内線を中心に4年連続で旅客数がダウンした背景には、こうした事情があるのではないか。
軌道系の新設がおいそれとは望めない以上、山陽道しかないアクセス道の代替ルートづくりが急がれる。しかし広島市内の高速3号線から熊野町経由で県道矢野安浦線を通り、空港と結ぶルートも実現までに2年以上かかるという。
リムジンが運休した場合、JRへの乗り換えを円滑にすることが欠かせない。できる手から打っていくべきだろう。
県やJR、商工会議所などでつくる県空港振興協議会の部会がアクセス改善に向けた行動計画をまとめた。ただ山陽道の渋滞情報の提供などがめぼしいところだ。
軌道系では空港連絡バスの乗り継ぎ駅であるJR白市駅(東広島市)の改善が目に付く程度。それも乗り換え利便性の向上や駅舎のバリアフリー化といった大まかなものである。いつまでに何をどうするのか、具体的なビジョンは見えてこない。
白市駅にはエレベーターやエスカレーターがない。重いトランクを引きずり陸橋を上り下りするほかない。連絡バスにスムーズに乗り換えできるよう駅内外の環境を見直していくことは、弱者に優しいまちづくりにもつながる。
JR側に対し県や市はどんどん注文を付けていくべきだ。乗り継ぎ駅までの快速列車の新設やダイヤ改正といった「お願い」だけでない。駅舎の改良を財政的に後押しする手もあろう。
空路の要である東京線が新幹線と競合関係にあることは確かだ。ただJRも公共交通の一翼を担う機関にほかなるまい。空港へのアクセスに不便をかこつ広島県・市民のニーズに応えてもおかしくないのではないか。
利用者の視線から考え、改めるべきは改める。その原点をいま一度、官民それぞれが再確認してもらいたい。