広島市の松井一実市長は27日、市役所で湯崎英彦知事と会談し、県営広島西飛行場(西区)をヘリポート化する県の方針を了解すると伝えた。松井市長は4月の就任後、「経緯や理由を聞いて納得したい」と態度を保留していたが、飛行場廃港とヘリポート化という最終結論が決まった。定期便が就航していた空港の廃止は全国で初めて。広島空港(三原市)へのアクセス対策に取り組むことや、飛行場の跡地利用を広島市がまちづくりの一環として検討することでも合意した。【樋口岳大、寺岡俊】
会談で松井市長は「県側からヘリポート化する理由を聞き、私なりに理解できた。市民、議会、経済界の意見を総合的に勘案した」と発言。広島市内から広島空港へのアクセス対策▽観音地区を中心にした市西部地域の活性化を踏まえた跡地利用を検討する--を前提に、ヘリポート化を了解する意向を伝えた。
会談終了後、湯崎知事はアクセス改善に向け、リムジンバスの新路線開設に向けた社会実験実施などに言及。跡地利用では、同飛行場約48万平方メートルのうち約35万平方メートルが県所有、約13万平方メートルが県市共有だが、湯崎知事は「跡地活用は、広島市でまちづくりの観点から検討していただきたい」と応じ、「次のステップに進めるのでありがたい」と話した。ヘリポートを県市共同で運営していく方針も確認した。
松井市長は、▽広島南道路の建設に向け、県がヘリポート化に向け手続きを進めるのは無理がない▽同飛行場の利用者が減少し、広島空港への機能集約が県市の発展に望ましいと判断し、県がヘリポート化を提案した--などの点を踏まえ、了解したと説明。効果的なアクセス対策や跡地利用が求められる点では「私の肩の荷は重くなった。これからが大変」と述べた。
県は、県議会6月定例会にヘリポート設置管理条例案と整備工事費の予算案を提案する。国の設置許可などを経て、12年秋の供用開始を目指す。
広島商工会議所の深山英樹会頭は27日の記者会見で、ヘリポート化について「将来の州都便(就航)を考え、飛行場の機能を残してほしいとの希望があったが、県と市が相談された結果で、やむを得ない。広島空港へのアクセス対策など、利用者の利便性向上が図れるよう十分な検討をしていただきたい」と語った。【加藤小夜】
昨年1月に湯崎知事が秋葉忠利・前市長に対し、定期便撤退後はへリポート化することを提案。10月に日本航空子会社が撤退し、定期便はなくなったが、秋葉前市長は12月、東京便就航を視野に市営空港として存続する方針を示した。しかし、今年3月、市議会は市営化条例案を否決。秋葉前市長は市営化を断念し、県は飛行場北端を横切る広島南道路の着工(12年秋)に間に合うよう、ヘリポート化する手続きを始めた。今月20日には、有岡宏副知事が松井市長にヘリポート化方針を決めた経緯を説明した。
毎日新聞 2011年5月28日 地方版