トピック40
横浜市議二名の今後は?

 極めて異例な事ですが、横浜市議事件の第三弾をやります。

 第一弾:横浜市議二名(市民の党)が国旗掲揚反対パフォーマンス
 第二弾:横浜市議会事件続報・・・市議二名ついに除名処分

 

1.除名が正式決定

  新聞記事は、横浜市政ウオッチングがよく集めてあるので、ここでは全ては挙げません。

  除名前の演説画像・・・井上さくら議員

議長席占拠の市議を除名、議員資格失う 横浜市議会 朝日新聞 6/25

 横浜市議会(定数92)は25日、本会議場での日の丸掲揚に反対して議長席などを占拠した会派「市民の党」の井上桜、与那原寛子両市議を「除名」とするかどうか採決した。まず井上市議について、自民党、民主党、公明党など69人が除名に賛成し、可決に必要な出席議員数の4分の3を上回り、井上市議は議員の資格を失った。続いて、与那原市議の採決が予定されている。

 採決前の討論で、自民が「議会の品位をけがし、秩序を乱した」と賛成理由を述べた。これに対し、神奈川ネットワーク運動と共産党が「市民の負託を受けた議員の行為を制限する除名には同意できない」と反対した。

 井上市議らは議会運営委員会で日の丸掲揚を決めたことに反発。6月5日の本会議前に話し合いを求めて議長席などに座り続け、約6時間後に連れ出された。その後、市議会に設置された懲罰特別委員会で「除名は妥当」との結論が出ていた。

 除名は地方自治法にある議員への懲罰の中で最も重い処分。

 元逗子市長で地方自治法に詳しい富野暉一郎・龍谷大教授(地方自治)は「市民の信託を受けた議員の除名は議会による有権者の選択の否定で、非常に重い。除名を是認できるほどの行為だったか、市民が納得できる議論があったかどうか、市民側からも議会の判断へのチェックが必要だ」と指摘している。(12:00)

横浜市議会 議長席を占拠の市議2人を除名 毎日新聞 6/25

 横浜市議会(定数92)は25日の本会議で、日の丸掲揚に抗議し、議長席などを占拠した市議2人に対し、「議会の秩序を乱した」と懲罰の中で最も厳しい除名処分にした。記名投票の結果、出席議員の4分の3以上が処分に賛成した。2市議は地方自治法の規定により、自動的に失職した。

 2人は、地域政党「市民の党」の井上さくら(37)、与那原寛子(37)両市議で、いずれも2期目。5日開かれた本会議で、議場に日の丸を掲揚したことに抗議し、議長席と事務局長席を占拠。議長の退場命令に従わず、議会は6時間空転した。

 両市議は「有権者から負託を受けた議員の身分を奪うのは不当。あらゆる法的手段に出る」と話している。

 地方自治法は議員の除名について、全議員の3分の2以上が出席する会議で、4分の3以上の同意が必要と定めている。【山本浩資】

(毎日新聞2002年6月25日東京夕刊から)

議長席占拠の女性市議を除名処分 横浜市議会 産経新聞 6/25

 横浜市議会は25日の本会議で、議場での国旗掲揚に反対し、議長席を占拠した女性市議2人のうち、井上さくら市議(37)=所属会派・市民の党=を除名とし、議員資格をはく奪した。もう1人の与那原寛子市議(37)=同=も午後、除名となる見通し。

 除名処分は地方議員に対する最も重い懲罰で、政令市の議員が受けたのは初めて。2人は「あらゆる法的手段を取る」としている。

 審議、採決は井上市議、与那原市議の順で行われ、採決は記名投票で実施された。井上市議の採決結果は、投票総数90人のうち、除名賛成は自民、民主、公明など69人、反対は共産など21人だった。

 採決に先立ち、井上市議は「議場での“日の丸”掲揚は1人ひとりの愛国心にかかわる。政府は法制化されても強制しないと言っているが、これは強制だ。思想、良心の自由に反する」と弁明した。

 賛成討論で自民党市議は「再三の退場命令にも従わず、議会の空転を招いた。議会の品位をおとしめたのは明白」と指摘した。

 市民の党は8年、市民運動に取り組む人たちらが神奈川県内各地で結成したとされる。

 日の丸掲揚は、市議会運営委員会で決定。井上市議らは2人だけの少数会派のため委員として発言できず、5月29日、初めて議場に掲げられた日の丸を撤去しようとして議長に退場を命じられた。

 さらに6月5日、議長に釈明を求め、議長席と市議会事務局長席を約6時間占拠。議長の指示で市職員に強制退去させられた。

 これを受けて設置された市議会懲罰特別委員会は「議場の秩序を乱した」として21日、自民と民主、公明、民主党横浜みらい4会派の賛成で除名処分を決めていた。

乱行2市議は除名処分でも反省なし(産経神奈川版 6/26)

横浜市議会の議長席選挙などで 自分たちの正当性繰り返すだけ

 横浜市議会の乱行2市議が、除名処分となり議員資格を失った25日の同市議会本会議では、処分をめぐる採決に自民、公明、民主、民主みらいの4会派が賛成。共産と神奈川ネットは乱行を厳しく批判したものの、少数会派の発言機会が少ない点を問題視して除名には反対した。しかし、議場の国旗を力ずくで引きずり下ろそうとしたり、6時間以上も議会を空転させたりした2人は、処分後も反省の色を見せていない。

 採決前、弁明の機会を与えられた井上さくら氏(37)は「議長と話し合うには議長席で待つ以外ないと思った。バリケートを築いたわけでもなく、暴力を振るったわけでもない。占拠とはいえない」、与那原寛子氏(37)も「議員が議員の資格を剥奪する除名処分は、民主主義にもっとも逆行する」などとと主張した。

 これに対し自民、民主など4会派は「弁明は反省や謝罪とはほど遠く、終始一貫して自分を正当化していた」(代表で発言した民主市議)などと除名を求めた。

 共産は「実力で議会の秩序を乱し、許されるものではない」としながら「議会運営委員会で2人の発言を認めるべきだった」などとして公開の場での陳謝が妥当な懲罰として除名に反対。神奈川ネットは「非交渉会派の市民の党の再三の発言を多数決で封じた」などとして不処分を主張した。

 傍聴席には125人が詰めかけ満席。除名反対票が入るたびに注意を無視して拍手を続けた3人が議長から退場を命じられるなど、一時は騒然とした。

 議長の除名宣告で退場した2人は、報道陣の前で県知事への審決申請や訴訟を起こす方針を示し、井上氏は「自分たちが100%正しいとは言っていないが、私たちだけが責任を負わされるのはおかしい」などと、自らの主張を繰り返すだけだった。

 今回の成り行きについて中田宏市長は「処分の軽重は議会の判断だが、あんなことをしたのだから何らかの処分を受けるのは当然」と述べた。(安田浩子)

2市議除名きょう可決の見通し 神奈川新聞 6/25

◆横浜市会の議長席占拠騒動で

 横浜市会の「市民の党」の井上さくら、与那原寛子両市議の除名を問う本会議採決が二十五日午前十時から行われる。議長席占拠騒動(五日)の責任を問われ、除名賛成会派の所属議員数から可決する見通し。「議員資格はく奪」という重大処分は県内では初のケースとなるだけに、「多数決の原則」と「少数意見の尊重」という議会運営の在り方からも論議を呼びそうだ。

 横浜市会(九十二人)の構成は自民党(三十三人)、公明党(十六人)、民主党(同)、共産党(十人)、神奈川ネット横浜(同)、民主党横浜みらい(五人)、市民の党(二人)。市民の党だけが市会運営委員会に委員を出すことができない非交渉会派(四人以下)となっている。

 今定例会では代表質疑や決算特別委の質問時間変更と議場の日の丸掲揚をめぐり、対立が生じた。質問時間では、自民、公明、民主の三大会派以外の会派が時間減の見直しとなり、反対した。掲揚については三大会派と「みらい」が賛成、その他が反対した。いずれも多数決で決定した。

 この間の市会運営委の協議で市民の党はオブザーバーの立場での意見表明を求めたが、三大会派の反対で否決された。井上議員は「こうした場での発言が認められていれば、座り込みなどの事態には発展しなかった」と「多数決優先の議会運営」を批判した。

 懲罰特別委での当初の落としどころは、除名に次ぐ処分である「出席停止」。しかしこれが横浜市会の規則で「最長七日間」と定められていることから「あまりに軽い」(公明議員)との不満がくすぶった。

 そこへ六日の本会議に両市議が「日の丸強制反対」をプリントした「ゼッケンともとれる不謹慎な服装」(民主議員)で出席。質問に立った与那原議員から謝罪の言葉が出なかったことで「『まるで反省がなく放置できない』との怒りが再燃した」(自民議員)。

 共産、ネットは少数意見の尊重、日の丸掲揚反対という双方で市民の党と同じ立場だが、「日の丸に手をかけるなどの実力行使は許されない」と両市議を批判。しかし懲罰委では弁明の機会を設けるよう主張。十七日に実現したが、「実力行使の非を認めよ」という交渉会派側と「あれは実力行使ではない。他に手段はなかった」とする市民の党との意見は平行線のままだった。

 二十一日の懲罰委で共産は「議会での陳謝」、ネットは「処分なし」を主張したものの三大会派とみらいが「除名」で一致。四会派の所属議員数の合計(七十人)は可決に必要な四分の三をぎりぎりで超える計算だ。三大会派のある市議は「除名は厳し過ぎるという意見もあろうが、現状ではほかに該当する処分はない」と話している。

横浜市議会2議員除名 中日新聞 6/25

各会派『苦渋の決断』 『懲罰制度の不備、明らかに』

 「議会への冒涜(ぼうとく)。厳罰を」「選挙で選ばれた議員の身分は軽くない」−。議場での日の丸掲揚に反対し、議長席への座り込みという“実力行使”への懲罰をめぐり、二十五日の横浜市議会は揺れた。市民の党の与那原寛子、井上さくら両市議の除名採決を行った本会議。共産と神奈川ネットが反対したが、自民、民主、公明、横浜みらいの四会派が賛成し、出席議員の四分の三以上の除名要件を一−二票上回って二人の除名が決まり、議員資格がはく奪された。

 「開会ぎりぎりまで所属議員の間で話し合っていた」。横浜みらいは、懲罰特別委員会で除名の厳罰処分を要求したが、会派内では「議員資格を奪うまではどうか」と議論を続けたという。

 「議長席の占拠は議会制民主主義を根底から否定するもの」と除名に賛同した公明も、「処分なし」から「除名」まで意見が分かれた。だが、両市議が懲罰特別委の弁明の際、反省の態度を示さず、議会事務局などへの責任転嫁に終始したことを受け、「厳罰やむなし」の方向に傾いた。

 地方自治法では、地方議員へ適用する懲罰として、議場での戒告、陳謝、一定期間の出席停止、除名という四段階を定める。出席停止について同市議会の会議規則で「最長七日間」と規定する。「七日間の出席停止」と「除名」の隔たりの大きさが結局、各会派を除名の方に走らせた。

 「一年間の出席停止という処罰があれば…」と話すのは民主市議。「七日間の出席停止では軽い。現実的には除名処分が妥当との結論に至った。懲罰の制度上の不備も明らかになった」

 共産も厳正な処罰を求めたが、除名処分は「必要な限度を超えている」と結論づけた。

 与那原、井上の元市議は、計二万人以上の有権者の負託を受けた。ある市議は「弁明の場で謝罪があれば、出席停止で済んだかも。賛成に回ったが苦渋の決断。後味の悪い結果」と語っていた。

日の丸めぐる除名撤回を 各地の県議ら68人が要請( 共同通信

横浜市議会議場の「日の丸」掲揚に反対し、議長席を占拠した女性市議2人の議員資格をはく奪する除名処分が25日採決されるのを前に、全国各地の県議や市議ら68人が連名で24日、処分しないよう求める要請書を小林昭三郎横浜市議会議長に提出した。 除名は地方自治法上、最も重い懲罰。政令市の議員が受けたケースはなく、25日の本会議で同意されれば、日の丸をめぐる異例の処分となる。 要請書は「身分はく奪の処分は重すぎる。国旗・国歌法制定時、政府は何度も強制しないと言明しており、後に禍根を残すことになりはしないかと、重大な関心を寄せている」などとしている。 会見した坂本史子・東京都目黒区議は「思想信条の問題を発端としており、軽々しく除名の判断を下すべきではない」と話した。                           

 

2.朝日と産経の見方

 この話題、朝日と産経あたりが好きそうだなー、と思っていたら、その通りでした。朝日は社説で意見を述べ、産経は続報という形でより詳細な記事を載せています。

市議除名――いくら何でもやりすぎだ(朝日新聞 6/26社説)

 

 横浜市議会で、異常なできごとがあった。

 今議会が始まって間もなく、2人の女性市議が議場から日の丸を撤去しようとして退場させられた。1週間後、2人は議長席と事務局長席を占拠し、6時間後に強制的に連れ出された。

 これを重大視した市議会は2人を「議会の品位をけがし、秩序を乱した」という理由で除名してしまった。自民党をはじめ、民主、公明両党など、賛成は出席者の4分の3を超えた。

 もとより2人の行為が穏当だとはいえない。だが、選挙で選ばれた議員の資格を失わせてしまうことの重さを、他の議員はどこまで真剣に考えたのだろうか。

 国旗の法制化から3年。横浜市議会は今議会から議場に日の丸を掲揚することにした。議会運営委員会での決定だったが、少数会派の2人はこの委員会に出席できなかった。そこで「こういう思想信条にかかわる問題は、みんなで決めるべきだ」として、本会議での議論を主張していた。

 議長席などの占拠について2人は「議長と議論しようとしたが応じなかったので、やむをえなかった」と説明している。

 意見表明の場がなかったからといって、こうした行為が許されるはずはない。懲罰の対象にされるのもやむをえまい。しかし、いきなり除名とは何とも乱暴である。

 地方自治法は懲罰の種類として「除名」のほか「戒告」「陳謝」「一定期間の出席停止」を定めているが、除名には特に厳しい条件をつけている。選挙で選ばれた議員の身分を手厚く保障し、多数派による恣意(しい)的な追放を防ぐためだ。

 国会でも、与党ペースの審議や採決を阻むために少数派が議場の前で座り込むといった実力行動は、過去に何度も繰り返された。それでも、除名などという話は聞いたことがない。

 汚職や不祥事にからんだ国会議員について、政権党は法的拘束力のない辞職勧告決議案でさえなかなか認めない。有権者の負託を受けた議員の身分は重い、というのがその理由だ。

 そう考えると、自民党が先頭に立って2人の議員資格を奪った横浜市議会のありようは尋常ではない。気になるのは、日の丸という機微に触れる問題だったからこそいきり立ったのではないか、という点だ。

 発端がほかの問題だったなら、2人が同じようなことをしても除名にまでしただろうか。与党が押し切った国旗・国歌の法制化は、こんなところにも後味の悪さをひきずっているといえまいか。

 世の中には、対立や争いの要因は数え切れないほどある。気にくわないからといって議長席を占拠するのが幼稚な行為だとすれば、多数派が寛容さを失って排除で応じるのは危険な行為というものだ。

 ワールドカップ決勝戦が行われる国際都市。横浜市民はこれを許すのだろうか。

議場ジャック「処分は妥当」(産経 6/29)

横浜市議会で本会議場への国旗掲揚に反対する「市民の党」の女性議員二人が議長席などを占拠したとして除名処分となった問題が波紋を呼んでいる。議員資格を失った二人は処分撤回を求めて徹底抗戦の構えだが、懲罰動議には国旗掲揚に反対の会派さえも賛成するほどで、「言論の場」を"実力行使"で踏みにじった行為への批判は根強い。(横浜総局安田浩子)

実力行使問題となった横浜市議会の六月定例会は五月二十三日に開会。前日の二十二日の市議会運営委員会で多数決によって議場への国旗と市旗の掲揚が決まった。

市議会の会派構成は、自民三三▽民主ニ八▽公明ニ八▽共産一〇▽神奈川ネット横浜一〇▽民主横浜みらい五。五議席以上は交渉会派として議運に委員を出せる。しかし、二議席の「市民の党」は議運に委員を出せず、それが、騒ぎの発端となった。

二人は、二十二日と国旗が初掲揚される二十九日の本会議直前の議運で発言を求めたが、拒否された、として最初の"実力行使"に踏み切る。

本会議開会時に、井上さくら氏(三七)が、国旗を降ろそうとして退場させられた。そして、三月に当選した中田宏市長(三七)に対する各会派代表の初の質疑となるはずだった六月五日。二人は開会前から六時間近く議長席と事務局長席を占拠した。議長が二人に退場を命いたが、これを拒否し、議長の退場命令を受けた職員が二人を毛布で包んで強制退去させた。

市民活動家

処分を受けた井上氏と与那原寛子氏(三七)が属する市民の党は平成八年に県内や各地の市民運動家で結成。県議会や厚木、座間、平塚市の市議会などにも議席を持つ。井上、与那原両氏は七年の統一地方選で当選し二期目。環境問題や高速道路、地下鉄などの公共事業見直しを訴えた。

 今年三月には、井上氏と市民団体が定時制高校再編をめぐり、「教育長に会いたい」と教育長室に夜通し居座った。市職員の一人は「『実力行使もやむたし』という人たち。一昔前の学生運動の闘争と同じ手法で、いまは共感を得にくいと話す。

"同志"も批判

五回にわたって開かれた懲罰特別委員会で、二人は「いつでも退く用意はあった。議長と話ができればこんなことにはならなかった」と釈明に終始した。こうした弁明に、少数会派の発言機会確保と国旗掲揚反対では二人と同じ立場の共産と神奈川ネットからも批判された。

「議長から回答がもらえなかったといっているが、前日に面会しており、主張は虚偽で卑劣(共産)」と指摘している。

最終的に「議会運営にも問題があった」とネットが「処分なし」を主張。共産は陳謝処分を求めたが、自民、民主、公明など出席議員の四分の三以上の六十九人の賛成で除名が決まった。

議員資格を剥奪された二人は近く、県知事に処分取り消しを求めて審決申請を行うほか、訴訟や街頭運動を通じて、処分の不当性を訴えていく方針。

市議会の一部には、「最大七日の出席停止」に次ぐ処分が「除名」になっている現行の懲罰制度を疑間視する声もあるが、多くの議員の見方は冷ややかだ。処分に賛成した議員は「市民の負託を受けた議員が"議場ジャック"するなんて…。これ以上のひどい行為はありえず、除名処分は妥当だ」と語る。

二人が「私たちに投票した市民の権利を奪うことになる」と主張したことについても、別の議員は「われわれの後ろにも一人ひとりの市民がいる。その権利を奪ったことはどうなるのか」と反論している。

おまけとして産経抄(いまいち的外れな感じがするが、一応)

6/27産経抄

  児戯に類する行為というか、次元が低過ぎる騒動というか。横浜市議会の除名問題はまともに取り上げるのが気恥ずかしいほどである。しかし「いくら何でも(除名は)やり過ぎだ」という社説の新聞もあるから、書く。

 ▼市議会の四分の三の多数で除名になったのは、「市民の党」の井上さくら、与那原寛子両市議である。ご両人は本会議場から日の丸を撤去しようとし、議長席などを六時間も占拠、強制的に連れ出された。それが「議会の品位をけがし、秩序を乱した」として除名されたという。

 ▼除名とは“いくら何でも”という見方もあるかもしれない。しかし地方自治法にある懲罰は、各自治体の責任において執行すればよく、はたがとやかくいうことではない。議会の四分の三以上が賛成したということは、そこに横浜市民の意思が反映しているとみてもいい。

 ▼かりの話、中国や北朝鮮で議場の国旗を引きずり下ろそうとしたらどうなるか。ただちに逮捕され、恐らく死刑になる。いや、日本でも外国の国章(旗)にそのような侮辱を加えれば、刑法第九二条により二年以下の懲役または二十万円以下の罰金になる。

 ▼ところが自分の国の日の丸にはどんなにこれを貶(おとし)めても罰則がない。こんなとぼけた国は日本だけではないか。これは国旗でなく国歌の場合だったが、この五月、パリのサッカー場で国歌ラマルセイエーズ演奏の時、一部サポーターが口笛を吹いた。

 ▼と、シラク仏大統領は「フランスへの侮辱だ」と憤然席をけったという。それが国旗や国歌に対する世界的常識だろう。個人の思想や信条のため国旗に敬意を示せないなどという言い分は、わがままな甘ったれ。やり過ぎなのは「除名」ではなく「児戯」のほうである。

 なお、朝日新聞の社説に抗議?して、電話をされた方がいるので、そのレポートを、ここに載せます。

横浜ベイスターズファン氏のレポート

 小生、あまりの内容の酷さに驚き、同社に電話致しました。論説委員の一人の方で出て対応してくれたのですが、あの社説は朝日新聞の論説委員20〜30名が議論をして書いた記事とのことでした。したがって、朝日新聞社としてのこの問題への見解だと豪語しておりました。

論説委員曰く、

 除名処分はやり過ぎだ、多数派の少数者切り捨てを許してはいけない、とりわけ、国旗国歌という思想信条にかかわる問題は慎重に、これが認められると、全国各地で国旗国歌問題で少数派の議員が良心の自由を侵され、除名する前例にされてしまう。従って反対だ。と。

 国旗国歌反対派の議員の言論の自由は、認めるとして、議会制民主主義のルールを守ることが大前提ではないか。議長席を占拠して、6時間も議会の運営をストップさせたせ責任はどうするのか。市民の税金の無駄遣いだ。地方自治法では議員の2/3出席のもと3/4の決議で除名処分とのこと。市民の負託を追った議員が3/4賛成している除名処分に異議を唱えることは横浜市民に対する侮辱以外のなにものでもない。どう考えても3/4の賛成は重いと思う。もし、朝日新聞社がその事実を認めながら、除名がやり過ぎというのなら、国旗国歌反対に賛成のエールを送りたいが為に書いているきわめて政治的なプロパガンダーだと言わざるを得ません。

  とにかく、朝日新聞をはじめ、市民の会とかいう新左翼グループほかの国旗国歌反対グループはこの問題を訴訟に挙げて、アラユル妨害活動をしでかしてくることは間違いありません。まずは、朝日の社説記事に対する反論の良識の声を挙げたいと思います。是非皆様にも呼び掛けてください。よろしく。

 朝日社説や産経続報はそれほどでもないが、横浜ベイスターズファン氏のレポートと産経抄を読むと、朝日や産経の中にも、日の丸の問題にしてしまっている人がいるようです。それも無理の無い話で、 市民の党自身のビラが「日の丸色」が強いのです。事件の当事者にも、この辺がよく見えてないんじゃないかな。

 あと朝日の以下のフレーズは変。

 議場の中と外では、全然違う話じゃん。今回は、議場の"中"で審議妨害をやったから、大問題になってるんだろ? 本当に20人で考えた文章なのか?

 

3.民主党の内輪もめ・・・そもそも何故「日の丸」が?

 ここで話を日の丸引き降ろし以前に戻して、何故、急に日の丸を掲げようという話が出て来たかを考えます。但し正確なソースはありません。頂いたメールとかネット上の掲示板で話されていた話を総合したものです。ただ今回の問題の本質を考える上で絶対に知らなくてはならぬ事なので、この項で述べる事にあるので、しっかりと読んで下さい。

「民主党横浜みらい」の誕生

 どこの新聞も触れていないのが不思議ですが、この事件は溯ると、横浜市の民主党が分裂を起こした事に発します。民主党の中の少数派が「民主党横浜みらい市会議員団」として、1月29日に新会派を作ったのです。何故分裂したのか? それは、当時の横浜市長である高秀氏の多選を認めるかどうかで一悶着あったからです。

 横浜みらいのホームページ

 昨年の11月、民主党内で「横浜市総支部協議会」なるものが発足し、当時市長の高秀氏を支持するかどうか? について話し合いがもたれ、年明けの1月6日に高秀支持の結論が出ました。このあたりの経過は、以下のページが詳しいです。

「横浜市長選」 シリーズ 労働組合の社会学(情報労連HPより)

 協議会では数回の協議を重ねた後、年明けの1月6日市会議員団の「3期12年の高秀市長の市政運営には大綱誤りがなかった。政策評価は合格点」との報告を受け、高秀市長の推薦を県連に答申した。
 連合は既に高秀市長の推薦を決定していたこともあり、県連執行部は異論なく推薦の決定を本部に申請した。ただ巷では高秀市長の四選に反対するいくつかの市民グループが、新人候補の擁立に向けて派手な動きを見せていた。県連と本部の動きは省略するが結論は「4選まかりならん」。2月になり5人の市議が団を脱退し、民主党横浜みらい市議会議員団を結成し新たな候補の擁立に動いた。
 党本部の公式見解は「誰も推薦しない」。県連は「高秀現市長推薦」。ことの次第は以上のとおり。横浜市選出の民主党県議レベルでは高秀派8人、中田派1人、中立4人。

 こういう動きに、民主党内の反多選派は反発し、「横浜市長選挙に対する市民意識アンケート」なるものを実施します。 菅野よしのり氏のHPに、その結果が掲載されています。これは今年の1〜2月頃に行われたものですが、中田新市長が誕生した背景がよく分かるものであり、必見です。

横浜市長選挙に対する市民意識アンケート結果報告から抜粋

問3 現在の高秀市長市政への評価

 2 満足している           491(18.85%)
 3 不満である            802(30.79%)
 4 わからない           1053(40.42%)

問4 あなたは首長の多選禁止についてどうお考えですか?

 1 賛成である           1381(53.01%)
 2 反対である            335(12.86%)

問5 多選禁止の原則は横浜市長選挙にも適用するべきであるとお考えですか?

  1 適用すべき             1387(53.24%)

 このアンケートの実施してた民主議員5人は、新会派を結成「横浜みらい」となります。

  「民主党横浜みらい市会議員団」結成

 なお、民主党本部は決まりを守って高秀氏は支持していませんから、民主党の中では県連だけが、高秀氏を支持していた事になります。

 この辺の経緯は、以下のページで図入りで説明されています。

  見えてきた各党「ねじれ現象」

 

横浜みらい、「開口の会」の中田宏支持に

 一方、民主党とは別に、開口の会なるものがあり、中田宏氏を擁立したのはここでした。

 開口の会HP(閉鎖)
  掲示板(閉鎖)
  2ちゃんねるの某スレッド

 中田氏が立候補を表明したのは2月25日でしたが、実は2月11日の時点で、 多選問題を考えるシンポジウム」なるものを開催し、「民主党横浜みらい」と「横浜開口の会」が主催し、中田氏を招いています。又、2月16日の横浜みらい主催の演説会に、中田氏が参加しています。

 多選問題を考えるシンポジウム中田宏氏HPより)
 親しき仲にも道理あり(同)

 だから少なくとも2月11日の時点で(恐らくはもっと前から)、中田氏擁立の動きは出ていたのでしょう。横浜みらいが開口の会と協力しているのにも注目。ただ開口の会は、中田氏が立候補表明したあと、解散しています。又、神奈川ネットも中田氏を支持しています。

 「30・40代発〜 開口の会」の今後の活動について

あと、以下のページも参考に

  横浜の選択>’02市長選の構図>中>ライバル打倒に執念>代理戦争(松本純氏HP)

 

市民の党も反高秀運動をしていた

 更に話をややこしくして申し訳ないのですが、市長を変えよう! 2002人市民の会というものもありました。これは開口の会や横浜みらいとは、全く別ルートの多選阻止運動です。ところで「市民の会」という名前、何かピンときませんか? そうです。「市民の党」と同じネーミングセンスですね。市民の党は、半ば選挙党と化し、千葉の堂本さんや立川の川田さんなんかを、応援したのは、第一弾で書きました。横浜でも同じ事をやっていたという訳です。

 2002人市民の会

 で、嶌信彦氏を擁立する為、結構頑張っていました。市民の党機関紙「新生」に、以下のページが載っています。

 嶌信彦さん擁立運動
 市長四選に反対して2002人市民の会発足

 ただ蔦信彦氏の擁立は、本人から断られて失敗します。以下のページに、その辺りの紆餘曲折がかかれています(2月4,6,11日を参考に)。井上さくら氏の名も・・・。

  編集長ヘッドライン日記 2002.2月 (牧 太郎・二代目・日本魁新聞社

 という事で、市民の党の多選阻止運動は挫折します。

 

民主党は横浜みらいを恨んで・・・

 というような経緯から、民主党は横浜みらいを目の仇にするようになります。内ゲバってやつですかね? 5月18日の民主党神奈川大会のページで、この対立について(ちょっとだけ)触れられています。

 http://www.gpn.co.jp/dpjr/event/2002_4/2002_0421.htm

 ここには奇麗事しか書いてありませんが、横浜みらいへの批判もあったものと推測されます。

 その後民主党は、市議会における質問時間の変更しようと言い出します。以下の文章は、共産党の横浜市議・大貫のり夫氏のページです。

http://www.ohnuki.jp/shu_note/10102.html

少数会派の質問時間短縮
  民主が提案、自民・公明同調
共産党、ネット、横浜みらいは反対
  横浜市議会

 横浜市議会で、少数会派の発言時間を削減する提案が民主党から出され、自民党、公明党が同調。日本共産党、神奈川ネットワーク運動、横浜みらいの各会派は、これに反対しています。 同市議会では現在、本会議や予算・決算などの特別委員会の質問時間は、五人以上の「交渉会派」の場合、「会派割」時間と「人数割」時間を合計したものが、各会派の持ち時間とされています。ところが、民主党は、「議員の多い自民党などには大いに不公平だ」として「会派割を廃止したい」と提案し、自民、公明が同調しています。 これが通ると、例えば本会議での予算代表質問の発言時間が、自民党は現行の六十分から七十三分に増える一方で、共産党、ネットは、現行の二十六分が二十二分に短縮されます。 日本共産党、ネット、横浜みらいは、二十一日に開かれた議会運営委員会の理事会で、どうしても「会派割」時間を廃止するというなら、せめて質問の総時間数を増やして少数会派の質問時間が短縮されないように配慮すべきだと主張しましたが、自民、民主、公明の三党は、これを拒否しました

 変更前・変更後の時間は、第二弾に載せましたが、ここで再掲します。

 

 

議員数

改正前

改正後

議員数

比率

持ち時間

比率

持ち時間

比率

自民党

33名

0.36

61分

0.29

72分

0.36

民主党

16名

0.17

35分

0.17

35分

0.17

公明党

16名

0.17

35分

0.17

35分

0.17

共産党

10名

0.11

26分

0.13

22分

0.11

神奈川ネット

10名

0.11

26分

0.13

22分

0.11

横浜みらい

5名

0.05

19分

0.09

11分

0.05

市民の党

2名

0.02

6分

0.03

4分

0.02

合計

92名

1

208分

1

201分

1

 ここまでは、ネット上でソースを出せる話ですが、以下の話はウラが取れません。だから信じるか信じないかは、皆さんにお任せする事になりますが、私個人は信憑性の高い話だとは思っています。

 まず不思議なのは、この質問時間の変更は、民主党に何ら利が無くしかも「議員の多い自民党などには大いに不公平だ」などと、他党に有利な事を言っている。そこで逆に「この変更で誰が一番損をするか?」という事を考えてみましょう。それは横浜みらいです。19分から11分と、半分近くに減らされてしまう。そうすると、民主党の提案は、実は横浜みらいの影響力を小さくするためのものだったのではないか? という疑惑が持ち上がります。勿論ソースはなく、噂レベル。でも今までの経緯を見れば、目的はそれじゃないかと勘ぐられても仕方ありません。

 ただ自民党は最初はあまり乗り気ではなかった。「将来無所属議員が当選したら取り込みたいから」という理由も挙げられていますが、私は個人的には「民主党のゴタゴタに付き合わされたくない」という気持ちもあったのではないか、と思っています。これまでの成行きを自民議員も知らない筈はないんだし。

 それでは収まらない民主党は、議場での国旗掲揚を自民に提案してきて、「まあ、それなら・・・」という事になったという事です。ただ自民党がそれまで国旗を議場に掲げるべきだ、という主張を持っていた事のソースは出せません。又、公明党の立場についても、良く分かりません。

国旗を引き下ろそうともみ合い、2市議を退場…横浜市5/30 神奈川新聞

 二十九日の横浜市会本会議で、議場に「日の丸」が初めて掲揚されたことをめぐり、掲揚に反対する立場の会派が反発した。非交渉会派「市民の党」(二人)の所属議員が日の丸を撤去しようとして市職員ともみ合いになり、議長判断でそろって退場させられる一方、共産党(十人)が議案関連質疑の中で行った「掲揚反対」の意見表明は、掲揚に同意した三大会派の賛成多数により議事録から削除される見通しとなった。神奈川ネット横浜(十人)も「多数会派の横暴」などと問題視し議長へ抗議。共産も市会運営委員会の緊急招集を申し入れるなど波紋が広がった。

 「市民の党」は本会議前の議会運営委員会で発言を求めた。しかし掲揚を決めた自民、民主、公明の三大会派は「非交渉会派(四人以下)の発言は認められない」と要請を否決。このため同会派所属の両議員は掲揚反対の意見表明を求めて本会議場壇上の議長に詰め寄った。この際2、一人が議長壇上の横に三脚で市旗とともに初掲揚された日の丸を降ろそうとするなど、議会事務局員との間でもみ合いとなった。
 共産党は議案関連質疑の冒頭、「多数会派が数の力で押し切ったのは問題だ」として日の丸掲揚と少数会派の持ち時間が減った質問時間変更を批判した。これに対し最大会派の自民(三十三人)が「議案関連質疑を逸脱している」として議長職権による議事録からの削除を要求。三大会派の他の二会派(民主、公明=ともに十六人)も同意した。ネットは「市会運営委で議論すべき問題」などと提案したが採決されなかった。

 三大会派側は「ルールを守らなければ議会制民主主義は成り立たない。無用の混乱を招くパフォーマンスはやめてほしい」などと掲揚に反対した勢力を批判。市民の党は「これだけ重要な問題なのに反対の意見表明もさせないというのは民主主義に照らしてもおかしい」とコメント。共産党も「掲揚と質問時間変更が正に実施される当日だからこそ、意見を主張した。発言削除は言論封殺だ」と反論した。ネットは「少数会派にも発言の機会を与えるべきだ。発言削除も問題」としている。

 もし、これらの推測が本当だとすると、以下の朝日新聞の論調は少しズレている事になります。

 後味が悪いのは事実だけれど、それは国旗・国歌のせいではなく、民主党の内輪もめや、発言時間の変更が絡んでいるからではないかと思われます。あと、ここで国旗国歌法を持ち出すのは何かなー。だって共産党は別にいきり立っていないじゃないですか。(私個人は、一連の騒動では共産党が一番大人に思えた)。これって返って「国旗国歌法に反対するような輩は、議場ジャックをするような奴らなんだ」という偏見を植え付けるような気がするんだよね。やっぱり議場ジャックは、二人の議員の資質の問題だと思うのですが。

 振り返ってみてみると、この問題の本質は一体何なのか、わからなくなってきます。自民・民主あたりも、褒められたものではなさそうだし。ただどんな背景があるにせよ、市民の党の行動が共感を得るのは非常に難しいだろうな、とは思います。共産党の主張する「陳謝」も、彼女等が受け入れるとは思えないし。

 

4.除名処分は市政の裁量だけで行えるのか?

 「勿論行えるが、裁判になった場合は弱い」という事は言えます。今回の除名の手続き自体は、法に則った正当なものです。でもこれだけでは、少数派の議員に対し非常に不利なので、まずは「県知事への審決申請」、それでも納得いかなければ「訴えを起こす」といった救済措置があります。

第255条の4地方自治法) 法律の定めるところにより異議申立て、異議の申出、審査請求、再審査請求又は審査の申立てをすることができる場合を除くほか、普通地方公共団体の事務についてこの法律の規定により普通地方公共団体の機関がした処分により違法に権利を侵害されたとする者は、その処分があつた日から21日以内に、都道府県の機関がした処分については総務大臣、市町村の機関がした処分については都道府県知事に審決の申請をすることができる。

 大抵は県知事段階で除名が撤回されるそうなのですが、ネット上では、こんな馬鹿げた例(プロバイダがJCA-NET)くらいしか出てきません。

 裁判になった場合はどうか。京都府加茂町の曾我千代子氏が、処分撤回を求めて裁判を起こしているのが参考になります。

 この人が受けた懲罰は「戒告」と最も軽い罰ですが、何か問題を起こしたからこそ罰を受けた筈です。しかしHP上では「体育協会について発言しただけで戒告を受けてしまった」と書いてあるだけなので、結局、罰を受けた本当の理由は分かりません。

 それはそれとして、この訴訟は既に判決が出ています。曾我議員自身は置いておくとして、以下のクダリに注目

http://www2.ocn.ne.jp/~c-soga/soshou/soshou006.html(大阪高裁判決より)

第3 当裁判所の判断

2 議員らの行為及び本件成告処分の違法性について

(1)・・・・(中略)・・・・もっとも,地方議会は,国会と異なり,国権の最高機関性(憲法41条)を有せず,しかも,憲法が除名を含めた国会議員の懲罰について議院に権限があることを明文で定めているのに対し(58条2項),地方議会の議員の懲罰は憲法ではなく,地方自治法により定められている事項であること,地方議会の議員の懲罰のうち除名は,集会からの排除という議員の身分にかかわる重大な事柄であり,しかも,住民の意思とかかわりなく決められることなどに鑑みると,除名はその義会内部の紛争というにとどまらず,市民法秩序と直接関係する問題として,司法権が及ぶというべきである。 これに対し,戒告については,議会内部の紛争にとどまっているから,内部規律の問題として,司法審査は及ばないと解するのが相当である。

(2)・・・・(中略)・・・・すべての懲戒処分が司法権の対象となることを認めるのであれば,議員の懲罰につき地方議会の自律権を保障した地方自治法の意義は実質上失われるおそれが強く,控訴人の主張は採用し難い。
 また,控訴人は,懲罰事由に該当する事由があるか否かの判断は裁量的な事項ではなく,これについて司法審査権が及ぷとしても,処分の選択についての議会の裁量権は侵されないと主張する。しかし,懲罰事由該当性の判断についても地方議会に委ねるのが自律権を保障した趣旨に沿うと解されるから,上記主張は失当である。
 控訴人は,本件戒告処分は手続的に違法があると主張する。しかし,懲罰手続が憲法,法令あるいは議会の会議規則に明白に違反している場合はともかく,そうでない場合には,裁判所は議会の自律性を専重し,懲罰手続の適否の判断を差し控えるべきである。

(3)・・・・(中略)・・・・控訴人は,地方議会の懲罰すべてに司法権の審査を認めないと,議会が自律権の名のもとに特定の議員(少数派)に対し,懲罰権を濫用してその言論を封じ,名誉を侵害するおそれがあると主張する。その主張にはもっともなところがあるというべきである。しかし,それは,自律権を認められた団体全部について多かれ少なかれあてはまることであって,かかる病理現象があることを理由に,懲罰のすべてを司法審査の対象とすることは,懲罰に関する地方議会の自律権を否定するに等しい結果となり,にわかに賛同し難い

 小難しい文章ですが、要するに、戒告のような軽い懲罰は裁判の対象にもならないが、除名は裁判で大いに争えるという事です。又、(3)は多数派と少数派の関係について述べていて、興味深い内容です。

 それでは裁判で復活した例はないのか? あります。

 川島町議除名問題

 この記事はまだ「除名執行停止」の段階ですが、その後、正式に「除名取り消し」の判決が出ています。川島町側の控訴も棄却されています。

 こんなのもありました(一審では議員側が敗訴しているのに注意)。

 元篠山町議除名取消事件の責任

 検索をしていて感じたのですが、除名や他の懲罰で裁判沙汰などの騒動が起こるのは、やっぱり新左翼系の人達が多いみたいですね。普通の市議は、除名になる前に自ら辞職しています。

 横浜市議二名はどうなるのか? 裁判所は除名処分には慎重になるみたいなので、その点は市議に有利かも知れません。しかし、議場ジャックという(恐らく)前代未問の出来事であり、二人は反省する気配がないという事も考慮に入れると、今後どうなるかは分かりません。個人的には、横浜市民が住民投票でもやれば面白いと思います。

 



  トピック目次

  ホーム