政治【産経抄】5月28日2011.5.28 03:08

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【産経抄】
5月28日

2011.5.28 03:08

 今年の流行語大賞は、原子力安全委員会の班目(まだらめ)春樹委員長が発した「私はいったい何だったのでしょうか」で、決まりだろう。福島第1原発1号機への海水注入をめぐる物語は、喜劇とホラーの風味がたっぷりと入ったドタバタ劇の様相になってきた。

 ▼幕を開けたのは、安倍晋三元首相である。彼はメルマガで、東京電力が発表した3月12日午後7時25分から55分間にわたる海水注入中断の「主犯」は菅直人首相だ、と断じた。

 ▼慌てた官邸は、「班目委員長が再臨界の危険性があると指摘したから」と責任を転嫁した。怒った班目氏が猛抗議し、官邸が彼の発言を「再臨界の可能性はゼロではない」と訂正したのが第2幕だ。幕あいには与党桟敷席から「デタラメ委員長は引っ込め」のやじも飛んだ。

 ▼第3幕・国会の場では、野党から攻撃された菅首相が「海水注入の報告が直接上がっていなかった。少なくとも私が止めたことはまったくない」と大見えを切った。だが、すぐに注入開始を予告する東電のFAXが何時間も前に届いていたことが発覚する。

 ▼第4幕では、現場の吉田昌郎所長が「首相の了解を得るまで」中止を決めた本店の言うことを聞かず、海水を注入し続けていたというどんでん返しが用意されていた。「よっ! 吉田屋」のかけ声をかけたいところだが、あいや暫(しばら)く。

 ▼「首相の意向」を無視して正解だったとは、悲しすぎる。そもそも首相が、専門家きどりで技術的な問題を論議する必要はない。部下や組織を信頼し、大局から判断を下すのがトップの仕事だ。それができないなら劇の途中でも舞台から去ってもらうしかない。さもなければ、国民は終幕を悲劇で迎えるしかなくなる。

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