阪神は27日、楽天との交流戦へ向け、仙台入りした。金本知憲外野手(43)、新井貴浩内野手(34)、鳥谷敬内野手(29)ら主力9選手は、東日本大震災で被害を受けた宮城県岩沼市の避難所や玉浦中学校などを訪問。東北福祉大時代を仙台で過ごした金本は、今も不自由な生活を強いられる被災者を勇気づけると同時に、今後のチームの戦いへ気持ちを新たにした。
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眼下に変わり果てた街並みが飛び込んできた。大阪から空路、新井貴、藤川ら8人のチームメートと向かった仙台。飛行機が着陸体勢に入ると、金本は窓越しに目を凝らした。東北福祉大時代を過ごした第2の故郷を襲った未曽有の大震災から2カ月半。津波の爪痕が深く残る被災地に降り立ち、絶句した。
「飛行機を降りて、まさに津波の爪痕というか…二階まで崩れた家、ガラスが割れっぱなしの建物、初めて見て、ショックだった。想像以上。被災地に足を運んで、仮設住宅に住んでいる人たちは、自分たちの家が崩れてここで暮らしているのかと思うと、こみ上げてしまった」
3月11日の震災直後、報道で伝わる東北地方の惨劇を目に「これは、野球どころではない」と顔色を失った。開幕延期を訴える選手会を支持し、声明を公表。「野球で勇気を与えるとか、今はそういうレベルとは思えない。プロ野球が被災地に勇気を与えられるのは、もう少し落ち着いてからではないか」。金本の答えが正しかったことは、この日、証明された。
「正直、開幕を強行しようとする人たちには腹が立った。こちらは自分の生活がどうなるか分からない状態。皆、野球を見る余裕なんてなかった」。空港から直行した最初の訪問地・岩沼市民会館。仮設住宅の並ぶ被災地で、少年野球チームの同級生を津波で失った及川昌之くん(13)の母・真由美さん(47)は金本の訴えに同調したという。
腕相撲大会も 続いて足を運んだ岩沼市立玉浦中学では、9選手が全校生徒から熱烈な歓迎を受けた。金本も童心に帰り、即席の腕相撲大会を開催。万全ではない右肩をフル稼働させ、真っ向勝負で生徒たちを喜ばせた。野球教室では熱心に打撃指導も行い、最後は記念撮影&握手攻め。別れを惜しみながら、学校を後にした。
「被災者の方たちが明るいので、その姿には逆に励まされた。野球選手である前にひとりの人間として、何かしたいという思いがあった。今回のことが野球に結びつくかどうか、話は違うかもしれないけど、あらためて忘れてはいけないことだと思ったし、これを(野球に)つなげていきたい」
金本は3月、こうも話していた。「食べ物も整って、電気も流れて、ある程度生活が確保されてから、さあ、頑張ろう!となればいい」。この日は朝から甲子園で休日返上の打撃練習をしてから、伊丹空港へ向かった。低迷する虎を何とかしたい‐。被災地から勇気をもらった金本がチームメートとともに、大好きな仙台で再出発する。
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