わたしは煙草を吸わず、ワインなども食事のお供としてしか嗜まない。
日常的に摂取する嗜好品はだから、紅茶とミステリーということになる。
そして紅茶とミステリーは、わたしの英国趣味と分かちがたく結びついている。
江戸川コナンくんがそうであったように、ミステリーが好きな男子は小学校時代にシャーロック・ホームズから始めるというパターンが多い。
なにを隠そうわたしも同様で、男子に混じって図書館に入ったばかりのホームズ全集を瞬く間に読破したものだ。
その上わたしは、男子と違ってホームズそのひとに恋をしてしまったのである。
恐ろしく頭がよく、プライドが高くて強引な「オレサマ」タイプ。
明確なロマンスがないのも硬派でステキ。
でもだからこそ、ワトスンやハドスン夫人、子どもたちにも時折みせる人間らしい表情(ひきつった笑いなど、まさにツンデレ!)に、いまでもキュンとしてしまうのだ。
彼はそして、純然たる英国紳士である。
わたしの男性の好みの原型は、おおよそくジェレミー・ブレッド(声: 露口茂)が演じたホームズによっている。
コナン・ドイルの事件簿に書いたように、ホームズの愉しみは、実はミステリーの本筋よりもヴィクトリア朝ロンドンの様式美にある。
時代を下ってアガサ・クリスティから続く英国女流ミステリー好きというのも乙女道のひとつだが、いかにも英国らしい田園風景や庭園、家具と壁紙とお茶とお菓子の描写…
陰鬱とした細かな心理描写以上に、乙女はそうした要素を深く愛しているのではないだろうか。
ミステリーは殺人を扱う小説だからこそ、洗練されていて「ファンシー」でなければいけない。
そう語ったのはP.D.ジェイムズ等の翻訳を手がけた小泉喜美子。
犯罪は現実世界にあふれている。
だからこそミステリーは現実を少し超越した洗練と、作り物くささがあるものほどよい、とわたしも思う。
ディテイルが甘く、決め台詞のひとつもないミステリーなんて、魅力半減である。
江戸川乱歩や久生十蘭、松本清張にしても、みんなこの掟を踏襲しているのだろう。
そういう意味で、『金田一少年の事件簿』から十余年、堂本剛のセルフパロディのような『33分探偵』(フジテレビ)が最新のおきにいりである。
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