原子力発電所の事故で、今月下旬をめどに住民が避難を求められている福島県飯舘村などの畜産農家が飼育していた和牛の競りが臨時に開催され、およそ400頭が競り落とされました。
福島県本宮市にある家畜市場で開かれた競りには、計画的避難区域に当たる飯舘村や川俣町などの畜産農家が参加しました。通常、この市場での競りは主に子牛を対象に毎月上旬に行われていますが、避難地域の畜産農家が今月下旬をめどに避難を求められていることから、26日は臨時に開かれ、成牛を中心におよそ400頭が競りにかけられました。買い付け業者は、血統が書かれた資料などを見ながら次々と競り落としました。市場によりますと、落札価格は子牛に関してはやや安かったものの、成牛に関しては標準的な値がついたということです。競り落とした人は「買う側としては安く買いたいが、良心的に買って飯舘村などの人たちを助けるという形で買いに来た」と話していました。飯舘村の畜産農家、菅野和彦さんは、残る2頭についても売却したうえで廃業し、福島市に避難するということで「こんな形でやめるというのは理不尽です。あしたからの生活がどうなるのか検討もつきません。東電や国には当然、補償を求めていきます」と話していました。落札者の中には、口てい疫で多くの牛が処分された宮崎県の川南町などを管轄するJAの担当者もいました。担当者は「宮崎が口てい疫で苦しいときに、全国から支援していただいたので、今度は私たちが助けたいという思いで参加しました。口てい疫からの再生のためにも親牛を探しにきましたが、質のいい牛が見つかりました」と話していました。JA全農福島畜産部の助川栄太郎次長は「生産者にとっては、競り落とされる値段が高い安いに関係なく、自分の宝でもある経営の柱を失うということなので、大変つらい思いをされていると思います」と話していました。避難区域の牛を対象にした臨時の競りは、来月11日にも開かれます。