2011年5月27日14時58分
1965年から東宝の専属で「ウルトラセブン」などのテレビ映画や「若大将」シリーズなどの映画に出ていましたが、72年の3月に突然、契約が終了しました。はっきりと通告されたのではなく、東宝の方に「いいプロダクションを紹介する」と言われ、「ああ、契約終了なんだ」と。
女優業に未練はなかったので悔しいとか思いませんでしたが、あの頃は東宝の大リストラの時期だったんですね。そのことを後で知りました。東宝最後の作品は「地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン」となりました。東宝時代では一番、いい役をもらった作品です。
東宝をやめた後、大物作家に頼まれて、ある映画で裸になる役を演じましたが、家族に知られたくないから名前を伏せて欲しいという条件で出ました。また、あるカメラマンから「ヌードを撮らせてくれ」とずっと懇願されていたので個人的に応じてあげたら、いきなり無断で男性週刊誌に載ってしまって。それから裸がつきものの仕事が次々と舞い込み、流されるように出演し続けたんです。芸名を「菱見百合子」から変えたのもこの頃です。
忙しい日々でしたが、「もうやだ!」と、75年には実質的に引退したんです。実際は色々な作品に出ていても、すぐポルノ女優じみたレッテルを貼られる時代でしたから。あの当時はどの映画会社も観客を呼びたい一心で、どんどん女優さんを脱がせていましたから、私も、その流れにいたんですね。
私は今でこそ「アンヌ隊員」として知られていますが、「ウルトラセブン」放映当時にブームなどなかった。あのとき見ていた子どもたちが大人になってから人気が沸いたので、私にとって「ひし美ゆり子=アンヌ隊員」という時代は、割と最近のことなんです。
20年以上も後に人気が出るなんて不思議なこと。自分でも、ちょっと珍しい人生だと思います。
◇
日本映画界に足跡を記してきた名優たちが、最も印象に残っている年の思い出を語ります。