菅直人首相が、二〇二〇年代の早い時期に自然エネルギーが総発電量に占める割合を20%に引き上げると国際社会に表明した。「CO225%削減」の二の舞いになるような、目標倒れは許されない。
今はまだ約1%、それを十年前後で20%まで引き上げる−。簡単なことではない。福島第一原発の惨状を世界中がかたずをのんで見守りながら、日本のエネルギー政策のあり方を注視している。自然エネルギーの割合を増やすということは、政府として、脱原発に向かうという宣言にほかならない。
原発とエネルギーが主要な議題の主要国(G8)首脳会議を控え、首相が掲げた数値目標は、すでに国際公約である。その重みを忘れてはならない。実現への方策を速やかに示す必要がある。
太陽光パネルを一千万戸に設置するというのは単なるアイデアで、具体策とは呼びがたい。必要なのは、設置を促す政策だ。
これまではむしろ政策が、電力十社の地域独占を守り、自然エネルギーの普及を阻んできたようにも見える。
自然エネルギーで発電した電力の買い取りを電力会社に義務付けた法律が〇三年に施行されたが、導入義務量があまりにわずかで、悪法との批判が強い。〇五年度には太陽光パネルに対する補助制度が一時打ち切られたために、出力世界一の座から転落し、ドイツに大きく水をあけられた。
〇九年、太陽光発電に限り、自家消費分を除いた余剰電力を従来の約二倍の値段で買い取る制度(FIT)が始まった。これを風力、地熱、バイオマスなど他の自然エネルギーにも拡大し、余剰電力以外も買い取る全量固定価格買い取り法を予定通り今国会で成立させられるか否かが、首相の本気を占う最初の鍵だ。
一方で、電力の自由化をさらに進める必要がある。一九九五年以来、電気事業法がしばしば改正され、契約電力五十キロワット以上の需要家への電力小売りが自由になり、IPPと呼ばれる独立系事業者の新規参入も少しずつだが、増えてきた。しかし、家庭用まで含めた全面自由化には至っていない。発電と送配電網を開放し、消費者が自然エネルギーを選択できる仕組みを整えないと、投資も技術革新も大きくは進まない。
先日、首相自身が言及したように、国際公約達成の成否は結局、発送電分離ができるかどうかに、かかっている。
この記事を印刷する