「駄目です!ログアウト所か、システム画面も開けません!」
「と、言うかPDA自体がありません!」
閃光が俺達を包んで数分後。
デルタの皆さん及び俺は絶賛混乱中である。
例のブロックノイズ、閃光とこのゲームでは珍しいバグの連続に驚き、ログアウトを試みようとしたがシステム画面所か、VRハードのインターフェースすら出せないのである。
通常、VRゲームで何らかのトラブルにより操作不能に陥った場合、ログアウト不可では非常にヤヴァイ(現実世界的な意味合いで)のでそれを避ける為に本体側から操作は可能となっている。
要するに、仮想世界に閉じ込められたままってのは非常に危険だから、ちゃんと現実世界に戻れるようにしときましたって訳。
これにより、ゲーム側で操作不能に陥っても本体側でログアウト出来るようになってる訳だ。
ところがである。
ログアウトしようにも本体もゲームもシステム画面が出ない。
つーか、操作パネルも無い。腕に付いてたPDA型の操作機器から消えてやがる。
「クソっ!司令部からの連絡は?」
「駄目ですね、あちらも相当混乱しているようで・・・・・・事態が終息するまで絶対に発砲するなと」
「当然か・・・・・・ログアウト出来ん状態で死んだら、まさに本当の意味での"死"だからな」
そう、リアルな戦場を詠っているだけにこのゲームではリスポーンが無い。死んだらメニュー画面へとお帰り願うってのがこのゲームの特徴だ。
この事態が直ぐに終われば良いんだが、これが長丁場となると――何時間も只管にメニュー画面と睨めっこだぜ?チャットすら無い中で。
それだけはマジ勘弁して欲しい。
「日本人、お前さんの方はどうだ?」
「こっちもお手上げさ。司令部の方からも発砲すんな、人殺すなってさ」
「そっちも同じか・・・・・・そろそろ夕食の時間だがログアウト出来るんだろうか?」
「運営の素早い対応を願うしかないだろうなぁ・・・・・・」
二人そろってため息を付きながら、燃え尽きてガラクタと化したハーフ・トラックのボンネットに腰を降ろした。
CLI-MAX
Episode:02
――1時間後
<<司令部よりチャーリー3へ。聞こえますか?>>
「こちらチャーリー3。感度良好、運営から連絡が?」
あれから約一時間。デルタの皆さんと和気藹々と話をしながら連絡を待っていた所に漸く無線が入った。
俺がリアルじゃただのリーマンだと知ってデルタの分隊長さん(黒人でデンゼル・ワシントン似)は大層驚いてたね。
しかし、デルタの人が近くに居て良かったよ。イヤホン引きちぎっちまったから実は焦ってたんだよね?うん。
<<いえ、外部との連絡は一向に付きません。今回の事態を収束すべく、我々は米軍側と共同で情報収集を行いました>>
米軍って言っちゃって良いのかよ?
<<チャーリー3、落ち着いて聞いて下さい。事態は非常に混乱を極めている為、私達は米軍の指揮下に入る事に決定しました>>
「米軍の指揮下に?・・・・・・そんなにヤバイ状況なのかよ、ヲイ」
<<申し訳有りませんが、現段階でこれ以上の情報をお伝えする事は出来ません。米軍との協議の結果、貴方にはデルタ・フォースの保護下に入って頂きます>>
「保護下に?どういう事だ?」
<<・・・・・・事態は緊迫してる、そう言う事よ。民間人である貴方にはこれ以上の情報は伝えられないの>>
「日本人!いや、チャーリー3か?まぁ、良い。司令部から命令が来た。ここからだとそちらの基地の方が近いから、そこまで俺達が護衛する」
オペレーターとの会話が終わると同時に、分隊長が方耳を押さえながらそう言った。
どうやら、あちらからも命令が下ったらしい。
「護衛って・・・・・・既に戦闘は終了してるんだろ?だったら、大丈夫さ。基地までは2km程しかないから俺一人でOKだ」
「事態は急変した。君一人では危険だ――行くぞ」
『Sir,Yes,Sir!』
「はぁ?いや、ちょっと待て――って、腕引っ張るな!ちょ、ま、俺はグレイじゃねぇって!」
抗議の声も空しく、俺は両脇を屈強なデルタの隊員にグレイの如く抱えられ、そのまま連行される。
――畜生、基地に付いたら遺憾の意を表明してやるから覚悟しやがれ。
――タタタタタタタタ・・・・・・
「止まれ。聞こえたか?」
「はい、既に他の部隊は交戦中のようですね?」
「チッ・・・・・・レンジャーが敵と交戦してるみたいだな。ケビン、カール!お前達はそこのグレイ――じゃなかった、日本人を護れ!いいな?」
おい、今グレイって言ったろ。
まぁ、そんな事はどうでも良い。それよりも気になるのは、今間違いなく"レンジャー"が"交戦中"って言ったよね?
一体、誰とだよ?こっちは戦闘要員は俺だけだし、司令部は米軍の指揮下に入ったんだろ?
第三の敵?BOTか?そんなのが実装されてるなんて聞いたことねぇぞ?
「お前さん、よく聞いてくれ。俺の指示無く動かないでくれよ?頼むから」
カールと呼ばれたブラッドピットそっくりのデルタ隊員がM4を構えながらそう言うが・・・・・・
畜生、どうなってやがんだ一体!?バグってログアウト出来なくなっただけじゃねぇのかよ?
「来るぞ!前方、2時の方向から団体さんだ!構えろ!」
分隊長の声に反応し、隊の面々が一斉にM4を構える。
俺も混乱しながらもファマスを指示された方向に向けるが・・・・・・マジで?なんじゃありゃぁぁぁぁぁぁ!!!
「俺が発砲したら続け!奴等を決して近づけさせるな!――チャーリー3!貴様は下がってろ!」
「こっちだ!早く隠れろ!」
分隊長に怒鳴られ、近くに居たカールに手荒く物陰に放り込まれる。
「嘘だろ・・・・・・どうなってやがんだ、クソっ!」
俺が眼にしたのは――
鎧を纏った"騎士"の集団に"魔法"で吹き飛ばされるレンジャー達の姿だった。