異世界『リィンバウム』に存在する、今やほとんどの人間から忘れられたとある島、その海岸の浜辺に、一人の青年が流れ着いていた。
青年は、海水でびしょびしょに濡れた軍服の上着を気だるそうに脱ぎ、大きな溜息を吐いた。
(何とか自分は助かったみたいだ…。が、部隊の仲間達はどうなったんだ?)
彼は、正確にどれほど経ったのか判らないが、とにかく自分が此処で目覚める前の事を思い出していた。
(この浜辺に打ち上げられる以前、自分の所属する『帝国軍海戦隊第6部隊』には、とある『重要なモノ』の護送任務が与えられ、護送のために『モノ』を積み込んだ船に乗り込んだんだったよな。そして出港からしばらくして海賊に襲われ、それに何とか対応して…、突然船に嵐が直撃してその衝撃で俺や部隊の仲間、果ては海賊達まで海に投げ出されたんだったか)
そこまで思い出して、彼は頭を抱えた。自分は運よく助かったかもしれない。しかし仲間もそうだとは限らない。海戦隊ゆえに、こう言った海の事故の悲惨さはよく知っている。最悪、誰も助からないということもあり得るのだ。
「さて、どうしたものか」
そう呟いた彼は、とりあえず自分が生き残るために、装備の確認を行う事にした。
(衣服は…落ちた時のままだ。しかし、ずぶ濡れだから何処かで乾かさないとな。武器は…あった。少し遠い所に『弓と数本の矢』が落ちている。愛用のモノじゃないが贅沢は言ってられないな。そして…)
彼は上着のポケットをまさぐり、二つの紫色の小さな石を取り出した。
『サモナイト石』と呼ばれるそれは、リィンバウムの周りに存在するという『4つの異世界』+αの住人達の力を借りる『召喚術』と言う技術を使用する際に欠かせないモノであり、彼のように召喚術を使用する人間には無くてはならないモノなのだ。
サモナイト石は原石を精練する事により五色に大別され、色によって何処の世界の住人を呼び出せるかが決まる。紫色は精霊や天使、悪魔と言った少し特殊な生命体が住む『霊界サプレス』の住人を呼び出せる。
彼は2つのうち、大きい方の石を手に取り、異界の住人を呼び出す為に石に魔力を込めつつ、呪文の詠唱を始めた。石が魔力に反応して輝きだす。
「…召喚。おいで、『ローラ』」
彼がそういうと、彼の目の前に光の球――異世界とつながる門、と彼は解釈している、が現れ、その中から背中から白い羽が生えた少女が現れる。
彼女――ローラは霊界サプレスに住む『天使』と呼ばれる存在であり、彼のパートナーでもある。
彼とローラが初めて出会ったのは、彼の軍学校時代の事だった。
*
当時、彼は『聖母プラーマ』という召喚獣(主に召喚された生物の事を指す言葉)を対象とした『誓約の儀式』の実習を受けていた。要するに、召喚獣を呼び出し、使役する授業だ。
同期の面々が次々と聖母の名にふさわしい、美しく慈愛に満ちた天使を召喚させていたのだが、彼だけは何故か、若干どころではないくらい幼い(見た目は当時の彼よりも下くらい)ローラを召喚してしまったのだ。そして呼び出した当の本人が
「聖母…でいいのかな?」
と、ローラが気にしている事を口走ってひと騒動あったりしたのだが、それから紆余曲折あって、今では召喚師と召喚獣という垣根を越えた家族のような奇妙な間柄になっている。
*
「いきなりで悪いんだけど、治療を頼む」
「…(こくん)」
ローラは彼の姿からなんとなく状況を察し、無言で頷くと、すぐさま天使が行使することが出来る『奇蹟』という力で彼を治療し始める。
すると、先ほどまで波にもまれて疲労困憊だった彼の体に活力が戻って来る。
ローラは見た目こそ幼いものの、こと治癒に関しては非常に高い力を持っているのだ。
しかし、彼女の技量が高いのか、他に何か別の要素があるのかは不明である。
「ありがと、もういいよ」
体力がある程度戻ってきた所で、彼はローラの治療を止めさせる。魔力の節約のためだ。
「さて、まずは周辺の探索からかな」
彼は次にすべきことをそれに決めると、もう一つ、小さい方のサモナイト石を持って
先ほどと同じ要領で、召喚術を行使する。
すると、ポンッという音と共に、黄色い体に星のマークが付いた尖がり帽を被った、小さな精霊――『ポワソ』が現れた。
「此処ら一帯をぐるりと回って、何かあったら知らせてくれ」
彼がそう命令すると、ポワソは体全体で了承の礼をした。
「…可愛いやつ」
彼はその姿がとても愛らしく感じたようで、ポワソの頭を帽子越しになでてやる。
「よし、行って来い」
一通り撫でた後、彼はそう言ってポワソを送りだした。
「さてと…ん?」
「…(どきどき)」
彼がローラのほうを向くと、彼女は頭を彼の方に向けていた。彼女が何を望んでいるのか、判る人には判っただろう。…が、
「ローラ、そこで固まってないでこっち来て何か使えるモノが無いか、探すのを手伝ってほしいんだけど」
彼は全く判らなかったようである。
この後ポワソが彼の同僚を連れて来たのだが、そこで同僚は『天使にしばかれる召喚師』という非常にレアな光景を目撃する事となった。
その後、彼は部隊の生き残り達と合流することが出来た。生存者は彼の予想に反して多く、生存者の中には、部隊長の『アズリア』、副官の『ギャレオ』、そして部隊の中では相当のひねくれ者である『ビジュ』と言った部隊の実力者の姿もあった。
しかし個人差はあれど、ほぼ全員が疲弊しており、彼はご機嫌ナナメなローラに頭を下げながら、治療に奔走した。さらに、偵察へ出た仲間が傷付いて帰って来るものだから、もう限界だ、と感じるくらいまで仲間を治療し続けた。
数日後、ようやく治療地獄から解放された彼は、一人周囲の森の探索へと向かった。本来ならばこのような状況で単独行動は命取りだが、彼は元々田舎育ちで、道なき道を行動するのは得意であったし、そもそも探索に出た理由が『治療に疲れたから、気晴らしに』という、あまり褒められたものではないので、適当な理由をつけて強引に偵察に向かったのであった。
「森の中を歩き回るなんて、子供の時以来だな」
彼は周囲の警戒を任せているポワソを眺めながら、自分の故郷について思いを巡らせた。
*
彼は帝国の辺境の村の、農家の次男として生まれた。彼は家族と共に畑仕事をするのも好きだったが、近くの山や川に遊びに行くことも同じくらい好きだった。時には畑仕事をサボって遊びに行くこともあったが、当時から長男が畑を継ぐことが決まっていたようで、親は半ばそれを黙認していた。おかげで彼は好きな時に畑仕事をし、好きな時に遊びに行く、という充実した生活を送っていた。
(まさかそんな生活を送っていたせいで軍人になるなんて、あの時は思いもしなかった)
そんな日々が終わりを告げたのは、彼がいつものように山で遊んでいる時に見つけた紫色の石――サモナイト石が原因だった。彼がその石を拾った瞬間、眩い光が迸り、召喚獣『ポワソ』――現在彼が使役しているポワソと同一、が現れた。
彼は最初こそ動揺したものの、何故か人懐っこかったポワソとすぐに仲良しになり、この後、彼は石とポワソを連れて家に帰り親に事の顛末を話した。そうしたらその事が村中に知れ渡り、元召喚師だと言う長老に、
「どうやらお前には召喚術の才能があるようだ」
と告げられ、軍学校へ行く事を勧められたのだった。
いきなり話が飛躍しすぎだろう、と思うかもしれないが、帝国では召喚術とそれに必要なサモナイト石が軍によって厳重に管理されているので、いくら召喚術の才能があろうが軍人でなければ使えない。
両親や村の人々には、宝の持ち腐れになるくらいならという考えと、貧困に喘ぐ実家や村を救ってほしいという考えがあったようだ。要するに出稼ぎである。
そして、村人全員の寄付によって彼は軍学校へ行くことになってしまったのであった。
*
「退役してこんな自然あふれる場所で暮らしたいなぁ」
彼の口からそんな言葉がこぼれる。軍人になった理由が理由なので、彼には軍人としての誇りというモノが欠けていた。人を傷つけるのも傷つけられるのも嫌い、できれば一生畑を耕して暮らしたい、と彼は常日頃から思っていた。だが、現実はそううまくいかない。退役するのにもそれなりの手続きが必要であるし、その理由が『畑仕事がしたい』では示しが付かない。何より軍人を止めたら彼の食い扶持が無くなってしまう。さらにひどい事に、彼の村は隣国との戦闘で壊滅しており、彼には帰る家も、帰りを待つ人も無い。
「はあ…」
深いため息を一つした後、彼は自分が気晴らしをするつもりで此処にいる事を思い出した。
(これじゃあ本末転倒だな)
そう思った彼は思考を打ち切り、めったにできない探索という名の森林浴を堪能することにした。
彼がポワソと森の中や、ある程度整備された小道を歩く事十数分、彼らは奇妙な建物を発見した。一目でリィンバウムの建築様式で無いと解るそれは、島の外れにポツンと建っていた。
「確か…シルターンでこういう建物が建てられると聞いた事があったな」
『鬼妖界シルターン』――人間と妖怪が住むと言われる異世界。4つ異世界の中で人間が住んでいるのはこの世界だけだという。
(となるとやはり住んでいるのは召喚獣なのか?)
彼は偵察をしていた仲間から、この場所は島であり、人間の事を嫌っている召喚獣が大量に住んでいることを聴いていた。もっとも、何故大量に召喚獣がいるのか、何故人間を嫌っているのか、は仲間に知る由も無かったが。
(聴いた話によると先日、ビジュさん達が島の住人達に攻撃をしたとか…。正直、『何やってるんだあんたらは!』…と言ってやりたかった)
しかし、軍では下っ端である彼は、上司にそんな事を言う事は出来ないし、なによりビジュは怖かった。
おそらく、もう島の住人は友好的な対応はしてくれないだろうな、と予想し、彼は今の状況のひどさに頭を抱えた。
彼は上司に対する不満を抑えつつ、この建物を調べるか否かを迷っていた。
(とにかく、召喚獣との接触は避けたいが、自分は建前上探索をしている身だ。何かしら成果があった方がいい…けどなあ)
彼が身の安全を取るか、メンツを取るかを思案し始めた。だがしかし突然、建物の扉が開き、扉の真正面にいた彼は完璧に扉を開けた者とはち合わせてしまった。
「いらっしゃ~~~い。…ありゃ?」
(しまった!)
中から出てきたのは、胸元を大きく露出させたシルターンの服を身につけた美人な女性だった。しかし…、
(この人、すごい酒臭い…)
酒臭さが全てを台無しにしていた。彼女の顔は真っ赤で、足取りもやや覚束ないようにみえる。
早い話、泥酔していた。
「ん~~~?」
彼女は、ずれていたメガネの位置を直し、まじまじと青年の顔を凝視したまま動かない。
美女に見つめられる、という男性が喜びそうなシチュエーションだったが、彼はこの事態をどうしたものか、という事と、この人酒臭いなぁ、という思いで頭がいっぱいだった。
ふと、彼の目線は彼女の頭部側面の左右についている、所謂『おだんご』から生えている角に向いた。
(まずいな、この人も召喚獣だ)
そう直感した彼は、彼女が何もしてこない今の内に状況を把握しておくことにした。
(所持品はサモナイト石二つに非常時のためのナイフ…と後は『アレ』のみ。ローラは戦闘は出来ないから実質今召喚しているポワソだけだ。…というか穏便に事を終わらせたい)
彼がそんな事を考えていると、
「あのさ、青年…」
急に女性が声を掛けてきた。彼は思わず身構えるが、彼女は言葉を続ける。
「どんな運命を背負っていても、希望だけは無くしちゃダメよ?」
「…は?」
突然のあんまりな発言に、彼は一瞬思考が完全にフリーズした。
「んじゃ、そう言う事で」
彼女はそれだけ言って再び建物の中へ戻ろうとする。が、彼はいきなりそんな事を言われて、はいそうですかで終わる事が出来るほど他人に無関心ではなかった。
「いやいやいや!ちょっと!?閉めないでください!」
彼は閉められかけた扉を強引に開け、女に詰問しようとする。
「なぁに?メイメイさん、酒盛りの続きがしたいんだけどぉ?」
彼女は非常に嫌そうな顔をした。どうやら彼女にとって『酒』の優先順位は軒並み高いようだ。
「こんな真昼間から酒ですか?…じゃなくて、あんな不吉なこと言われて素直に帰れませんよ」
すると彼女は「ん~…」と何かを考え込むようなしぐさをした後、意地悪そうな顔をしてこう言った。
「これから先は有料よ?あ、御代は『お酒』でね」
彼女は代金として彼に『酒』を要求した。勿論彼女としてはそれは追い払うための提案でもあった。
「…ああ、お金は持ってないですけどそれなら持ってます」
「へ?」
彼は何処からか『清酒・龍殺し』とラベルに書かれた一升瓶を取り出した。何処から取り出したか、それは永遠の謎である。
酒瓶を見た女性は呆れてしまったようだ。
「軍人さんがどうしてそんなモノ持ってるのよ…?」
「今は亡き父の教えです。『酒は飲んで良し、渡して良し、殴って良し、投げて良し』…だそうです」
彼は自分の父を思い出す。
(貧乏だったのに酒ばっかり飲んでたからなぁ、親父)
女性は少し残念そうな顔をした後、
「…まあ、ここで会ったのも何かの縁ね。店内へいらっしゃい」
と言って自分を建物へと招き入れた。
彼はナイフと邪魔そうなものポワソに預け、女性の言われるがままに建物の中に入った。建物内はシルターン調の内装で、棚には武器や防具、それに各種道具があり、そしてなぜかルーレットまで設置されていた。
彼は、先ほどの『御代』という言葉と結びつけ、この建物が『お店』なのだろうと当たりをつけた。
「じゃあ、こちらにお座りなさい」
彼は女性に言われるがまま椅子に座る。そして彼女は机を挟んで彼の向かいに座る。
「それじゃあ、まずは青年の名前を聴こうかしら?」
女性がそう言うと、彼は渋い表情をする。
「あの…どうしても言わなきゃいけませんか?」
「ん~、できれば聴きたいな~」
彼は何度も口に出すのをためらったあと、ようやく自分の名前を口にした。
「自分は…『チャーハン』といいます」
「またずいぶんと変わった名前ねぇ」
「父が好きだった異世界の料理の名前、だそうです。友人が名も無き世界出身だとかで」
正直な所、彼――チャーハンは自分の名前が嫌いだった。特に、父が件の炒飯を振るまってから、自分の名前を思い出すたびに『穀物と具材の炒め物』が頭をチラついて離れないという一種のトラウマを生んでいた。
「そう、んじゃあ手を出して。手相を見るから」
「テソウ?」
彼にとっては聴きなれない単語だった。
「掌のしわを見て、その人の過去、現在、未来を知る占いよ」
彼は、シルターンでは『お呪い』や『占い』という技術が盛らしい、と何処かで聴いた事があった。
(この人もその道の達人なのかも知れないな)
言われるがまま手を差し出す。
女は彼の手をまじまじと眺める。が、次第に険しい顔になっていく。
「…あっちゃ~、生命線がブッツリ切れてるわね。青年、近いうちに死んじゃうかも」
「本当ですか?」
突然の死亡宣告に思わず彼の身が竦む。
「まあ、占いは当たるも八卦、当たらぬも八卦、あんまり深く気にしちゃあだめよ」
(今の状況が状況なだけあって当たりそうで怖い)
「あとはそうね…、貴方は人との『縁』が強いわね。これから多くの人と出会うし、意外な所で意外な人に出会うみたいよ」
(これから死ぬかもしれないのに多くの人に出会うって矛盾してないか?)
「こらこら青年、そんな辛気臭い顔しない!」
自分では気付いていなかったようだが、今の彼はとても難しい顔をしていた。
「す、すみません」
反射的に誤ってしまう彼。そんな姿を見かねたのか、女は話を続ける。
「しょうがない、一ついい事を教えてあげる。青年はこれから人生の大きな分岐に差し掛かる。道は二つあって、一つは平凡な人生を歩む道。もう一つは…」
「死ぬ、ってことですか」
女が頷く。
「…なんか具体的じゃあないですか?」
「言ったでしょ、当たるも八卦当たらぬも八卦だって。深く考えちゃダメ、貴方の思う通りに生きなさい。さ、もうお終い。早く帰らなきゃ島の住人が来ちゃうかもしれないわよ?」
「あ、はい。ありがとうございました」
結局彼はそのまま店を後にし、なんとなくだが、店の事は仲間には話さない事にした。
「…そう言えば名前を訊いてなかったな」
~数日後~
「おい、そこのお前!ガキを捕まえろ!!」
(無茶を言う…!)
現在、彼は部隊の仲間と、とある断層地帯(この場所には三つの層があり、一層目には敵が、二層目と三層目には帝国軍が陣取っている。『チャーハン』は二層目にいる)で海賊と島の住人と交戦していた。
今より少し前、彼ら帝国軍は相手側の仲間である赤い服の少女を捉えることに成功した。そして彼女にこの島のこと、彼女の仲間について訊き出そうとしたのだが、一向に口を割らない。そしてそうこうしている内に彼女の仲間が救助にやってきた。
それだけならまだいいのだが、ビジュが前回少女の仲間の一人に負けた事を怨み、少女を人質にとって赤髪の男性をリンチし始めたのだ。
しかし、彼女は自らが行使した召喚術によってビジュから解放され、今、仲間の元に駆け寄ろうとしている。
そして今、下段の敵に神経を張り巡らしていた彼は、突然の命令に対応が完全に遅れてしまい、それが致命的な隙となってしまった。
「くらいなさい!」
ドスッ!
「くッ!」
少女が持つクロスボウから放たれた矢が彼の脚に直撃する。
「今よ、オニビ!」
(くそッ!)
そして、間髪いれず少女が先ほど召喚した紅い召喚獣が追撃にやって来る。彼は足を負傷したせいでまともに回避行動をすることさえできなかった。
「ビビビィ~~~!!」
ドムッ!
「がは…ッ!!」
ボディに強烈な体当たりをくらった彼は、その衝撃に彼の足は一歩、後退せざるを得なかった。
が、その足が地面を踏む事は無かった。
すぐ後ろは崖だったのだから。
完全に足を踏み外し、体が宙を舞った瞬間、彼の頭の中に『あの女』の言葉がよぎった。
――近いうちに死んじゃうかも。
(あの人はホント、すごい占い師だよコノヤロウ)
彼は心の中で悪態をついた。
ボギィ!!
「!!」
地面と衝突した瞬間、彼の全身を鈍い痛みが襲った。さらに右腕の方から枯木が折れるような音。
痛みに負けて意識を失う直前、彼の耳には…
「おい、どうするよこいつ」
「あたしに訊かないでよ」
「とりあえず、縛っとく?」
という会話が聞こえ、彼は、
(ああ、終わったな。…色々と)
と直感した。
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後書き
第一話を一人称から三人称に変更しただけで、内容はほぼ変わっていません
第二話は1週間以内に更新出来たらと思います。