「正社員になるのはあきらめました」

半数が自らの意志で非正規職を志望

 32歳のイさんは、2004年にソウル市内の大学を卒業し、家庭教師や塾講師などのアルバイトをしてきた。大学時代、イさんの目標は政府系企業に就職することだったが、思い通りにはいかなかった。就職準備中は、生活費を稼ぐため2年にわたり時給1万ウォン(約750円)の論述スクールで講師を務めた。また、出版社で1年間校閲のアルバイトをし、150万ウォン(約11万円)ほど貯金した。しかし結局は目標としていた就職をあきらめ、労務士の資格を取ることに変更、準備を続けている。最近は月30万ウォン(約2万2300円)の家庭教師を2カ所掛け持ちし、月収60万ウォン(約4万4700円)で生活している。

 非正規労働者の半分以上は、本人の意志とは関係なく、やむを得ない事情で今の仕事に従事している。イさんのように非自発的に非正規労働者となったケースのうち、73.2%が当面の生活費を稼ぐため今の形態で働いていることが分かった。

 大学でスペイン語を専攻したキムさん(31)は卒業後、中堅貿易会社に就職した。安定した正社員だったが、残業は当たり前で、会食も多く、休日勤務もよくあり非常に忙しかった。キムさんは会社を辞め、保険会社に非正規職の秘書として転職した。最初は「いずれまたどこかの正社員になるまでのアルバイト」と考えていたが、今の仕事はすでに3年目だ。キムさんは「正社員だったころが懐かしく感じることもあるが、非正規職だと自分の時間が多く取れるというよい点もあるし、最近はもうあきらめている」と話した。

 非正規職が急増する中、キムさんのように自ら非正規職となってその立場に安住する、いわゆる「自発的非正規職」も増え続けている。統計庁の調査によると、非正規職の48%が「自ら非正規職の仕事を選んだ」と解答した。これは1年前に比べ2.4%も増えている。自ら非正規職を希望した理由については「労働条件に満足している」(45.1%)、「安定している」(24.2%)などの理由が多数を占めた。一方で「経験を積んでから正社員になる」とか「就職の準備を並行して進めるため非正規職を選んだ」という解答は、20.3%から17.1%に減少している。針の穴を通るほど難しい正社員としての就職をあきらめ、自分から希望のレベルを下げた結果だ。

全洙竜(チョン・スヨン)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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