2011年4月12日火曜日

東レ常務大西盛行氏―炭素繊維、需要拡大で価格上昇

 代表的な先端素材、炭素繊維の市況が回復している。需要は航空機やスポーツ用品向けが伸び、自動車部品や環境関連向けの拡大も見込まれる。アクリロニト リルを原料とする炭素繊維で4割の世界シェアを握る最大手、東レは需要拡大と原料高を理由に4月から追加値上げする。大西盛行常務に炭素繊維の需要や価格 を聞いた。
 ――2008年秋のリーマン・ショック前の水準に需要が回復してきた。
 「スポーツ・レジャー向けは戻った。不況下の節約疲れからゴルフ用品などを買い替える動きがある。中間所得層が育ち始めた新興国では新しい市場が生まれている。釣りざおは中国の販売が増えてきた」
  「航空機の受注も新興国向けを中心に増えている。米ボーイングと欧州エアバスの民間航空機大手2社で、11年は09年より1割以上多い1000機の航空機 が生産される。ボーイングの新中型機B787は今夏にも1号機が全日本空輸に引き渡される。来年から量産が始まるだろう」
 ――新規市場はどうか。
  「10年は初めて自転車での使用量がゴルフ用品や釣りざおを超えた。加工性が良くなり、アルミなどの代替材として高級自転車のフレームなどに使われた。送 電効率の高い電線の心材、二酸化炭素の排出量が少ない圧縮天然ガスのタンクなど環境分野の採用も進んでいる。15年の世界需要は7万トン程度と10年の約 2・3倍に拡大するとみている」
 ――メーカーは昨年春から値上げしている。
 「標準品の価格はリーマン・ショック後に急落し、10年初 めには07~08年比で4~5割下がった。4月から10~15%再値上げする。値上げが実現すればリーマン前の水準になる。原料の石油化学製品、アクリロ ニトリルの国際価格は高騰している。繊維や樹脂向けの旺盛な需要に原油高が重なり、1年前より2~3割上がった」
 ――炭素繊維メーカーは大手自動車メーカーとの連携を強めている。
  「東レは独ダイムラーと炭素繊維を使った自動車部品の製造を始める。欧州の高級車メーカーは環境規制に対応し、ここ1~2年で関心を強めている。素材の価 格だけをみれば鋼材より10倍以上高いが、軽量化による燃費向上を織り込んで採用している。年間3千トンの自動車向けの需要は20年代に3万トン程度まで 広がる可能性がある」
 ――東日本大震災の影響は。
「一部需要家の生産に影響が出たが、各社とも既に対策を打ったようで操業面で問題はない。むしろ、自粛ムードや消費マインドの落ち込みによってスポーツ用途など国内需要の停滞が懸念される。炭素繊維は海外需要が80%近くを占めており、当社の影響は小さい」

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