2011年4月1日 11時36分 更新:4月1日 20時8分
東日本大震災で大きな被害が出た東北地方各地のハローワークに、失業手当の給付申請をする人が長い列を作っている。事業継続の見通しがたたない経営者からの相談も相次ぎ、被災地の雇用不安が深刻化している。
津波の被害が大きかった宮城県石巻市のハローワーク石巻には、午前8時半の受け付け開始前から長蛇の列ができ、次々と相談に訪れる人々でごった返している。
太陽光発電設備販売会社で営業を担当していた同市泉町の阿部雅洋さん(50)は津波で会社の事務所が流され、専務も死亡。社長から「続けていけない」と告げられ、他の社員5人と共に解雇されたという。
失業保険の申請に来たが、順番を待つ人で座る場所もない状態。「地元の基幹産業の水産業が壊滅し、大量の失業者が出るだろう。仕事がなければどうしようもない」と不安そうに話した。
母親と2人で水産加工会社を経営する同市渡波の須田健也さん(42)も社屋は無事だったが、取引先がことごとく被害を受け、業務再開のめどは立たない。「貯金も底をついてきた。5カ月の長男を抱え妻も不安がっている」と嘆いた。
ハローワーク石巻によると「相談の電話もひっきりなしで、職員は食事も取らずに対応している」という。被災した事業所向けに開かれた説明会にも、1日200社以上が参加。「社屋が津波で流され、従業員を解雇せざるを得ない」といった切実な相談が寄せられているという。
宮城労働局によると、3月15日から30日に県内のハローワークで応じた労働相談の件数は約3万3500件。3連休明けから震災に関する相談が急増した。岩手、福島の両県でも、雇用保険や失業給付の相談が大幅に増加しているという。【小泉大士】