2011年4月1日 10時42分 更新:4月1日 19時21分
史上最悪の放射能漏れを起こした旧ソ連・ウクライナのチェルノブイリ原発事故から4月26日で25年。福島第1原発事故で改めて世界の注目を集めているが、現地では爆発した4号機を覆う「石棺」と呼ばれる建造物の老朽化が指摘され、新たなシェルターを造る計画も資金不足などで大幅に遅れている。【チェルノブイリ(ウクライナ北部)で田中洋之】
石棺は原子炉から放射性物質が拡散するのを防ぐため、事故直後の半年間に突貫工事で建設された。作業には旧ソ連全体から約60万人が動員され、多くが被ばくした。石棺の耐用年数は少なくとも30年といわれたが、コンクリートや鉄筋部分の腐食が進み、亀裂から放射性物質が外部に漏れ出しているのが現状だ。内部には約200トンの核燃料が残されているとみられ、石棺が崩壊する事態となれば深刻な放射能汚染が懸念される。
福島原発でもチェルノブイリ原発と同様に石棺で閉じ込める案が浮上しているが、重大事故を起こした原子炉を完全に「封印」するには相当の困難が予想される。
ウクライナ政府は対策として、欧州復興開発銀行の支援を受け、石棺全体を覆う金属製のシェルターの建設を計画。長さ150メートル、幅257メートル、高さ105メートルの巨大なかまぼこ形の建造物を4号機の隣接地で組み立て、レールを滑らせて石棺をすっぽりカバーする構想だ。完成すれば100年間は石棺を安全に封印できるという。
同政府は07年にフランスの建設会社と契約し、12年の完成を目指していた。しかし着工は大幅に遅れ、昨年10月にようやく準備作業を開始。現時点での完成見込みは15年にずれ込んでいる。
最大の問題は資金難だ。技術的な難しさや安全確保への配慮などで新シェルターの建設費は約15億4000万ユーロ(約1800億円)と、当初計画の倍近くに膨れ上がった。建設のための国際基金が設けられているが、原発周辺の放射能汚染地域を管理する政府機関代表のホロシャ氏は3月31日の会見で「あと6億ユーロ不足している」と述べた。このままでは完成がさらに先延ばしになる可能性もある。
ウクライナ政府は事故25年にちなみ支援国会議と原子力エネルギーの安全に関する首脳級会合を19日にキエフで開き、国際社会に資金拠出を呼び掛ける。ただ、財政事情が厳しい国も多く、必要額が集まるかどうか不透明だ。また首脳級会合には菅直人首相も招待されているが、福島原発事故の対応で参加を見送る方針。