2011年4月1日 10時29分
水俣病の原因企業チッソ(東京)は31日、主力の液晶生産などすべての事業部門を1月に設立した100%子会社JNC(同)に譲渡した。チッソは患者補償や公的債務返済部門として存続する。水俣病被害者救済特別措置法(特措法)に基づきチッソを補償会社と事業会社に切り離す分社化手続きが完了した。
事業譲渡に伴い、グループ企業を含む従業員約3100人のうち約3000人がJNCに移る。JNCの会長と社長はチッソの後藤舜吉会長、岡田俊一社長が兼務する。
分社化は水俣病と離れて自由な企業活動を目指すチッソが00年の会社再生計画に盛り込んで以降、実現を訴えてきた。一部の患者団体は「加害企業の責任放棄につながる」と反対し、政府も慎重姿勢を取ってきたが、未認定患者救済問題でチッソが患者への一時金(1人210万円)を負担することと引き換えに09年に成立した特措法に盛り込まれた。
チッソは今後、環境相の承認を得たうえで救済終了と市況好転を待ってJNCの株式を売却し、売却益を債務返済に充てたうえで清算される見通し。後藤会長は「どんなことがあっても(認定)患者への責任は果たす」と早期の清算を否定しているが、患者の間では清算後の補償継続への不安が強く、今後は株式売却時期や政府の対応が焦点となる。【西貴晴】